本校は,幼保小連携推進事業の研究指定校として,近隣の5つの幼稚園・保育所と連携を図ってきた。1年目は,子供達の交流を中心とし,教職員間で保育や授業の参観を行った。2年目は,一緒に活動できる行事を幼稚園・保育所の先生方と話し合い,計画を立てて取り組んできた。翌年は,2年間の経験を基に,幼稚園の先生方と一緒に授業を考え,それぞれの学校園で共に研修を行ったり,地域の児童館で研修を行ったりして,カリキュラムをつなぐ授業やティームティーチングで取り組む授業を一緒に考えた。幼稚園・保育所,地域の方々と共に子供達の学びが深まっていくように年間を通して,カリキュラムを工夫した。
(知識及び技能の基礎)
(思考力,判断力,表現力等の基礎)
(学びに向かう力,人間性等)
(協同性)
友達と一緒に考えたり,工夫したりしながら,繰り返し挑戦しようとする。
(自然との関わり・生命尊重)
身近な自然の変化に気づき,友達と一緒に考えを出し合いながら生活や遊びのなかに取り入れられるようになる。
(言葉による伝え合い)
自分の思いを相手に分かるように伝え,相手の思いを聞いて分かろうとするようになる。
本単元では,移り行く季節を感じ,身の回りの遊び場から秋ならではの自然をたくさん見つけ,校内の学習園や地域の公園の春や夏との様子を比べ,秋のお宝をたくさん見つけることができた。地域の方からも,校区内に秋がたくさんあることを教えてもらう機会を持つことで身近な秋を感じることができた。校外学習では,学校の周りとは違う秋をたくさん見つけることができた。見つけた秋のお宝で遊びを楽しんだり,自分のとっておきの秋を作品にしたりしながら学校の周りの秋との違いを比べ,どの町にも季節の移り変わりがあることを感じることができた。また,ゲストティーチャーを招き,ドングリの種類や生息地,特徴などを詳しく教えていただいた。子供たちの発想を広げるために,秋の素材を使った遊び方をたし算にして教えていただき,秋遊びを自分たちで考えていけるようにした。本単元の中で,友達と一緒に秋を楽しみ,秋の自然物を使った制作活動に取り組むことで,自分の思いや考えを表現できるようにしてきた。また,「いいねカード」や「もっともっとカード」の活用を通して,友達との意見交流がお互いの作品をより良いものにすることにつながっていった。年間を通して交流のある近隣の幼稚園・保育所の年長児にも,見つけてきた秋を紹介したり,クラスのミニ秋祭りに招待したりして一緒に秋を楽しんだ。さらに,2年生や6年生を招待して,学年合同で秋祭りを開く計画をたてた。友達と共に活動する良さや楽しさを味わえるようにすることで,人とのかかわりを大切にしようとする心を育てていけるようにした。
以下のように幼保小交流の年間計画を計画した。年度当初に計画することで,見通しをもって学習を進めることができた。
1年生と園児,それぞれが目指す子供像を設定するために,生活科の内容と幼児期の終わりまでに育ってほしい姿をつなげて明記した。交流は,1年間で5回行い,さらに,他教科の学習と連携して,手紙を書いたり,作品展を見に行ったりした。何度も交流を行うことによって,幼稚園や保育所の園児との距離が縮まっていくのを感じた。
月 | 単元名・活動内容 | 生活科の内容 | 幼児期の終わりまでに 育ってほしい10の姿 |
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5 |
さあみんなででかけよう
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6 |
※学活
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7 |
だいすき なつ
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9 |
※国語「おてがみをかこう」
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10 |
※図工「おうえんしよう」
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11 |
えがおいっぱい あきいっぱい | ||
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12 |
※学活「さくひんてんをみにいこう」
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1 |
たのしさみつけたよ ふゆ
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3 |
もうすぐ2年生
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関連する教科等 | 学習活動 |
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第1次 なつからかわったところをみつけよう(3時間) |
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算数科「たしざん」
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○校庭に出て,秋をさがし,実で遊ぶ。(1) ○遊び場へ行き,春からの変化を見つける。(1)
○身の回りで感じられる季節の変化について気づいたことを発表し合う。(1) |
第2次 あきたんけんにでかけよう~みつけたあきをしょうかいしよう~(6時間) |
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国語科「しらせたいな,見せたいな」
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第3次 つくってみつけてたのしもう(7時間) |
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図画工作科「あきのものでつくろう」
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○ゲストティーチャーの話を聞いたり,秋の自然物で友達と一緒に遊んだりする。(1) ○集めた落ち葉や木の実で,どんなことができるかを考える。(1) ○アサガオのつるで作ったリースに,集めた落ち葉や木の実を付けて,飾りを作る。(1) ○自分が考えたあきあそびを作る。(4)
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第4次 みんなであきをたのしもう(8時間) |
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道徳科「はっぴょうかい」
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○友達のあきあそびと交流した振り返りをし,自分たちで遊ぶだけではなく,園児や他学年を招待して,一緒にあきまつりをする計画をたてる。(1) ○友達からのアドバイスを元に,より楽しく遊べる工夫をし,園児を招待する準備をする。(1) 【本時①】 ○「ミニあきまつり」を開催し,園児とあきあそびを楽しみ,感じたことや気づいたことを出し合う。(1) 【本時②】 ○「ミニあきまつり」を振り返り,次の「あきまつり」の準備をする。(2)
○「あきまつり」を開く。(2) ○「あきまつり」を振り返る。(1) |
幼保小交流で,小学校入学前の地域の子供達の姿を知ることができたこと,幼稚園・保育所の先生方がどのような願いや思いをもって子供達と関わっているかを実際に見て聞いたことは,小学校に入学してからの子供達の成長につなぐうえでとても重要なことであった。また,園児たちも小学校に来ること,1年生と触れ合うことは,「はやく1年生になりたい」という思いを育てると共に,入学してからの不安を取り除くことにもつながると3年間の交流を通じて感じた。幼稚園と保育所で年長者として,お兄さん,お姉さんとして自信をつけ,育ってきた園児たちは,小学校に入学すると,たくさんのお兄さん,お姉さんに囲まれた新しい生活となる。そのため,小学校に入学すると一番下の弟,妹となってしまい,今までの自信と培ってきた力が発揮できない場面を小学校生活では作ってしまう事がある。幼稚園や保育所の先生と一緒に授業を考えることで,どのような力がつき,その力をつけるためには,どのように幼稚園や保育所の先生方が育ててきたかを知ることで,園児達の学びを知り,スタートカリキュラムに活かすこともできた。また,幼稚園や保育所の先生方も1年生がどのような生活をしているか,どのように学んでいるかを知ることで,入学までにどのような力をつけていけばいいかを考えながら,保育計画やアプローチカリキュラムを立てることにもつながっていった。一緒に授業を考えることで,より具体的に目指す子供像が見えてきたこともとてもよかったと思う。そして,1年生になった子供達は,自分達が,幼稚園や保育所の子供達と一緒に活動することを楽しみにしている。幼保小をつなぐためにも,この取組は,大きな意味があるものだと感じた。
本校は,1年生170人と5つの園とで交流を続けてきた。グループではなく,ペアで活動することで,仲が深まるのだが,5つの園と予定を調整し,行事の計画を立てるのは,とても大変だった。日程調整が難しいだけでなく,天候やインフルエンザの流行時期によっては活動ができなくなることもあった。また,1年生を担任する教員が毎年変わることや,教職員の異動によっては継続していくことが難しい面もある。