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生活

生活科で養う「科学的な見方・考え方の基礎」とは
-自然の不思議さや面白さを実感する学習活動,学習環境,教師のかかわりを通して-

1年 千葉県小学校 教諭

1.はじめに

平成20年1月の中央教育審議会の答申において,「児童の好奇心を高め,科学的な見方・考え方の基礎を養うための指導の充実を図る必要があること」「(前略)自然事象に接する機会が乏しくなってきている状況を踏まえ,(中略)自然事象について体験的に学習することを重視すること」と生活科の課題について指摘された。

こうした課題を受けて,同答申の改善の基本方針では,「学びや教科の連続性の観点から,中学年以降の理科の学習を視野に入れて生活科の活動や体験を充実させること」が示された。そこで現場では,栽培・飼育活動,おもちゃを工夫して作る活動など,より充実,発展した授業作りが行われているところである。

本実践では,自然の不思議さや面白さを実感する学習活動,学習環境,教師のかかわりを充実させ授業から,「科学的な見方・考え方の基礎を養う生活科の在り方」を明らかにしたい。

2.小単元名

なつのつづきをたのしもう

3.小単元について

夏の遊びと聞いてまず思いつくのが水遊び。暑さをしのぐために全身を使って水と戯れる中で,子どもたちは季節を感じ自然に親しみ,自分たちの生活をより楽しむことができる。しかし,プールや海に出かけた児童は多いが,家庭で水遊びをした児童は少なく,住宅事情や地域環境などの変化により,誰もが簡単に遊べる夏の遊びが変わってきた実態が見えてきた。また,水遊びをしている児童でも,せいぜい市販の水でっぽうを使っての遊びにとどまっている。このことから,児童自らが季節を全身で感じ,生活をより楽しく豊かにするために身近にある物を使ったおもちゃを作って遊ぶことを目的として,水遊びとシャボン玉遊びを取り入れた本単元を設定した。本小単元は,あえて9月に計画し,残暑の厳しさと,そこに時折吹くさわやかな風,トンボやコオロギの発見により,季節が移行しつつあることにも気付くと考える。

本単元では,市販された物ではなく身近にあるボトルやカップなどを利用して遊ぶ楽しさ,遊ぶ物を手作りして自分だけの遊びを楽しむ喜びを味わわせたい。また,水・シャボン玉の自然の事象とともにかかわる太陽の日差し,何気なく逃げ込む日陰や心地のよい風,シャボン玉を運ぶ風などと一体になってかかわり,季節の遊びを思う存分に楽しむと同時に,そこにある自然の不思議さや面白さを心と体で感じ取ってもらいたい。

4.単元の目標

【 内容(5)季節の変化と生活 (6)自然や物を使った遊び 】

5.授業づくりの視点

授業づくりをする上で,下記の3つの視点を充分に機能させることで,科学的な見方・考え方の基礎を養うことができると考えた。

①学習活動 :

自然の不思議さや面白さを実感する活動や体験を通して,試行錯誤したり,競争したり比較,観察するなど,友達や教師とかかわったり自分自身を振り返ったりする学習活動。

②学習環境:

児童が体と心全体で自然の不思議さや面白さを実感できる,地域や学校の特性を生かした自然環境。活動が充実する場の選択と構成。主体的で創造性をかき立てる適質・適量な学習材。

③教師のかかわり:

児童の多様な姿を,共感的,受容的に見取って,声をかけたり働きかけたりするかかわり。児童を見取ったり助言したりする時の目線や立ち位置。

6.授業の実際

7.授業の考察

A児(1枚目)

A児(2枚目)

B児

B児 国語「たのしかったことをおもいだしてかこう」(生活と国語と合科)

C児

8.まとめ

「科学的な見方・考え方の基礎」は,一見理科の学習に見られる"疑問を持つ""予想する""数値化する"などと捉えがちである。しかし,生活科で養う「科学的な見方・考え方の基礎」とは,学習活動や学習環境の充実によって,心と体で感じる「諸感覚」,"興味・関心""意欲"などの「態度面」,児童が自然に対して"夢中になる""感動する""愛着を持つ"などの「情緒面」,そしてそこに教師が共感的,受容的に適切なかかわりを持つことにより"調べる""創意工夫""数値化"などの「知的好奇心や探求心」だと捉える。教師はこれらを「科学的な見方・考え方の基礎」だと捉え,児童の思いや願いを大切にしながらも,意図を持って学びを創って行かなくてはならない。

教師は,児童が目の前でしていることから学びを見い出し,活動だけでは見えにくい思考を見取るセンスが問われるのだと感じている。今後は,教師のかかわりをさらに充実させることを重点として,授業創りができるようにしなければならないと実感している。