本冊1年(教科書番号732)
別冊1年(教科書番号733)
本冊2年(教科書番号832)
別冊2年(教科書番号833)
本冊3年(教科書番号932)
別冊3年(教科書番号933)
教科書の巻末についているシートはなぜ青色なのですか?
A.
色覚の個人差に配慮し,すべての生徒が利用できるようシートを青色にし,また,紙面の配色を工夫しております。
用語の反復学習などに用いる従来のシートは赤色ですが,色覚の個人差によって,シートをかぶせた箇所が真っ黒に見えて何も見えなかったり,逆に色文字部分が隠れず見えすぎたりするという課題がありました。
啓林館では,色覚の個人差によらず,誰でも利用できるシートの実現のため,シートと紙面の色の組み合わせについて独自に開発と試作を重ね,平成28年度用教科書から青色シート(カラーユニバーサルフィルター)を提供しております(特許第5701418号)。
青色シートは,本冊単元末の「学習のまとめ」とマイノートの「用語の確認」などで,ご利用いただけます。
教科書の表記で,読点に「、」でなく,「,」を使っているのはなぜですか?
A.
一般的には,句読点は縦書きでは「、」「。」の組み合わせ,横書きでは以下の組み合わせで使うことがよいとされています。
「,」「。」
「、」「。」
「,」「.」
中でも一番多いのが「,」「。」の組み合わせだと思います。
なお,『公用文作成の要領』(内閣通知)には,注記として次のように記載されています。
『句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。』
したがって,学習指導要領など,文部科学省の資料も「,」「。」で表記されています。
このような事情を踏まえ,教科書の表記では句読点に「,」「。」を使っています。
リットルの単位を大文字の「L」で表記するのはなぜですか?
A. 教科書で使用する単位は,計量法で定められた国際単位系(SI)の単位を使うことになっています。体積の単位リットルは,SIに属しませんが,国際度量衡委員会で併用が認められています。そのときの単位記号は,ローマン体(直立体)の「l」か「L」と決められています。ローマン体「l」は数字の1と紛らわしいために,大文字の「 L 」を使用することにしました。
速さの単位がm/秒やkm/時ではなく,m/sやkm/hなのはなぜですか?
A.
教科書では,単位の表記は国際単位系(SI)に基づくことを原則としています。SIによると,「秒」は「s」,「時」は「h」で表すことになりますが,これまでは慣例として,わかりやすい「秒」や「時」の表記を採用していました。
平成24年度用の教科書から,文部科学省の検定意見により,「秒」や「時」もSIに則って,「s」や「h」と表記することになりました。したがいまして,J/秒もJ/sと表記しています。
なお,「分」はSIによると「min」という表記になりますが,生徒の負担を考慮して,メートル毎分(m/min)等の表記は扱わないようにしています。
1学年
花のつくりの学習で,「花びら」ではなく,「花弁」を用いているのはなぜですか?
A. 文部科学省からの検定意見により,平成24年度用教科書から,「花びら」ではなく,「花弁」を用いることとなりました。
裸子植物の雄花のつくりの学習で,「やく」ではなく,「花粉のう」を用いているのはなぜですか?
A. 文部科学省からの検定意見により,平成24年度用教科書から,裸子植物においては「やく」ではなく,「花粉のう」を用いることとなりました。
「養分」と「栄養分」の用語はどのように定義されているのですか?
A.
