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生活

「あきだいすき~関わる機会・対象の充実による深い学びの実現~」

1年 東京都大田区立羽田小学校 三森 望美

1. はじめに

私が生活科の授業で大切にしていることは,「関わる対象・機会の充実」「成長の自覚」「実生活から学びをスタートし,実生活に生かしていく」の3点である。
本実践は,1年生の秋に行った季節の遊びの単元である。また,本校は人権教育推進校として校内研究を行っている。そのため,友達や自分のよいところを授業の中でもたくさん共有し,それが成長につながったり,実生活に生きたりするということを体験として子供たちが自覚できるように手だてを工夫した。

2. 単元について

(1) 単元名

 「みんなであそぼう はる なつ あき ふゆ ~あきだいすき~」

(2) 単元目標

○身近な秋の自然に関心をもって関わり,季節の変化に気付くとともに,そこで見付けた自然や身の回りの物を利用して工夫し,友達と楽しく遊ぶことができる。

○遊びを通して,友達や身近な人と関わることのよさや楽しさに気付くことができる。

(3) 単元について

本単元は,「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 生活編」に定められる目標及び内容をもとに設定した。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 生活編
第3章 生活科の内容  第2節 生活科の内容  (P.38,P.46)

(5) 身近な自然を観察したり,季節や地域の行事に関わる活動を通して,四季の変化や季節によって生活の様子が変わることに気付き,自分たちの生活を工夫したり楽しくしたりできるようにする。

(8) 自分たちの生活や地域の出来事を身近な人々と伝え合う活動を通して,身近な人々と関わることの楽しさが分かり,すすんで交流することができるようにする。

(4) 単元の評価規準

ア 生活への関心・意欲・態度 イ 活動や体験についての思考・表現 ウ 身近な環境や自分についての気付き
  • ①秋という季節に興味をもち,進んで遊びを考えたり,遊んだりしている。
  • ②秋の自然や物を使って友達や身近な人とすすんで交流しようとしている。
  • ①秋の自然や物を使った遊びの方法やルールを考え,自分で工夫して遊んでいる。
  • ②友達や身近な人と関わりながら,自分なりに表現したり伝えたりしている。
  • ①秋になると自然の様子が変わり,遊びや生活も変わることに気付いている。
  • ②友達や身近な人と関わることで,新しい発見があったり,より楽しく遊ぶことができたりすることに気付いている。

3. 学びを深める手だて

(1) 事前アンケ―トの活用

単元開始前には,必ず児童にアンケート調査を実施し,手だてに生かしたり,単元の終わりに児童に返すことで成長を実感できるようにしたりしている。今回は,次のような内容で行った。

① あなたは,秋が好きですか。
好き:15人  普通:4人  嫌い:0人

② 秋といえば何を思い浮かべますか。
栗:5人 どんぐり:5人 松ぼっくり:3人 落ち葉:2人 紅葉:2人 ハロウィン:2人
焼き芋:1人 きのこ:1人 モンブラン:1人 柿:1人 (無回答6人)

アンケートの結果から,本学級の児童は,秋という季節について,多くの児童が興味をもっていることが分かった。しかし,秋に関係があるものをはっきりとイメージできていない児童や,秋の季節の遊びを十分に楽しんだことがない児童が多くいることも分かった。
児童の姿を他者との関わりという視点から見ると,1学期の学校探検の学習では,2年生と一緒に学校を巡った後に新たな疑問をもち,もう一度先生に聞きに行ったり,部屋に行って調べようとしたりする意欲的な姿が見られていた。また,認め合うという視点からは,友達の意見を一生懸命聞こうとする児童が多く,目を見て,体を向けて話を聞くことを意識している様子が見られていた。ただ,話の内容について聞くという点では,調べたことや気付いたことの発表で,友達の意見を受けて自分の考えを見直したり,友達の気付きと自分の気付きを関連付けたりすることにはまだ指導上の課題がある。

<実態を踏まえた教師の思い・手だて>

①目いっぱい秋の遊びに浸らせ,季節の変化や自然の不思議さ,自然物を使った遊びの楽しさに今まで以上に気付かせたい。

②他者(友達や身近な人)と関わる機会を多く取り入れ,よりたくさん自分の考えを伝えたり,自分にはなかった考えを聞いたりすることができるようにする。

(2) 単元計画作成上の工夫

関わる対象・機会を多く設定し,児童が遊びを楽しみながら,友達や身近な人々と積極的に関わることができるようにした。また,関わることでさらによいアイディアが生まれたり,より楽しく遊べたりすることを実感できるよう,リハーサルをして意見を交流するという活動を取り入れた。
秋に関しての具体的なイメージをもっていない児童が多いため,秋の自然と触れ合う場所を
①学校のポケットパーク(中庭)→②近所の公園(萩中公園)→③大田区内の公園(平和の森公園)
と順を追って設定し,全員の児童が無理なくスモールステップで気付きを深めていけるように工夫した。
工夫して作った遊びや得た学びを自分たちの中にとどめるだけでなく,今度は自分たちがあきまつりとして保育園児に伝えることで,世代を超えて発信できるようにした。

