私の実践・私の工夫(算数)
対称な図形
1.はじめに
本校では,習熟度別クラスで算数科の授業を実施している。その中でも,習熟度が低いクラスの子供は,算数が嫌いな子供が多い。
「私が,これから10時間くらい算数の授業を担任します。よろしく。」と声をかけると,「算数嫌い。」「10時間。多い。」「図形は得意だけど・・・」という声が聞こえてきた。「図形は得意?」と聞き返すと,「うん。図形は得意だよ。ねえ。」という声が広がっていく。図形が得意ならば,図形をきっかけに算数を好きになってもらいたい。
そこで,子供が算数を好きになる授業を目の前の子供の姿から考え,それに基づいて授業を展開しようと考えた。
- 1 自分の力で問題が解決できる授業
- 2 「調べてみたい。」「解いてみたい。」と思える授業(問題解決学習の思考過程)
- 3 前に使った考え方が使える授業
- 4 本時で学習したことが他の単元にも使えそうだと思える授業
- 5 教師に認められる場面がある授業
2.「調べてみたい。」「解いてみたい。」と思える授業
「習熟度が低い子供は,考える力がないから教え込んだほうがいい。」という言葉が聞かれることがある。内容によっては教えることの分量が多いこともあるとは思うが,教えて覚えるだけでは,算数科のねらいは達成されない。
たとえ,習熟度が低い子供でも,問題や発問を工夫することで,「調べてみたい。」「解いてみたい。」と思える瞬間があるはずである。問題は,集団の実態をよく把握した上で,努力すれば分かりそうなレベルにしたい。
3.前に使った考え方が使える授業・学習したことが他の単元でも使える授業
数学的な考え方を指導することによって,前に使ったアイディアを使って問題解決ができるようになったり,本時で学習したことを次時以降で使えるようになったりする。「今までにどの単元でどのようなアイディアを学習したか。」「本単元の学習は,どこにつながっていくのか。」を授業前に確認し,系統性を意識した授業をつくることが大切である。
4.自分でできたという体験を大切に
子供に「100点は取れたけど,先生に教えてもらって100点だから意味がない。」と言われたことがある。自分でできたという実感が乏しかったのであろうと考える。「自分は算数ができる。」と思うことで,安心して自分の考えをもつことができる。
「自分は算数ができる。」と思わせるためには,教師が適切に評価を行い,子供を認める言葉をかけることが大切である。学習のねらいに基づいて授業を行い,子供の活動を見取り,適切に評価する。
5.実践
(1) 単元名「対称な図形」
(2) 単元のねらい
対称な図形の観察や構成を通して,その意味や性質を理解し,図形に対する感覚を豊かにする。
(3) 指導計画・評価計画
時 | 指導計画 | 指導内容 |
1 | ・線対称,点対称な図形の観察 | 合同な図形の性質の活用 |
1 | ・線対称な図形の意味,線対称な図形さがし | 対称の軸 |
2 | ・線対称な図形の性質,線対称な図形の作図 | 対応する点,辺,角 |
1 | ・点対称な図形の意味,線対称な図形さがし | 対称の中心 |
2 | ・点対称な図形の性質,線対称な図形の作図 | 対応する点,辺,角 |
2 | ・正多角形など基本図形の対称性 | 対称という新たな見方で考察する |
(4) 本時(1/10時間)
●ねらい
合同な図形の性質をもとにして対称な図形について観察し、図形の見方を豊かにする。
●展開
● 本時の授業について
合同な図形の性質を活用して,図形の見方を豊かにすることをねらいとした授業である。単元の導入にあたる1時間目は,算数が苦手な子供にも「合同な図形の性質を使って対称な図形の学習ができる。だから,この単元は,自分の力で問題が解けるかもしれない。」と思わせたい。
「以前に学習したことが使えること」が分かれば,「新しい学習のときには前に学習したことを思い出してみよう。」という態度が育つし,「今,学習していることがこの先に使えるかもしれない。」と授業に真剣に取り組むようになっていく。
算数が好きな子が友達に「算数の問題は,答えを見付けるまでがおもしろい。」と語っていたことがあった。新学年になって最初の授業は大切である。「なぜ?」と考え,考えること自体を楽しむ子供の顔を思い浮かべながら,教師自身も楽しんで教材研究をしたいものである。
● 児童の実態に応じた手立ての工夫
本実践は,比較的習熟度の低い子供を対象に行っている。自力で解決できないときの手立てとして,指導案には次のような手立てが書かれている。
- ・問題の意味が伝わらないときは,教師と子供が一緒に問題解決をする。(途中まで)
- ・手元で操作できるように,具体物を用意する。
- ・「合同」などの用語が分かっていないときは,復習を交えながら進める。