「養分」については,小学校理科では『小学校学習指導要領解説 理科編(平成20年8月)』に次のような表記があります。
・理科5年-B-(1)
ア 植物は,種子の中の養分を基にして発芽すること。
ウ 植物の成長には,日光や肥料などが関係していること。
・理科6年-A-(1)
ウ 血液は,心臓の働きで体内を巡り,養分,酸素及び二酸化炭素などを運んでいること。
それに対して,中学校理科では,『中学校学習指導要領解説 理科編(平成20年9月)』に「養分」の表記はなく,「光合成によって生じた有機物は師管を通って他の部位に運ばれる」と,「食物が物理的及び化学的に消化され,栄養分が吸収される仕組みを理解させる。」との記載があるのみです。
これらを受けて,平成28年度用教科書の中では次のように説明(定義)しています。
・中学校理科教科書本冊-1年 p.26
小学校では,葉でつくられたデンプンを養分とよんでいた。この教科書では,葉でつくられたデンプンを栄養分,根から水とともにとり入れられる肥料分を養分としている。
また,「肥料」という用語は,デンプンなどとの区別はわかりやすいですが,「人が作物に与えるもの」という印象から,自然の植物全般に使うのは避けたほうがよいという意見もあります。よって,平成28年度用教科書では「養分」と「栄養分」という用語を使用しております。ただし,「養分」,「栄養分」などの言葉は,分野や文献によっていろいろな使い方をされていますのでご留意ください。
植物の光合成の実験で,オオカナダモとBTB溶液を使った実験をとりあげていないのはなぜですか?
A.
以前は植物の光合成の実験にオオカナダモとBTB溶液を使ったものもとりあげていました。しかし,この実験については次のような可能性が考えられます。
「光合成によって発生した酸素の泡の中に,水中の二酸化炭素がとりこまれて,一緒になって水から出ていく可能性がある。それによって水中の二酸化炭素が減少し,BTB溶液の色が変化するのではないか。」
つまり,水中の二酸化炭素が減少する原因には,植物の光合成以外の可能性もあるということです。
そのような背景から,平成28年度用教科書ではこの実験をとりあげていません。
植物の光合成や呼吸の実験で,BTB溶液を使わずに石灰水を使うのはなぜですか?
A.
おそらくBTB溶液でも,二酸化炭素の発生や二酸化炭素量の減少を確認できます。ただし,BTB溶液は酸・アルカリ指示薬であり,二酸化炭素の有無や増減を見るための試薬ではありません。ですので,この実験では石灰水を使用しております。
また,石灰水はBTB溶液のような色の調整が不要ですし,小学校でも使用した経験がある試薬ですので扱いやすいという点も,この実験で石灰水を使用する理由の1つです。
なお,実験の際には,アルカリ性水溶液である石灰水が目に入らないように安全眼鏡を着用し,安全面にご配慮ください。
藻類は植物ではないのですか?
A. 平成24年度用教科書から五界説の考え方に基づき,藻類を植物のなかまに分類しておりません。五界説では,造卵器をもち,内部に胚を形成する有胚植物(陸上植物)を植物界に分類しております。なお,藻類は五界説では原生生物界に分類されます。
2学年
「デンプンが分解されると糖ができる」という表現をしないのはなぜですか?
A. 文部科学省からの検定意見により,平成24年度用教科書から,デンプンも糖のひとつとして扱うことになりました。このため,「デンプンが分解されて糖ができる」という表現では,デンプンが糖ではないかのような誤解を招く恐れがあります。教科書では,「デンプンが分解されてできた糖」や,「デンプンはブドウ糖に分解される」のような表現を用いています。
脂肪が消化されてできる分解産物は,「脂肪酸とモノグリセリド」と教科書に書かれています。以前は「脂肪酸とグリセリン」だったように思います。「モノグリセリド」と「グリセリン」の違いは何ですか?
A.
文部科学省からの検定意見により,平成24年度用教科書から,「脂肪は脂肪酸とモノグリセリドに分解される」となりました。
モノグリセリド(別名:モノアシルグリセロール)は,グリセリン1分子に脂肪酸1分子がくっついた状態のものになります。つまり,モノグリセリドとグリセリンの違いは,脂肪酸1分子の有無です。
今までの教科書では,モノグリセリドは,モノアシルグリセロールリパーゼによって,グリセリンと脂肪酸までさらに分解が進むという考えでしたが,近年の研究により,そこまで反応が進むことはないことがわかってきています。小腸粘膜では,グリセリンまで分解されるより先に,脂肪が再合成されてしまうようです。
脂肪(別名:トリグリセリド,トリアシルグリセロール)は,グリセリン1分子に脂肪酸3分子がくっついた形状をしています。脂肪は消化の際に,2種類のリパーゼによって分解されます。
まず,トリアシルグリセロールリパーゼによって,脂肪(別名:トリグリセリド,トリアシルグリセロール)は,ジグリセリド1分子と脂肪酸1分子に分解されます。
さらに,ジアシルグリセロールリパーゼによって,ジグリセリドは,モノグリセリド1分子と脂肪酸1分子に分解されます。
「じゅうもう」は「絨毛」と書くのではないのですか?
