めざせノーベル賞!この天王寺の地から学ぶ楽しさを知り、チャレンジする子どもを。
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教育推進部 部長:柏本 光
1946年の創業以来、教科書・教材づくりを通じて教育に関する様々な課題やニーズと向き合い続けてきた新興出版社啓林館。子どもたちに算数や理科をもっと身近に感じてもらいたい、知らないことを知る楽しさに触れる機会を提供したいという思いから、地域貢献事業の一つとして2013年7月より「わくわく学習教室」を開催しています。著者の先生方、大学さん、地域の企業さんなどにお力添えをいただきながら活動を広げ、今ではキャンセル待ちが出るほど地域の子どもたちや保護者の皆様に楽しみにしていただけるまでになりました。2020年2月までにこの教室で学んだ子どもたちは実に2500人以上にもなります。
そうした積み重ねによって、文部科学省主催、令和元年度「青少年の体験活動推進企業表彰」において「審査委員会優秀賞」の表彰を受けるなど、これからの展開にも大きな可能性を感じている「わくわく学習教室」。その誕生の背景や、今後のビジョンなど、私たちの思いをお伝えします。
「わくわく」は学びの原点。
算数や理科の楽しさ、おもしろさ、不思議さを体験できる教室を。
地域に開かれた会社をめざし、大阪本社の2階に地域の方々に利用していただける多目的ルームをつくることになった2012年。その活用方法を考えはじめていたちょうどその頃に、大阪本社がある大阪市天王寺区にゆかりのある山中伸弥氏がノーベル生理学・医学賞を受賞されたんです。そのニュースを聞き、「天王寺区から将来またノーベル賞受賞者を出したい!そんな子どもを地域で育てたい!」という話になり、「わくわく学習教室」というアイデアが生まれました。
子どもたちが算数や理科に興味を持つきっかけづくりができたらというのがこの教室のコンセプト。「算数を使えばこんなことができるよ!」「学校で習う理科って、すごくいっぱい身の回りにあふれてるんだよ!」というのを、大学の先生方や地域の企業さんに授業をしていただく形で、子どもたちが実際に体感・体験できる場となっています。毎月2回、平日の夕方に開催しているのですが、教室が終わっても子どもたちが講師の方にいろいろな質問をしたり、「次の回はいつ?」と楽しみにしてくれたり、保護者の方からは「家でも今日習ったことを教えたいので、予備の資料をいただけませんか?」と言っていただけたり。毎回、好奇心のエネルギーで教室がにぎわっています。
天王寺近辺の子どもたちを対象にはじめたこの「わくわく学習教室」ですが、もっと多くの子どもたちに提供したいという社員たちの熱い思いもあり、少しずつ教室が増えていっています。地域の大学さんと連携しながら出張教室として開催したり、「サイエンスカフェ」(東京支社)や「わくわく学習教室 名古屋教室」(東海支社)のような事業所ごとの取り組みもはじまっています。算数や理科の楽しさ、おもしろさ、不思議さを知ってもらうこの教室での体験をきっかけに、子どもたちが生活のいろいろな場面でわくわくしながら学んだりチャレンジしていってくれたら嬉しいなと思います。
地域の企業さんに、
「こんなところにも理科が!」を伝えていただく意味とは?
「自分たちの身の回りには理科があふれているんだ!」と子どもたちに興味を持ってもらうには、企業さんから伝えていただくことがとても大きな意味を持つと思っています。例えば磁石の会社さんや食品メーカーさんなど、様々な業界の企業さんで使われている理科の力を子どもたちに教えていただいているのですが、子どもたちだけでなく大人でも「知らなかった!すごい!」とわくわくしてしまうものばかりです。ある時、地元のお菓子メーカーさんから型に流し込んだチョコレートは空気をバンッとぶつけて振るい落としているということを聞いて、小学校で習っている空気の勉強と繋がる部分があったり、空気ってこんなふうにも利用されるんだと新たな発見があり、「これだ!」と思ったんです。
子どもたちに一番身近なテーマ「食」の中には科学がたくさん隠れていて、それを企業さんに伝えてもらえれば本当におもしろいことができるんじゃないかということで、2018年に「食と科学のふしぎ博」というイベントへと発展させました。「昆布だしの秘密」、「ヨーグルトを知ろう」、「水溶液としてお茶を見てみよう」など、いろいろな食品メーカーさんに協力いただき、理科的要素を盛り込んだ内容をわかりやすく、そして楽しく、子どもたちに教えていただきました。また、特に地元大阪の企業さんとのこうした触れ合いを通して、身近にこんなすごい企業があるんだということを子どもたちに知ってもらって、自分たちの暮らす街をもっと好きになってくれたらいいなと思うのです。講師をしていただいた企業の方々からも、普段なかなか自分たちの商品づくりを子どもたちに直接伝えられる機会がないということで、嬉しい交流になったと好評でした。
こんなふうに「わくわく学習教室」は毎月2回の教室を基本としながら、変幻自在に広げていけると思うんです。教育のトータルサポーターとして私たちにできることを子どもたちや地域に還元していく。このことが未来づくりになると確信しているからこそ、教室やイベントで得たヒントをもとに、子どもたちにより有益なものを発信し続けていきたいですね。
大学や地域の企業との繋がりは、
子どもたちのためにもっと大きな力に変えられる。
今、教育自体がいろいろな意味で転換期にあると思っています。インターネットの普及などで、世間では疑似体験が身近なものになってきました。そんな中で改めて思うのは、やはり「直の体験」は生きる力を育てる基礎になるということ。本物に触れて実際に体験する楽しさや驚き、感動が、学びやチャレンジへのモチベーションをもたらしたり、豊かな発想力に繋がっていくと感じているからです。
例えば、大隅良典先生(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞、啓林館理科教科書著者)をお招きし、教室100回記念として開催した「わくわく科学フォーラム in OSAKA」はその最たるものでしょう。フォーラムの中では大隅先生に子どもたちと触れ合う機会をいただきました。子どもたちは大隅先生への質問や返してもらったメッセージを通して、ノーベル賞を身近に体験できるとても貴重な時間を持つことができました。
教科書制作会社の財産であるいろいろな分野のすばらしい先生方との繋がりや、私たちの思いに賛同しお力添えいただける様々な企業さんとの繋がりは、もっともっと大きな力に変えられると思っています。一社だけではできることに限りがありますが、一つの繋がりからどんどん手を繋いでコンソーシアムのようなものが組めたら、その時その時にタイムリーないいものをもっと子どもたちに伝えていけるのではないかと考えています。まだ夢のまた夢ではありますが、そこを目指して一歩ずつ進み続けていきたいですね。「大阪の子どもは大阪で育てる」という気持ちでまずは天王寺からはじめた取り組みが、少しずつ全国に広がって、大学・地域の企業がその地域の子どもにわくわく学べる場を提供する形を様々に実現していっています。でも、まだまだこれから。たくさんの人たちと手を取り合っていく先で子どもたちに何が提供できるか、私たちも非常に楽しみです。
柏本 光(かしもと ひかる)
1994年、㈱新興出版社啓林館に入社。和歌山県出身。
小学校〜高校の教科書・教材の販促、教育現場のサポートを入社以来担当。地域貢献事業「わくわく学習教室」の企画・運営担当責任者。
趣味は飼い猫5匹とたわむれること、おいしいものの食べ歩き。
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