ホーム > 教師の方へ > 小学校 > 私の実践・私の工夫(算数) > 「かずとおともだちになろう」 2年「1000までの数 数の大小」

教師の方へ

私の実践・私の工夫(算数)

「かずとおともだちになろう」
2年「1000までの数 数の大小」

青森県三沢市立岡三沢小学校 木下 鉄也

1.ねらい ~こんな子どもを育てたい!~

○対象に働きかける子ども

わくわくするような思考体験から「知りたい」「考えたい」「やってみたい」という意欲を育てたいのです。「こうするといいかも。」「こんなことがしてみたい。」と考え出すとどんどん自分で条件や対象を広げていくと思います。

○論理的思考力を育てたい

直感で手がかりをもち,それを論理的思考で確かめられるような子を育てたいのです。「~が最大(最小)」と言える根拠をもてるには,場合をよく整理して確かめることが大切です。そんな場をしかけたいのです。

2.工夫のポイント・手立て

(1)カードの持たせ方

まずは1~9まで1セットで進めます。条件を考えて勝敗を予想します。次に1~9まで2セットに変えます。条件が広がり,「=」が出てくる可能性が広がります。

(2)適用題に工夫を ~誕生日を課題に~

条件を「誕生日」にします。「4けた VS 3けた」の時を取り上げて上から開こうとします。その時に「待ってぇ」と言える子に育てたいですよね。
・最大が1231,最小が101。1日違いで最大から最小に!ここにおもしろさを感じる子を育てたいのです。そのためには,前時までに「3けたの最大と4けたの最小の数」を意識した授業をしておきます。数直線を準備し,「一歩動くとチャンピオンからビリへ」を意識させておきます。

(3)成功のカギ! ~ゲームをしながら解決を!~

「ゲームしながら困った事を解決していく。それが本時のめあてにつながるように準備する。」困ることを想定して仕掛けます。困った事と本時のめあてをどう結びつけていくか,それはその時になってみないと分かりません。ただ,どうなってもいいようにしっかりと教材研究をします。授業では子どもの声に耳を傾けそれに従って進めていけば自然と流れていくものです。めあては次々と進化していくもの。そのたびにまとめておきます。次のめあては子どもの「問い」を中心に進めます。学びの連続性が身につけば、自ら問いをもって学び進められる子に育つでしょう。

3.授業の実際(8/12)

学習活動
○主な発問・児童の反応
○評価・留意点
1 本時の活動を知る。
大きいのはどっち?



○1~9までのカードを2人で3枚ずつ引いて並べるよ。1の位から開けていくよ。どっちが大きいかわかったら「ストップ」かけてね。
C:(①の状態で)もう先生の勝ちだよ。だって先生が8だし,もう9が出てるからね。
C:(開く)ほら,やっぱり。
C:次も先生の勝ちじゃん!(②で)
・教師と代表児童で行う。
・2,3回行う。
・開きながら,「もし~だったら大きい」などのつぶやきを拾う。
2 大小の表し方を知る。

○数を比べた結果を簡単に表す方法を教えます。
 169 < 825
 845 > 793
C:169は825より小さい。845は793より大きい。
・ノートに書く。必ず机間指導。書いたら言う練習をさせる。
3 ペアで対戦する。





C:先生,百の位からめくっていいですか?
C:その方が勝負が早いし,何度もできるから。
T:どうして「勝負が早い。」って言ってるか分かる人?隣の人に説明してみて。
T:おっ,数カードや例えの数字を使って説明してるんだね。
C:百の位までしかないから,もう百の位の数で大きさが決まるよ。例えば,僕が9だとするよ。数カードは1種類ずつしかないからもう9はないでしょ。だから9が百の位にあると最強ってこと。
C:でも僕はどきどきしたいから一の位からするよ。
C:あっ,私は最強の数字が出たよ。
C:987でしょ。百の位から大きい数を並べればいいんだよ。
T:ここまでまとめるよ。どこがわかればはっきり順位を決められるのかな。
C:百の位,一番上の位。
T:百の位に9を出されても負けって分からない方法はないかなあ。
C:数カードをもう1組使えばいいんじゃない。
・仮定法で予想しながら楽しませる。
・結果をノートに<,>を使って書く。書いたら言う。
・説明の仕方を工夫している児童を褒める。