A.
教科書で使用します専門用語の表記は,原則として文部科学省の『学術用語集』にしたがっています。
「じゅうもう」については,『学術用語集-動物学編-』にしたがって「柔毛」としています。また,『生物教育用語集』(日本動物学会/日本植物学会 編)でも同様に,「柔突起,絨毛ともいうが,教育用語としては,字数が少なく平明な柔毛に統一した。」となっています。
哺乳類は,爬虫類から進化したのではないのですか?
A.
文部科学省からの検定意見により,平成24年度用教科書から,哺乳類は爬虫類から進化したと記述しておりません。
今までの教科書では,哺乳類は爬虫類から進化したと説明していました。しかし近年の研究の成果から,哺乳類と爬虫類は,別物であるという考えが主流となっています。
現在では,両生類から羊膜類(羊膜と卵殻をもつ四肢動物)が進化し,そのときに双弓類と単弓類が進化したと考えられています。
双弓類は頭骨の左右に2つずつ,双弓型側頭窓という穴をもち,『爬虫類と鳥類の共通の祖先とそのすべての子孫を含む単系統群。(生物学辞典 東京化学同人 2010)』と定義されています。
単弓類は頭骨の左右に1つずつ,単弓型側頭窓という穴をもち,『すべての哺乳類の共通の祖先とそのすべての子孫を含む単系統群。かつてはディメトロドンやキノドン類などを哺乳類型爬虫類とよんでいた。しかし,単弓類と爬虫類が石炭紀から独立した進化をしていたことが明らかになるにつれ,単弓類の一部を爬虫類の一部のような名前でよぶのは適切ではないと考えられるようになっている。そのため,かつての哺乳類型爬虫類(哺乳類ではない)は単弓類と称するのが一般的になりつつある。(生物学辞典 東京化学同人 2010)』と定義されています。
また,『単弓類はペルム紀には大型の草食者や肉食者に進化し,その時代には支配的な四肢類であった。しかし,ペルム紀末から三畳紀はじめの大絶滅の時代に激減し,三畳紀(2億5100万~2億年前)にはその多様性は減少した。その後,哺乳類様の単弓類が2億年前の三畳紀末期に出現した。(中略)最初の真の哺乳類はジュラ紀(2億~1億4500万年前)に出現し,いくつもの系統に分化したが,その多くは短命だった。(キャンベル生物学 丸善 2013)』とあるように,単弓類の進化の道のりも,平坦ではなかったようです。
以上のことから,哺乳類は,両生類から進化した単弓類(爬虫類とは別物)から進化したと考えられています。
3学年
植物には,「成長」ではなく「生長」を使うのではありませんか?
A.
教科書で使用します専門用語の表記は,原則として文部科学省の『学術用語集』にしたがっています。
「せいちょう」については,以前の『学術用語集-植物学編-』では「生長」,『学術用語集-動物学編-』では「成長」と記載してありましたが,改訂を経て,現在の『学術用語集』ではどちらも「成長」に統一されています。(ちなみに,どちらも英語の「growth」に対応した用語になっています。)
一般の辞書では,現在も「生長」と「成長」を使い分けているものも多いですが,教科書では,現在の『学術用語集』にしたがって,どちらも「成長」としています。
発生の学習で,「卵」という用語がでてきますが,「卵」と「卵子」はどちらが正しいのですか?
A.
教科書で使用します専門用語の表記は,原則として文部科学省の『学術用語集』にしたがっています。
文部科学省の『学術用語集-動物学編-』と『学術用語集-遺伝学編-』では,すべて「卵〔子〕」と記載されています。
また,『生物教育用語集』(日本動物学会/日本植物学会 編)でも,「成熟卵を卵子ともいうが……教育用語としては卵子は用いず卵に統一する」となっています。
上記のことから,啓林館中学校理科教科書では「卵」を用いています。
ただし,「卵」と「卵子」で,どちらが正しいということはありません。医学や畜産学では,「卵子」を用いることが多いようです。
1学年
「雲仙普賢岳」は,「平成新山」に変わったのですか?
