私の実践・私の工夫(理科)
理科への興味・関心を高める指導法と教材の工夫
~ 身近な水溶液の仲間分けを通して ~
1.はじめに
新学習指導要領では,理科教育の充実が求められている。理科の目標は,「科学的な見方や考え方を養う」ことである。目標が達成されるために重要なことは,子どもたちが科学を学ぶことの意義や有用性を実感し,科学への関心が高まっていくことと考える。教師には,子どもたちに科学が身近なものとしてとらえさせ,知的好奇心を喚起し,興味・関心をひく教材の導入や実験・観察が有効な手段となる。
子どもたちが楽しさを感じるためには,まず教師が楽しいと感じるものでなければならない。教師主導で教え込む授業では,子どもたちは興味を示さないし,意欲を引き出すこともできない。子どもたちの興味・関心や意欲を引き出し,教師が適切にアドバイスをしていけば,子どもたちは,自主的に学習に取り組むようになると考える。
2. 教材について
6年生「水よう液の性質」の単元で,リトマス紙を使うことによって,「酸性」「中性」「アルカリ性」の三つの性質に分けることができるこということを学習した。
児童がさらに興味を示すためには,
- リトマス紙以外の他の方法で液性を調べること
- 身近な生活における水溶液の仲間分けをすること
の2つを行うことが必要と考えた。
この授業を行うために,単元の導入で,生活の中にある身近な水溶液には,どのようなものがあるかを児童に聞いてあり,その時に出てきた水溶液を実験に用いることにした。
●児童の発言による身近な水溶液
□スポーツドリンク | □アルカリイオン水 | □砂糖水 | □レモン水 | □酢 |
□料理酒 | □ハンドソープ液 | □アルコール消毒液 | ||
□漂白剤 | □パイプ洗浄剤 | □重曹 | □台所用漂白剤 | |
□トイレ洗浄剤 | □ウォッシャー液 | □洗濯洗剤 |
3. 授業展開
【実験に使う物】
○ムラサキキャベツの抽出液(プチボトル) ※液の作り方は,下記参照
○試験管立て ○試験管 ○各種水溶液(上記参照)
※ムラサキキャベツの抽出液の作り方
- ① ムラサキキャベツを細かく切って,ビーカーに入れ,ムラサキキャベツの3分の1程度水を加えて加熱する。
- ② 水が濃い紫色になり,ムラサキキャベツの色が白っぽくなったら加熱をやめ,冷めるのを待つ。
- ③ 抽出液を別のビーカーに移す。
【授業の流れ】
4. 子どもたちの考察
考察する際には,観点を絞ると子どもたちからは,より良い意見が出てくると考える。今回の実験では,「ムラサキキャベツの良さ」と「実験を通してわかったこと・感じたこと」の2点に重点を置いた。すると,以下のような意見がでてきた。
- ○ ムラサキキャベツの方がリトマス紙よりくわしく調べられる。
- ○ 食べ物や飲み物は,酸性だ。
- ○ 酸性やアルカリ性には,強さがあるのかもしれない。
- ○ ムラサキキャベツ以外にも調べられるものはないか。
5. 終わりに
この実践は,苫小牧市教育研究会理科部会の公開授業で行ったものである。準備に時間がかかることや,45分の中では,内容が盛りだくさんであるという課題もあるが,児童にとって,使用したものは,家の中にあるものであり,生活の中に密着しているものである。また,色がはっきり変わる実験なので,変化に気付きやすく,より興味を抱く実験だった。事前に予備実験をした際に,指導者である私自身が,何色に変化するのかとわくわくしながら行ったように,子どもたちも,各種水溶液の性質を楽しみながら実験をしていたように感じる。
今回の実験のように,楽しい実験であること,理科が身近な生活の中にあるということを発見することで,より科学に興味・関心を高められると考える。
【参考文献】
北海道立教育研究所付属理科教育センター指導資料