中庭で秋探し①

中庭で秋探し②

保育園児との交流①

保育園児との交流②

保育園児との交流③

保育園児との交流④

保育園児との交流⑤

(3) 毎時間の流れの統一

生活科の授業の流れを毎時間統一し,「今日の時間にやりたいこと(やること)→発見したこと(よかったところ・もっとこうしたらよいと思ったこと等)→次の時間にやりたいこと(やるべきこと)」というサイクルで,児童が見通しをもって活動できるようにした。

授業の導入(やりたいことの共有)

見通しをもつ・示す

班での話し合い①

班での話し合い②

ステップアップシートの記入

他の班のお店で交流

児童の記述内容

班での振り返り

全体での振り返り
(発見・アドバイス等)

(4)環境の設定

オープンスペースに「あき ひろば」を作り,秋に関する本や材料・作成途中の物等を置いて,児童の発想が豊かになるよう工夫した。また,学習の軌跡や単元のゴールイメージがもてるよう,写真等を常掲した。

あきひろば①(本・道具)

あきひろば②(作成物)

あきひろば③(作成物)

学習の軌跡①(ゴールイメージ等)

学習の軌跡②(学習方法の写真等)

4.実際の学習活動(全19時間)

ねらい ○主な学習活動・児童の反応 *留意点等 ◇評価
0
  • ・木の葉の色が変わったよ。
  • ・落ち葉がたくさん落ちていたよ。
  • ・公園でどんぐりを拾ったよ。
  • *単元が始まる前から,教室に児童が集めてきた木の実や葉等秋の物を置いたり,児童の興味を引くような掲示をしたりする。
  • *朝読書の際に,秋に関する物の本を読み聞かせたり,図鑑や資料等を置いたりすることで,自分が秋の物で遊ぶイメージや,秋の遊びについての強い思いや願いをもてるようにする。
1 草花や木の実等の身近な自然と関わり,季節の変化に気付き,秋の自然への興味・関心を高めることができる。
あきをさがしにいこう

○身の回りや通学路で見たり聞いたりした秋の兆しを出し合い,話し合う。ポケットパークで遊び,秋の物を探す。

  • ・ススキを見つけたよ。
  • ・葉っぱの色が変わったよ。
  • *秋探しの活動では,ポケットパークで草花や木の実に触れたり,木々の色の変化を見たりすることで,秋の自然や季節の変化を実感させるようにする。また,虫の音に耳を傾けたり,草花のにおいをかいだりする等諸感覚を使って実感できるようにする。
2

○秋を探しに公園へ行く計画を立てる。

  • ・どんぐりを入れる袋を持っていこう。
  • ・栗を入れるのはバケツがいいかな。
  • ◇秋という季節に興味をもち,進んで遊びを考えたり,遊んだりしている。
    <ア-①>(観察)
  • ◇秋の自然との関わり方や楽しみ方を考えている。
    <イ-①>(観察)
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秋の公園で自然と関わり,体全体で秋を実感することができる。
あきのあそびばにいこう①

○近くの公園で秋を探して遊ぶ。

  • ・この葉っぱの形はおもしろいな。
  • ・この木の実で何か作れそうだな。
  • *地域の身近な公園で様々な秋の物を見付けることで,季節の変化を実感するとともに,季節の変化は学校の外でも起こっていることに気付かせる。
  • ◇自然や人々のくらしの様子が変わったこと,それに合わせ変わったことに気付いている。
    <ウ-①>(観察)
5 見付けた秋を紹介したり,秋の物を使って遊びを考えたりすることができる。
あきとあそぼう

○見付けた秋について紹介し合い,したい遊びをする。

  • ・落ち葉をたくさん拾ったよ。
  • ・何か作れそうだな。
  • *身近な公園で見付けた自然をどんぐり・松ぼっくり・木の葉等のように分類したり,秋の物を使った遊びを友達と楽しんだりして気付いたことを発表し合い,教室内に掲示することで,秋の遊びについての思いや願いがさらに膨らんでいくようにする。
  • ◇見付けた秋を自分なりに表現したり,友達と伝え合ったりすることができる。
    <イ-②>(観察・ワークシート)
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秋の自然や身近な物の形や特徴を生かして遊ぶことができる。
あきのものでつくってあそぼう

○秋の自然や身近な物等を使って,飾りや遊ぶものを作って遊ぶ。

  • ・つまようじを使ってこまを作ろう。
  • ・作ったおもちゃで「あきまつり」をしたいな。
  • ・遠足で行ったような大きな公園に行きたいな。
  • *どんぐり・松ぼっくり・木の葉を使って,自分自身で遊ぶ物(どんぐりごま・楽器等)や遊び方を考えることで,児童一人一人が多様なことに気付き,工夫できるようにする。
  • ◇それぞれの自然物の特徴を生かして,遊びや遊びに使う物を工夫して作り,できたもので楽しく遊ぶことができる。
    <イ-①>(観察)
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秋の公園で自然と関わり,体全体で秋を実感することができる。
あきのあそびばにいこう②