A. まず,雲仙岳は普賢岳,国見岳,妙見岳,野岳,九千部岳などを有する山の総称で,気象庁などでは成層火山に区分されています。平成新山は,普賢岳の山体における1990年からの火山活動で形成された溶岩ドームで,雲仙岳の最高峰になります。気象庁や国土地理院などの表記に準じて,雲仙岳の最高峰の溶岩ドームを指し示すときは,「平成新山」と表記することが適切と思われます。
「三原山」は傾斜がゆるやかな形の火山ではなく,円すいの形の火山なのですか?
A. 「三原山(伊豆大島)」は,割れ目噴火や山体の形状などから,従来,マウナロア(ハワイ)などと同じ傾斜がゆるやかな形の火山に区分しておりましたが,気象庁や理科年表では,その成因などから,「三原山(伊豆大島)」は成層火山(円すいの形の火山)に区分されております。平成28年度用教科書p.74では,円すいの形の火山の区分に改め,①として脚注に,「日本には「傾斜がゆるやかな形」に分類される火山は見られない。」との説明を補足しております。
火成岩での岩石名は,ひらがな交じりの漢字で表記されているのに,鉱物名はカタカナ表記されているのは,なぜですか?
A.
教科書で使用します専門用語の表記は,原則として文部科学省(旧文部省)の『学術用語集』にしたがっています。
火成岩の6種類の岩石名は,学術用語集では,ひらがな交じりの漢字で表記されており,教科書もそれに準じております。一方,鉱物名は,学術用語集では「角閃石・カクセン石」のように,漢字表記とカタカナ(+漢字)表記の両方が,併記されています。したがって,鉱物名に関しては,漢字表記とカタカナ(+漢字)表記のどちらの表記を選択しても,問題はありません。
啓林館の中学校理科では,1年生で初めて,合計12種類の岩石名や鉱物名に触れる場面において,岩石名と鉱物名を混同する恐れがあるという発達段階を考慮し,岩石名(ひらがな交じりの漢字表記)と一目で区別しやすい,カタカナ(+漢字)表記の鉱物名の表記を用いております。
火成岩の分類の図(教科書本冊1年p.83図31)では,6種類の岩石の左右の並びが,以前の教科書と異なっているのはなぜですか?
A. 平成9年度用の教科書では,流紋岩や花こう岩のような白っぽい岩石を左側に,玄武岩や斑れい岩のような黒っぽい岩石を右側に置いており,地学の専門書などと並びが逆になっているという指摘を受けていました。地学の専門書などでも,必ずしも統一されていない状況ですが,火成岩の多様性を説明する上で重要な「マグマの分化作用」をもとに,近年はSiO2の量が少ないものを左側に,多いものを右側に,つまり黒っぽいものを左側に置くことが多いようです。そのため,平成18年度用以降の教科書では,黒っぽいもの(SiO2の量が少ないもの)を左側に置いて並べることで統一しております。
「地質時代」が「地質年代」に変更されているのはなぜですか?
A.
「地質時代」と「地質年代」は,「地質時代」は地球誕生から歴史時代以前までの過去全体,「地質年代」はそれを細かく分けた年代区分といった意味で使い分けが行われていることもありますが,ほぼ同じ意味で使用されていることも少なくありません。同じ意味の場合,「地質時代」よりも,「地質年代」と呼ばれることのほうが,近年は多いようです。その背景には,地層の相対的な位置関係からの時代の推定よりも,放射年代測定などによる絶対的な年代の測定や調査,研究が盛んになってきたことなどがあると考えられます。
また,中学校理科教科書では,全社的に「地質時代」から「地質年代」へと変わっており,学習指導要領でも「地質年代」と記述されていることを受けて,平成28年度用の教科書より「地質年代」の表記に改訂しております。
新生代の区分が以前の教科書と異なっているのはなぜですか?
