私の実践・私の工夫(算数)
「学習内容の理解を深める掲示物」や「自分の考えを順序よく説明する言語活動」を取り入れた学習指導の工夫
第6学年「割合を使って」
1.児童の実態
○ 本学級には,算数に対して意欲的な児童が多い。アンケートの結果では,約80%の児童が「算数がすき」と答えている。しかし,「自分の考えを説明できますか」という問いには40%以上の児童が「できない」「あまりできない」と答えており,「自分の考えを順序よく説明すること」を苦手としている児童も多い。また,事前のレディネステストの結果では,第5学年の割合についての理解に大きな差があることがわかった。
2.指導観
- ○ 本単元は,学習指導要領の5年「D 数量関係」の「(3)百分率について理解できるようにする。」と「(4)目的に応じて資料を集めて分類整理し,円グラフや帯グラフを用いて表したり,特徴を調べたりすることができるようにする。」に基づき構成されたものであり,学習指導要領の「内容の取り扱い2―(2)思考力,判断力,表現力等を育成するため,各学年の内容の指導に当たっては,言葉,数,式,図,表,グラフを用いて考えたり,説明したり互いに自分の考えを表現し伝え合ったりするなどの学習活動を積極的に取り入れるようにすること。」を主な指導内容としている。
- ○ 児童はこれまでに,割合の意味を理解し,小数や百分率を用いて問題を処理する学習を行ってきた。分数については,加減計算とともに乗除計算についても求答方法について学んできている。本単元では,このような児童の学習経験をもとに,全体を1と考え割合の和や差,積を考えて問題を解くことを主なねらいとしている。
- ○ そこで,本単元の指導に当たっては,まず単元導入前に学習レディネスをそろえるために時間を設定する。特に,もとにする量を1とする考え方を確認させたい。加えて,児童自身が自分の解き方について説明できるように説明の型を提示する。それを基に,児童がペアやグループで解き方を説明する場を設け,友だちに説明する活動を通して児童の理解を深めたい。
3.単元計画(全5時間)
主な学習内容及び学習計画 | 時間 | 評価計画 |
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1 5年時の学習の振り返り。 | 1時間 | 【意欲・関心・態度】 ○ 比べる量や割合の求め方,もとにする量を1として考えてきたこれまでの学習について,積極的に復習しようとする。(観察・ノート) |
2 全体を1として,部分の割合を考えて,問題の解決ができる。 | 1時間 | 【意欲・関心・態度】 ○ 全体を1として考える解き方について,理解しようとている。(観察) 【数学的な考え方】 ○ 線分図等に割合と数量を書き込みながら問題を解決することができる。(ノート) |
3 全体を1として,部分と部分の割合の和を考えて,問題の解決ができる。 | 1時間 | 【数学的な考え方】 ○ 線分図等に全体と割合の部分を書き込みながら問題を解決することができる。(ノート) |
4 全体を1として,割合の積を考えて問題の解決ができる | 1時間 (本時) |
【技能】 ○ 割合の積の意味を関係図や面積図で表現することができる。(ノート・観察) |
5 まとめ
○ 評価テスト
(市販) ○ 評価テスト (啓林館資料) ○ Web学習単元評価 (スキルタイムの利用) |
1時間 | 【技能】 ○ 全体を1として考え,問題を解くことができる。 (プリント) 【知識】 ○ 全体を1とする考え方を理解している。 (プリント・観察) |
4.本時の指導について(4時間目/5時間)
○ 本時の指導においては,既習事項を復習することで,第5学年次の学習と本時の学習の関係性に気付かせたい。また,説明の順序や内容の充実を図るために,ペアでの説明からグループでの話合い,さらに学級全体へと説明の場を広げながら,繰り返し表現できるようにする。また習熟の時間を確保し理解を深めたい。
「教える」の【教える】段階では,既習事項の確認を行う。また,問題文に注目して「わたこさんのカギ」(「わ」…わかっていること,「た」…,「こ」… ,「カギ」…何算かの『キーワード』)を全員で確認させ,問題文を正確に読み取るようにする。また,関係図を利用しながら,割合の積を計算してから求める量を考えることを全体で説明する。
「考えさせる」の【理解の確認】の段階では,教科書の基本的な問題を解くことで,児童の理解度を確認する。この際,自分の考えの説明に必要なメモを作成させ,ペアでの説明においては,関係図を利用するように指導する。説明活動を通して,児童一人一人に自分の考えをもたせ,自らの考えを明確に表現できるようにすることで,児童の理解を深めたい。
「考えさせる」の【理解深化】では,本時で学習したことを活用して自力解決をする。自力解決の後,グループで,各自の考えを表現し合えるようにしたい。
「考えさせる」の【定着の診断】では,計算ドリルの問題を解かせ,その問題に丸付けすることで指導内容の定着状況を評価したい。
5.授業の実際
- (1) 目標 全体を1として,割合の積を考えて問題の解決ができるようにする。
- (2) 展開
段階 | 学習活動及び学習内容 | 指導上の留意点 |
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教 え る |
【教える】 1 既習事項を確認する。 |
○ これまでに学習した内容を想起させ,本時との学習の関係性に気付かせる。 |
2 問題を確認する。 3 めあてを確認する。 4 課題を解決する。
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○ 問題文を読ませ,解決するために必要な言葉に注目しながら確認する。 ○ 個人思考の時間を十分に確保する。 ○ 解き方の説明に難しさを感じている児童にはヒントカードを配布する。 | |
考 え さ せ る |
【理解の確認】 5 練習問題を解く。
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○ 理解を深めるために,提示された型を使って,ペアで解き方を説明し合う場面設定する。 |
【理解深化】 6 評価問題を解く。
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○ 解き終わった児童は,問題に取り組んでいる児童の手助けをさせ,互いの理解を深める。 | |
7 本時のまとめをする。 まとめ 2つの割合の積を利用し,全体の何倍にあたるかを考え,計算する。 |
○ 授業のまとめを行う。 | |
【定着の診断】 8 ドリルを解き,自己評価をする。 ◎…正答3/3 ○…正答2/3 △…正答 1/3以下 |
○ 児童の自己評価を確認する。 |
6.成果と課題
(1)成果
- ① 児童が関係図を利用して解き方を説明する姿が見られた。問題ごとに関係図を提示することは,「全体を1として考えて,割合の積を求め計算する」解き方を理解するのに有効な指導方法であったと考えられる。
- ② 本時の学習内容の定着を市販テストで評価すると50点満点中,学級平均47.5点であり,概ね基礎的な力を身に付けさせることができたと言える。
- ③ それぞれの考え方を説明し合う場面を設けることで,自他の考えや説明を比較し,自分の考えをより確かに表現しようとするなど,思考の充実と理解の深化を図ることができた。
(2)課題
- ① 説明の仕方を例示したため,児童から多様な説明の仕方を引き出すことができなかった。学習指導過程のさらなる改善が必要である。
- ② 1つのパターンを繰り返し行うことで児童の理解を深められた反面,児童にとって「教えられる」部分が大きく感じられたのではないかと思う。単元や教科全体でバランスをとりながら授業を展開する必要がある。
- ③ 本単元のような,文章題として教科書で取り上げられている内容の学習指導要領での位置づけを「指導観」にどのように記載すべきなのか,今後も検討が必要である。
- ④ 評価問題まで解き終える児童が少なかったことから,授業内容を精選し,できる限り復習や練習問題の時間を確保することも大切である。