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教師の方へ

私の実践・私の工夫(理科)

日常生活との関わりを生かして実感を伴った理解を図る理科学習のあり方
~6年「電気の利用」の学習を通して~

6年

千葉県鴨川市立東条小学校 高濱 洋一

1.はじめに

児童にとって,現在,電気なしの生活は考えられないほど電化製品は身近な存在になっている。そのような実態の中,今まで私が6年「電気の利用」を実践してきてもの足りなく感じていたことがある。それは,以下の3つである。

  • ①手回し発電機では,家電製品が動かせない。
  • ②発電所の電気のつくり方についての学習がない。
  • ③電気の利用と環境への関わりについての学習がない。

そこで,家電製品を動かすために自転車による発電体験と,発電所での電気のつくり方を調べる学習を取り入れ,日常生活との関わりを生かし,実感を伴った理解を図れるよう単元の構成を工夫してみた。

2.工夫の内容

(1)自転車発電により家電製品を動かす。

  • ①自転車でつくった電気で白熱電球やLED電球,CDラジカセ,扇風機を動かす。
  • ②人の力で電気をどれくらいつくれるか体験する。
  • ③白熱電球とLED電球の消費電力の違いを体感する。

(2)単元構成を工夫する。

  • ①各発電所の発電方法を調べる。

3.全体計画

 時数  学習問題 主な学習活動
電気はつくることができるだろうか? ・電気で動くものをあげ,光,熱,音,動力の4つに仲間分けをする。 ・光,熱,動力からも電気がつくれるか調べる。
自転車をこいで電気をつくり出してみよう。 ・自転車で発電し,白熱電球,LED電球,CDラジカセ,扇風機を動かす。
どのくらいの電気がつくり出せるだろうか? ・自転車で発電し,20W,40W,60W,100Wの白熱電球をつける。
4,5 家庭用で使う電気はどのようにつくられているのだろうか? ・電力会社のHPを調べて,火力,水力,風力,原子力での発電の仕組みを調べる。 ・共通していることは何か話し合う。
自転車をこいでつくった電気と家で使っている電気とではどんな違いがあるだろうか? ・人の力でつくった電気と発電所でつくられた電気の同じところ,違うところを比較する。
白熱電球より少ない電気でつくものはないだろうか? ・40W白熱電球と40W相当のLED電球を点灯させたときの負荷を比べる。
今後,電気をどのように使っていくか話し合おう。 ・今までの学習を振り返り,どのように電気を使っていくか話し合う。

※発熱と蓄電については本単元とは別に実践。

4.実際の授業の様子

(1)-①自転車でつくった電気で白熱電球やLED電球,CDラジカセ,扇風機を動かし,電気をつくる大変さを体験する。

児童は,普段,家電製品がスイッチ一つで明かりがついたり,動いたりするため電気は簡単につくれると考えていた。第1時では,光や熱,動力から電気をつくれることを学習した。しかし,手回し発電機では,白熱電球をつけることができなかったため,児童はどうにかしてつけたいと思うようになった。そこで,自転車で電気をつくり,白熱電球やLED電球,CDラジカセ,扇風機を動かす体験をした。

結果,明かりは簡単につけることができたため,「電気は簡単につくれる。」という意識が強まってしまった。しかし,電気は使い続けていることから,CDラジカセで音楽を聴き続けたり,扇風機を回し続けることができるか試すことにした。音楽は一曲約3分程度であったが,回すことをやめたりこぐ力を緩めたりすると電気が消えてしまうため,聴き続けるために「電気をつくり続けることは難しい。」「とても大変である。」という意識を高めることができた。

また,初めての自転車による発電体験ということで,「気づいたこと」や「今後調べてみたい課題」についても手回し発電機と同様にあげることができた。

(1)-②人の力で電気をどれくらいつくれるか体験し,家庭でどれくらいの電気を使っているか想像する。

児童は,初めての発電体験から試してみたい課題を持つことができた。中でも「どれくらい電気をつくることができるのか」「どんな家電製品まで動かすことができるのか」限界に挑戦したいと考える児童が多かった。そこで,人の力でどれくらいの電気をつくることができるのか体験し,家庭で使っている電気の総量を想像することにした。どれくらいの電気をつくれたか調べるのに20W,40W,60W,100Wの白熱電球を用意した。結果,ほとんどの児童は100Wの電球をつけることができなかったが,60Wの電球はつけることができた。しかし,それを1分間続けるのは不可能であった。

そのような体験をした後,家庭で使っている家電製品のW数を例示した。エアコンが45~2000W,テレビですら150Wという事実を知り,児童は「テレビを見るための電気でさえ,一人でつくるのは無理」という事実に驚いていた。

人の力でどれくらいまで電気をつくることができるのか体験することは,児童が電気を効率よく使おうと意識するのに効果があった。また,家庭ではたくさんの電気を使っているのでそれを人の力だけでまかなうのは難しいと理解することができた。

W数の違う白熱電球を用意したことで,こいだときの負荷の違いから,W数が大きい物(電気を多く消費する物)ほど負荷が大きいと,児童は気がつくことができた。

(1)-③白熱電球とLED電球の消費電力の違いを体感し,電気の消費量の少ない製品が開発されていることを知る。

豆電球とLEDを児童が目にする場所は,懐中電灯や自転車の夜間ライト程度であり,身近であるとは言いがたい。そこで,白熱電球とLED電球での比較をすることにした。

体験した結果,全員がLED電球の方が簡単についたと答えていた。さらに,ペダルの重さと電気使用量についても既習内容として理解しているので,LED電球の方が電気の消費量が少ないと全員の児童が理解できた。

これらのことから,自転車発電で白熱電球とLED電球を比較することは,負荷や電気の消費量の違いを理解するのに効果があった。

(2)-①各発電所での発電方法を調べ,電気は電磁石の仕組みで作られていることを理解する。

5年生時に電磁石の学習をしている。その学習を生かし,発電所の電気もモーター(電磁石)の仕組みで電気をつくっていることを理解できるようにした。

方法は,インターネットを使い電力会社のHPを調べた。その結果,水力や火力,風力等,タービンを回しているエネルギーは違うが,回転する力を発電機に伝え,電気をつくっていることを理解することができた。そして,発電機とはどんな物かを考えた。回っていることと,今までモーターを回して電気をつくってきたことから,発電所では大きなモーターを回して発電していることに気づくことができた。

さらに発電比率を知ることで,火力発電の割合の大きさから,電気の利用と環境への影響について考えを深める児童が多かった。

5.最後に

自転車で電気をつくり,家電製品を動かす体験を十分にしたことで,電気の大切さを理解し,効率よく利用しようとする意識が高まった。さらに,節電しようとする行動にも変化が現れた。また,学習意欲も高まり,学習内容として学ぶべき内容も十分身につけることができた。