A. 2009年の国際地質科学連合(IUGS)での再定義により,新生代の区分が「第三紀」「第四紀」から,「古第三紀」「新第三紀」「第四紀」に変更になりました。理科の教科書では,文部科学省の検定意見により,中学校・高等学校ともに,現行課程(平成24年度)からの変更となりました。また,教科書本冊1年p.94~95の図43の地質年代の境の年数も,国際地質科学連合での再定義・更新に準じて,更新しております。
侵食の「侵」の字が「浸」でないのはなぜですか?
A.
教科書で使用します専門用語の表記は,原則として文部科学省(旧文部省)の『学術用語集』にしたがっています。
「しんしょく」については,『学術用語集-地学編-』において,昭和59年度発行のものから,それまで使われていた「浸食」が「侵食」に変わり,これに合わせて,教科書も平成元年度用から「侵食」に変更しております。この変更は,中学校・高等学校のすべての社で行われています。ちなみに,『学術用語集-地理学編-』では昭和56年のものから「侵食」となっています。また,学習指導要領解説書(平成20年9月)も「侵食」を用いています。
『学術用語集』での「侵食」への変更理由につきましては,当時の文部省に問い合わせを行ったところ,「川が土地を削り取るというはたらきを重視して,侵(おかす)にしたほうがよい」との専門家の意見によるもので,「浸」には「ひたす・しみこむ」という意味もあるために,「削り取る」といった意味合いが薄いという考えだと聞いております。しかしながら,国語辞典や一般の出版物では,現在でも,以前からの表記である「浸食」がよく使用されていると思います。
2学年
揚子江気団の表記がないのはなぜですか?
A. 以前,揚子江気団と呼ばれていたものは,気団の定義となる「移動しない,または,移動しにくい停滞性の大規模な高気圧」といったものに該当しないことから,現在の気象学では日本付近の気団は,シベリア気団,オホーツク海気団,小笠原気団の3つとされています。
3学年
2006年8月の惑星の定義の変更に伴い,教科書での扱いは,どのように変わりましたか?
A.
平成17年度,18年度用の教科書では,基本的に太陽系の惑星としては,冥王星を除く8つの天体を惑星として扱うこと,2006年8月に惑星の新定義が決まったことの補足を入れる訂正の申請を文部科学省に行い,承認されました。
さらに日本学術会議での対外報告を受け,平成19年度用の教科書に,冥王星が太陽系外縁天体という区分に分類されることの記述を追加する訂正の申請を文部科学省に行い,承認されました。
平成24年度用からの教科書では,日本学術会議での対外報告に準じた形で,冥王星は太陽系外縁天体の1つとして掲載し,傍注で2006年8月に惑星の新定義についての補足を加えております(教科書本冊3年p.36)。
詳しくは,以下のページをご覧ください。
太陽系の惑星の定義に関して
→ http://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/j-scie/kyokasho/taiyoukei.htm
教科書本冊3年p.43の観察1の記録例とp.45の図17の写真とで,黒点の移動方向(左右)が異なっているのはなぜですか?
A. 望遠鏡を使った3年p.43の観察1では,まず,対物レンズに入った光は,対物レンズによって一度実像になって,接眼レンズの所で上下左右反転して見えます。さらに接眼レンズから離れた投影板に映る像は,接眼レンズによって,もう一度実像として映し出されたもので,2回上下左右反転しているため,投影板の裏側から見ると,肉眼で見た向きと同じになります。これを,投影板の表側(内側)から見ると,左右だけが反転して見えることになり,上が北,下が南,左が西,右が東になります(下図参照)。
一方,3年p.45の図17では,空に見たまま太陽の向きで掲載しているため,上が北,下が南,左が東,右が西になるため,東西の向きがp.43の観察1の記録例とは,左右逆になります。
1学年
PETは「ポリエチレンテレフタラート」(教科書本冊1年p.130,134)となっていますが,「ポリエチレンテレフタレート」ではないですか?