○数の大小を判断し<,>を用いて表すことができたか。(ノート)



・発想を広げさせる。
4 カードを2セット準備し,ペアで対戦する。





C:(③)私は百の位に9が出た。
C:僕も百の位に9が出たよ。
T:一番大きい位で決まるんじゃなかったっけ?
C:あの時はカードが1組しかなかったけど,今は2組あるから同じ場合もあるよ。その時は十の位を開けばいいよ。
C:もし十の位も同じだったら一の位を開けば決まるよ。
C:(④)先生,すごいです。僕達は最後に十の位を開くんです。今のところ同点です。
C:えっ,もし同点だったら何て書けばいいんだろう…。
C:><かなあ。顔みたい!
T:右と左が同じっていう意味の記号,実は見たことあるんだよねえ。
C:ひょっとして=?
T:その通り!右と左が同じ時は=と書くんだよ。算数の言葉では「等しい」って言うんだよ。
C:でもそれって式の答えに書くって思ってたよ。
・最初は一緒に一の位から開いていく。
・結果をノートに<,>を使って書く。書いたら言う。
・最上位が同数の場合を提示する。
・上の位「だけ」ではなく,「上の位「から順に」調べて決めることをおさえる。
○数の大小を比べるには,大きい位から比べていけばいいことが分かったか。
・「もし全てが同じだったら…」では=の意味について教える。
5 わかったことをまとめる。
今日勉強したことは?
C:数比べは上の位からめくっていけば勝ち負けが分かるんだよね。
数の大小をくらべるときは,上の位からじゅんにくらべていけばよい。
6 適応題を解く。







T:自分の誕生日と隣の人の誕生日を比べよう。先生は5月13日なので513だよ。今日だったら7月4日なので,704にするよ。見られないように裏返してね。
T:(⑤)このペアに注目。この子はカード4枚。この子はカード3枚。じゃあ上から比べるよ。
C:ええっ!めくらなくてもいいよ。
T:そう言っている人がいるよ。
C:だって,4枚ってことは百の位より大きな数でしょ。こっちはどんなに大きくても百の位まででしょ。だからもうめくらなくても4枚の方が勝ちってわかるよ。
T:この中で最強って何だろう。
C:12月31日で1231だよ。
C:じゃあ一番小さいのは…。
C:1月1日で101だよ。
C:12月31日と1月1日って,1日違いなのに。
C:昨日までチャンピオンだったのに今日はびりになったね。
C:3けた最強と4けたびりの,999と1000の時みたいだね。
・自分の誕生日をノートに書かせる。机間指導で確認する。
・結果をノートに<,>を使って書く。書いたら言う。
・3けたと4けたでゆさぶる。


4.考察

(1)成果

①実際に見られた数学的態度

ゲームに負けた場合でも、出たカードや残りのカードを見渡して考え、「このカードがこうだったら勝っていた」など、場合を整理して考えられる姿が見られました。これは6年生の「場合の数」につながります。「もし~だったら…」という仮定法や「例えば…」にあるように条件といった大切な数学的思考が自然に見られました。

②数に対する感覚が豊かになった

「~が最強」「だったらビリは~」など自分達で可能性を広げていきました。適応題でも「最大と最小は1日違いっておもしろい」という発言が見られました。とても豊かで鋭い感覚だと思います。数っておもしろいと思える、おもしろくするのは自分のアイデア次第、そんな姿が見られたのは私の最大の喜びです。

(2)課題

①さらに発展させるとしたら…

ぜひ3人組の場合も試したい!きっと自然に小さい順に並べたり大きい順に並べたりする姿も見られるでしょう。順番に表す方が分かりやすいことも実感できるはずです。3けたどうしで行い,百の位と一の位を同数にして,十の位だけ伏せておきます。そこに入る数の範囲を考えるのも面白いと思います。これも高学年や中学校の内容につながります。思考だけでも体験しておくのも大切です。

②逆転できる工夫を

誕生日を使ったゲームでは勝敗が工夫次第で逆転できるといいですね。低学年は負けて終わらせない工夫も大切です。