○平和の森公園へ出かけ,自然と関わる遊びをする。

  • ・(萩中)公園にはなかった形のどんぐりがあるね。
  • ・顔より大きな落ち葉を見付けたよ。
  • *学校から少し離れた公園で様々な秋のものを見付けることで,季節の変化を実感するとともに,季節の変化は様々な場所で起こっていることに気付かせる。
  • ◇季節の変化と自分たちの生活の変化を感じながら,諸感覚を使って自然と関わることで,秋の季節の楽しさに気付いている。
    <ウ-①>(観察)
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したいことを見付け,身近な自然・物を使った遊びや遊び方を工夫することができる。
みんなであそぼう「あきまつり」

○「あきまつり」の計画を立てる。

  • ・どんぐりごま大会をしたいな。
  • ・空き箱でどんぐり迷路を作りたいな。

○秋の自然や身近な物等を使って,飾りや遊ぶ物を作って遊ぶ。

  • ・どんぐりごまコーナーを作ろう。
  • ・もっとカラフルな飾りを作りたいな。
  • ・もっと上手く転がる迷路を作りたいな。

○より楽しい「あきまつり」にするためにどんな工夫ができるかを考える。

  • ・看板を作って何の遊びか分かるようにしよう。
  • ・うまくいかなかったから,もっとこうしよう。
  • ・遊びのルールを説明する人を決めよう。
  • ・今日気付いたことをワークシートに書いておこう。
  • *「あき ひろば」等,必要な情報を集められる環境を整える事で,知りたいことができた時や困った時に,自分で解決できるようにする。工夫を重ねることができるようにする。
  • *少人数グループでの活動や,学級全体での活動の場を設定することで,友達と気付きを共有し,新たな気付きが生まれるようにする。
  • *活動や体験を振り返らせる際に,生活科ワークシートに記入させる。その際に,気付きの質が高まるように,自分の成長に関する記述・友達との関わりについての記述・新たな視点を与えるような記述を教師が意図的に取り上げ,全体で共有するようにする。
  • *見通しをもって活動を進めていくために,自分たちで立てた計画書を見て活動させる。
  • ◇秋の自然や物を使って友達や身近な人と進んで交流しようとする。
    <ア-②>(観察・ワークシート)
  • ◇よりよい遊びにするために工夫している。
    <イ-①>(観察・ワークシート)
  • ◇よかったことやもっとこうしたらよいと思ったことを考え,友達に伝えることができる。
    <イ-②>(観察・ワークシート)
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○作ったもので実際に遊んだり,よりよい遊びにするために工夫したりする。(リハーサルを含む)

  • ・どんぐりごまグループのこまがよく回った。
  • ・飾りが上手に作れたよ。
  • ・保育園児の子たちとも遊びたいな。
  • *活動や体験を振り返らせる際に,生活科ワークシートに記入させる。その際に,気付きの質が高まるように,自分の成長に関する記述・友達との関わりについての記述・新たな視点を与えるような記述を教師が意図的に取り上げ,全体で共有するようにする。
  • ◇よかったことやもっとこうしたらよいと思ったことを考え,友達に伝えることができる。
    <イ-②>(観察・ワークシート)
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秋の自然物等を使って,工夫しながら,友達や保育園児に等とその楽しさを共有することができる。

○「あきまつり」を開き,友達や保育園児等に秋の遊びの楽しさを伝え,一緒に楽しむ。

  • ・どんぐりのこまは,棒のところを持って勢いよく回すんだよ。
  • ・この魚は,全部落ち葉でつくったんだよ。
  • *年間を通じて交流している保育園児を「あきまつり」に招待し,一緒に遊ぶ。園児との交流を通して双方向性のある活動が展開できるようにする。
  • *「あきまつり」を通して,身近な人と交流することの楽しさに気付かせる。
  • ◇秋の自然や物を使って友達や身近な人と進んで交流しようとする。
    <ア-②>(観察・ワークシート)
  • ◇関わることの楽しさに気付いている。
    <ウ-②>(観察)
19 これまでの学習を振り返り,秋の自然の変化や遊び・人と関わること・自分や友達のよさに気付くことができる。

○「あきまつり」の活動を振り返り,次の活動への意欲をもつ。

  • ・秋は,いろいろなことができたね。
  • ・保育園の子も楽しめるようにできたよ。
  • ・秋の次も楽しみだな。
  • ・冬には何ができるかな。
  • *学習を通してたくさんの人とかかわったことで,よりよい活動ができたり,楽しめたりしたことに気付かせる。
  • ◇友達や身近な人等とこれからも進んで交流しようという意欲をもっている。
    <ウ-②>(観察・ワークシート)

6.成果と課題

(1)成果

(2)課題

落ち葉釣り

あきありがとう①

あきありがとう②

あきありがとう③

<参考>

調査対象児の変容の記録