A. 以前は,『化学大辞典』(東京化学同人,1989)などをもとに「ポリエチレンテレフタレート」という名称にしていましたが,より新しい文献である『理化学辞典(第5版)』(岩波書店,1998),『化合物命名法』(東京化学同人,日本化学会化合物命名法専門委員会編,2011)にあわせて,「ポリエチレンテレフタラート」を用いています。なお,『中学校学習指導要解説 理科編』(文部科学省,2008)でも「ポリエチレンテレフタラート」と表記されています。
教科書に掲載されている融点や沸点などのデータの出典を教えてください。
A. 物質の性質などのデータは,おもに毎年刊行されている『理科年表』(丸善,国立天文台編)をもとにしています。『理科年表』にない場合は,『理化学辞典(第5版)』(岩波書店,1998),『化学便覧(第5版)』(丸善,日本化学会編,2004)などをもとにしています。
溶質が水にとけていく実験(教科書本冊1年p.148図29)で,硫酸銅を用いるのはなぜですか?
A.
水に溶解するようすを見せる上で,どのような物質を選択するかの条件として,重要と考えられる順に
(1)呈色し溶解の観察が可能な物質であること
(2)純物質(純粋な物質)であること
(3)分子性物質(電荷をもたない物質)であること
が挙げられます。ただし,中学校で扱う物質の中で,(1)~(3)の全ての条件を満たすような物質はありません。
そこで,中学校で扱う物質の中で,上記の条件のうち(1)(2)の条件を満たし,早く溶解する硫酸銅を用いることにしました(コーヒーシュガーは(1)の条件を満たしますが,(2)の条件を満たさないため,避けました)。
(3)に関しては,硫酸銅は分子性物質ではなく,イオン性物質(電解質)です。硫酸銅の青色は銅イオン(正しくは銅の錯イオン[Cu(H2O)4]2+)に由来するもので,結晶中でも,溶液中でも同じ構造をしています。ただし,1年生の段階では粒子概念を学習し始めたところであり,イオンの概念を学習しておりませんので,銅イオンが拡散していることが,「硫酸銅の粒子が拡散している」という生徒の認識に影響を与えることはないと考えられます。
2学年
銅と酸素の化合,マグネシウムと酸素の化合の実験(教科書本冊2年p.174,175)で,酸化銅,酸化マグネシウムの質量が理論値に近い値になりません。よいデータを得るには,どのようにすればよいですか?
A.
<銅と酸素の化合>
この実験の銅粉は,できるだけ細かい目のもの(350メッシュくらい)を使用していただくのがよいです。また,銅粉表面に有機物が付着していたり,古いものではすでに表面が酸化されていたりします。ご使用前に6 mol/L(18%)くらいの塩酸で洗う処理を加えることで,実験の精度はかなり上がります。このほか,加熱時にかき混ぜる操作が入っていますので,かき混ぜ棒に付着してしまう銅粉にはご注意ください。
<マグネシウムと酸素の化合>
考えられる要因はいくつかあります。
(1)に関しては,目の細かいの金あみでふたをすることである程度解消できますが,同時に(2)の問題が浮上します。
(2)に関しては,実験後のステンレス皿を水で洗うときにアンモニア臭がすると,窒化マグネシウムが生成していたと考えられます。これを防ぐためには,最初から1~2回の加熱を経て,質量があまり変わらなくなり,煙も出なくなった後,次の加熱から金あみをはずして空気とよく接する状態で加熱すると,生成していた窒化マグネシウムは酸化マグネシウムまで反応が進みます。
(ご注意)この実験では,加熱時の煙が目に入ったり,煙を吸い込んだりしないように,また,後片づけの洗浄時にも水と反応してアルカリ性になりますので,必ず安全眼鏡を着用させるようご指導をお願いいたします。
3学年
うすい硫酸と亜鉛板,銅板からできる「ボルタの電池」(教科書本冊3年p.105図20)では,銅板からだけでなく亜鉛板からも泡(水素)が発生するのですが,どうしてですか?
A.
