本校は,学校行事や生活科の学習を通して,隣接する幼稚園との連携を続けている。本単元は,これまで行ってきた町探検などの訪問交流を発展させた互恵性のある交流の実践である。「互恵性」とは,児童と幼児の双方にメリットのある連携のことである。
指導にあたっては,まず,幼稚園教員との打ち合わせ時間を十分に取り,活動のねらいの確認及び児童・幼児の情報交換を行った。数回にわたる打ち合わせを通して,「幼児もいっしょに作業させて欲しい。」といった要望や,はさみを使用する技能面での実態について知ることができた。また,招待状を作成して幼稚園に届ける場を設定し,事前に児童・幼児がお互いに顔を覚え仲良くなる機会を作った。学級の児童の約半数が幼い子と接する経験がほとんどないという実態からも,おもちゃを一緒に作りそのおもちゃを使って遊ぶ活動が,児童・幼児双方にとって楽しく価値ある活動になるようにと考え実践した。
おもちゃひろば
身近にある物を使っておもちゃを工夫して作ったり,遊んだりする活動を通して,遊びの面白さや不思議さに気付き,遊びを楽しむとともに,幼児とのかかわりを通して自分の成長に気付くことができる。
幼児33名,児童23名ということで,1対1又は,1対2のペアを事前に作り,相手意識をもたせた。ペアを作ることで,互いに名前で呼び合い,親しみをもって活動できた。また,1週間前には,幼児の名前入りの招待状を図画工作の時間に作成し,幼稚園に持参した。一緒に集団ゲームを行った後,直接手渡したので,幼児・児童ともにおもちゃランドへの期待がふくらんだようであった。
1時間で,一緒に作って楽しく遊ぶことができるように「簡単に短時間で作ることができるおもちゃ」「遊び方が簡単で工夫できるおもちゃ」として,パッチンガエル・ブンブンごま・かさぶくろロケット・ころころ車・ヨットカーの5つを選んだ。ヨットカーのタイヤ部分だけは,ヨットカー担当の児童が前もってキリで穴を開けておいた。当日は,どれも7分程度で完成し,十分遊びに浸ることができた。
(1)
○ ねらい[2年生]
幼児におもちゃの作り方を教えたり,一緒に遊んだりする活動を通して,幼児と遊ぶ楽しさを知り,相手を思いやりながら接することができた自分のよさや自分の成長に気付くことができる。
○ ねらい[年長児]
身近にある物で2年生と一緒におもちゃを作ったり,楽しく遊んだりすることができる。
(2)展開
学習活動(T:教師の発問) ○支援 ◎評価 | |
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1 めあてを確認する。
いっしょにつくって,なかよくあそぼう。
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○幼稚園訪問の写真などを掲示したり,作ったおもちゃを置いたりして,活動への期待をもたせる。 |
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2 作るおもちゃの紹介をする。
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3 活動の約束を話し合う。 T:楽しく仲良く遊ぶためには,どんなことに気を付けるとよいでしょう。
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4 幼児におもちゃの作り方を教えたり,一緒に遊んだりする。
【ころころ車】
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【ヨットカー】
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○幼稚園の先生にも,活動に入ってもらい,声がけや安全面において共同で支援する。 |
【かさぶくろロケット】
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◎相手のことを考えながら,一緒に作ったり遊んだりすることができたか。 |
5 楽しかったこと,気付いたこと,感想を発表する。 |
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[年長児] |
○幼児から発表することで,その発表を聞いた児童が幼児とのかかわり方を振り返ったり,がんばった自分のよさに気付いたりできるようにする。 |
[2年生] |
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6 幼稚園の先生のお話を聞く。
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2学年児童と幼児が一緒に作って仲良く遊ぶという本実践は,有意義な活動であった。それは,お兄さんお姉さんぶりを発揮した児童の成長した姿を見ることができたからである。幼児がはさみで切る時,紙をそっとおさえている子,傍らで見守り「そうそう,上手上手。」とほめている子,また,わざと風力を弱めて幼児を勝たせてあげるヨットカーのメンバーなど,どの子も相手を思いやる気持ちであふれていた。幼児もまた,一緒に遊んでくれる人へ信頼を寄せ,授業の終わりには手をつなぎ,満足そうな笑顔を見せていた。
このように,児童・幼児双方にとって価値ある活動となったのは,なんといっても,幼稚園との綿密な打ち合わせの成果である。数回にわたる打ち合わせの中で,お互いのねらいをすり合わせたこと,おもちゃの種類の検討をしたこと,そして本時では,指導者同士が協力して活動に参画したことが,互恵性のある交流活動を生み出したといえる。