ボルタの電池は,亜鉛板(-極)と銅板(+極)をうすい硫酸(教科書本冊3年p.106「科学偉人伝」参照)に入れて電池にしたものです。
ボルタの電池においては,複数の化学反応が起こっていますが,代表的な反応として以下の2種類の反応が起こっています。
まず,1つ目は「電池の反応」です。
(-極)Zn → Zn2+ + 2e-
(+極)2H+ + 2e- → H2
この反応では,+極の銅板表面から水素が発生します。電極間に導線をつなぐと,この「電池の反応」で-極から+極に移動する電子によって,電流が発生します。
そして,2つ目は「金属と酸の反応」です。
(-極)Zn → Zn2+ + 2e-
2H+ + 2e- → H2
この反応では,亜鉛板とうすい硫酸の反応(教科書本冊3年p.122参照)により,-極の亜鉛板表面から水素が発生します。なお,この反応は電極間に導線をつないでいない状態でも起こっており,つないだ後も,水素の発生は,上記の「電池の反応」によって電流が発生することと直接的には関係していません。
このようにボルタ電池では,「電池の反応」と「酸と金属の反応」の2種類の反応が同時に起こり,+極の銅板表面と-極の亜鉛板表面の両方から水素の泡が発生する状態になります。
また,教科書本冊3年p.105「ためしてみよう」の実験のように,ボルタの電池の電流の強さは,溶液(塩酸)濃度の条件などにより変化します。ある程度以上溶液(塩酸)の濃度を高くすると,亜鉛板付近の水素イオンの濃度が高くなり,亜鉛板から放出された電子が-極で水素発生のために使われるため,+極に流れにくくなります。すなわち,「電池の反応」が抑制されて,電流の強さが低下してしまいます。そのため,電流が強くないからといって,溶液(塩酸)の濃度を上げて実験することはおすすめできません。2.5%~3%程度の溶液(塩酸)の濃度が最適な条件です。
なお,上記のようにボルタの電池は「電池の反応」と「酸と金属の反応」の2種類の反応が同時に起こり,実際にはその他の反応も関与する複雑な電池です。そのため,電池の原理を説明する一般的なモデルとして示すのは生徒の混乱を招くのではないかと考え,平成28年度用の教科書の本文ページでは,軽く扱う程度にとどめています。
中和の実験(教科書本冊3年p.125)で,指示薬としてBTB溶液ではなくフェノールフタレイン溶液を用いているのはなぜですか?
A.
BTB溶液は,BTBの化学構造が中性時は不安定で,中和点の前後で連続的に色が変化し続けてしまうため,中和点を見つけにくい試薬です。一方,フェノールフタレイン溶液は中和点付近において水溶液一滴で一気に色が消える鋭敏な試薬であり,滴下をやめるタイミングが判断しやすい試薬であるといえます。
例えば,教科書の実験のように,水酸化ナトリウム水溶液(強アルカリ)に塩酸(強酸)を加えていくと,中和点付近ではpH7を一気に飛び越えて酸性側に傾くため,BTB溶液では緑色を見ることなく一気に黄色まで進んでしまいがちです。また蒸発させる際に,その溶液に溶けていた二酸化炭素が先に蒸発してしまうことで,わずかながらアルカリ性に変化してしまい,残った結晶は青色に色づいてしまいます(フェノールフタレイン溶液は中和点で無色であり,二酸化炭素の蒸発により変色することはありません)。このような現象をBTB溶液の特徴とともに理解しながら,実験を進め中和を学習していくことは,中学生にとって難しいことであるといえます。
以上の理由で,指示薬にはフェノールフタレイン溶液を用いています。
中和の実験(教科書本冊3年p.125)で,水酸化ナトリウム水溶液に塩酸を加えているのはなぜですか?
A.
中和の実験において,こまごめピペットで水溶液を少しずつ滴下する操作は中学生にはやや難しく,アルカリ性の水溶液に酸性の水溶液を滴下するほうが,酸性の水溶液にアルカリ性の水溶液を滴下するよりも,アルカリ性の水溶液にふれる危険性がより少なく,安全であると考えられるからです。
また,この中和反応では,操作上中和点を通り過ぎてしまうことが多いです。塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えていく場合,水酸化ナトリウムが過剰になり,水を蒸発させると水酸化ナトリウムと塩化ナトリウムの混晶になる可能性があります。一方,水酸化ナトリウム水溶液に塩酸を加える場合は,塩酸が過剰になった状態でも,塩化水素として加熱によって蒸発するため,塩化ナトリウムの純粋な結晶が得られます。
以上の理由で,水酸化ナトリウム水溶液に塩酸を加える方法を採用しています。
1学年
圧力の単位に「ニュートン毎平方メートル」をおもに使っているのはなぜですか?
A.
教科書で使用する単位は,計量法で定められた国際単位系(SI)の単位を使うことになっています。計量法(平成4年法律第51号)では,圧力のSI単位にはパスカル(Pa)とニュートン毎平方メートル(N/m2)があります。
教科書ではこの2つの単位を紹介していますが,圧力の学習の直前に,力の大きさの単位はニュートン(N)であることを学習します。ふだんの生活ではなじみがうすいニュートンという単位に慣れさせるとともに,圧力は単位面積あたりの力の大きさであることがよくわかるニュートン毎平方メートルを圧力の単位としておもに使用しています。
2学年
オームの法則の実験(教科書本冊2年p.201)で結果をグラフに表すとき,横軸に電流,縦軸に電圧をとれば直線の傾きが電気抵抗を表すので,このほうがよいのではないですか?
A.
確かに数学的にはそのとおりですが,理科で実験結果をグラフに表すときには,横軸には変化させた量(実験者がコントロールした量)をとり,縦軸にはその結果変化した量をとるのが基本ですので,教科書では横軸に電圧,縦軸に電流をとっています。この場合,グラフの傾きが大きいほど電流が流れやすいということになり,グラフの傾きは電気伝導度を表すことになります。
いったんこのようなグラフを作成し,横軸と縦軸を入れ替えたグラフに変換させて,直線の傾きの意味を考えさせたうえで電気抵抗と関連づける指導法もあると思います。
3学年
教科書本冊3年p.192にある「図73 いろいろな発電方法」で,水力発電の水車・発電機や火力発電のタービン・発電機のところに「運動エネルギー」がないのはなぜですか?
A.
発電機は,水力発電の場合は水の力,火力発電や原子力発電の場合は水蒸気の力で,水車やタービンに直結している発電機を回転させ,その仕事によって電気を発生しています。このとき,水力発電における水の位置エネルギーや火力発電・原子力発電における蒸気の熱エネルギーが,いったん水車・発電機やタービン・発電機の運動エネルギーに変換されて,それが電気エネルギーに変わるわけではありません。例えば水力発電の場合,水車・発電機にぶつかる直前では,水の位置エネルギーの大部分は水の運動エネルギーに変わっているわけですが,この運動エネルギーが水車・発電機の運動エネルギーに転化してから電気エネルギーに変換されるということにはならないのです。
このことは,発電機のコイルの質量がきわめて小さく無視できる(その場合の運動エネルギーも無視できる)手回し発電機のように,外からの仕事によってコイルを回転させれば発電できることからもわかります。
3学年
「生産者」「消費者」「分解者」の定義が,以前の教科書と異なっていますが?
A.
文部科学省の検定意見により,平成24年度用の教科書から,「生産者」「消費者」「分解者」の定義が,以下のように変更になっております。
○平成23年度用までの教科書での定義
生産者:光合成を行う植物。
消費者:ほかの生物を食べて栄養分を得る動物。ただし,菌類・細菌類のような有機物を無機物にする最終分解者は除く。
分解者:有機物を無機物に分解する菌類や細菌類(最終分解者)。
●平成24年度用以降の教科書での定義
生産者:光合成によって自分で栄養分をつくる生物。つまり独立栄養を営む生物。五界説において原生生物界に属する緑藻類など植物ではない生物も含む。
消費者:ほかの生物から栄養分を得る生物。つまり従属栄養を営む生物。
分解者:消費者のなかで,生物の遺骸やふんなどから栄養分を得る生物。
それぞれ,生物の役割(はたらき)を示す言葉の定義に変更になっているため,例えば,アオカビは消費者であり,分解者でもあることになります。
アオミドロやクンショウモは藻類なのに,「植物性プランクトン」ではなく,「植物プランクトン」とされているのはなぜですか。
A.
教科書で使用します専門用語の表記は,原則として文部科学省(旧文部省)の『学術用語集』にしたがっています。
「学術用語集-植物学編-」では,「植物プランクトン」と記載されているため,このような表記としています。
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