がっこうを たんけんしに いこう!
見通しを持たせる活動では,2年生による学校案内を学校探検の契機とした。2年生の生活科の学習の一環として,学校内の様々な施設を1年生に対して案内する活動であった。
1年生は,案内してもらう立場ではあるが,常に活動への見通しは持たせたい。そこで,次のような手立てをとった。
以上の4つの流れで,3時間の指導を行った。入学直後の児童は意見を書くことはできないが,視覚的に写真を見ることや,自分の思いを発言することはできる。写真を通して,自分が行く場所を知り,場所の特性を予想し,実際に行き,行った後に振り返りを行うといった一連の学習のなかで,見通しと振り返りの学習に取り組むことができた。そして,児童から出た意見を,教師がまとめることで,次時の学習へとつなげることができる。
また,中にはあふれる思いを,自分が書ける文字を使い,図1のように表そうとする児童も出てくる。国語の指導が始まる前の時期であるが,書きたいから書くという,児童の意欲が表れたものである。これもまた生活科だからこその良さである。
1回目の2年生との学校探検を通して,1年生の児童は,自分たちだけで学校内を回ってみたいという願いを持った。そこで,子どもたちに,(1)で使った写真を縮小し,シールにしたものを持たせることにした。そして,校舎内の白図も持たせ,貼らせていくこととした。児童は,自分たちで学校を回ることができるという学習上の楽しさと,シールを貼ることができるという活動上の楽しさを得て,学習への意欲は更に高まっていた。
その上で,生活科の学習に取り組んだわけであるが,児童はまずは自分の興味が優先で,グループでの移動であっても,個人の気持ちが優先する様子が見られた。
しかし,自分たちが行った教室の名前を確認する必要があることや,シールという条件があることで,自分だけではできない活動が増えてきた。個人作業から,必然的に友だちと協力して活動に取り組む必要が出てきたのである。このように,(児童の実態に応じてではあるが)学校探検にシールを貼るという作業を持ち込むことで,子どもたちは,個人から,集団への活動へとつながり,友だちと協力して学習することのよさを感じることができた。
また,この活動では,シールを紙に貼るという作業の都合上,グループによっては,特別教室を観察した後,教室に戻って作業をするという,1回1回往復しての活動をする様子も見られた(写真5)。一つの場所を見て,教室に戻り,また別の場所に行くというのは手間もかかるが,廊下の歩き方や,様々な掲示に気づくことができるといった別の意味での気付きも得ることができた。
この活動では,シールを貼ったワークシートを見ながら,部屋を見て気づいたことなどを「みつけたよこんなひみつ」の時間に発表させた。発表は教師が整理したものの,意見が出ると,児童は,それが本当かどうかを確かめてみたい気持ちになっていた。その「やってみたい」という気持ちを利用して,再度見学する活動を取り入れると,児童は更に主体的に,教室を見る観点を持って,学校探検に取り組むことができた。
「やってみたい」と思う気持ちが強い児童は,休み時間を利用して特別教室の前まで行ったり,特別教室を使う高学年に同行して,その特別教室に入ったりするなど様々に学校施設を見て回った。
入学直後の児童は,知らないことを知りたいといった思いや,もう一度やってみたいという気持ちが強い。だからこそ,知らないことを提示することで興味を喚起することができる。また,活動を工夫することが,繰り返し取り組むきっかけとなり,学校のそれぞれの教室等の特性を理解することにつながる。
学校探検の中では,様々な先生方との出会いもある。例えば,図書の先生などは,「本をたくさん借りに来てね」といった優しい言葉をかけてくれる(写真6)。その出会いも大切にしたい。「本を借りに行きましょう」といった担任の投げかけよりも,児童は,図書室の先生からの言葉がけをよく覚えている。それが,図2のような児童の作文につながっていく。
けして作文といえるものではないが,児童が綴った素直な思いを活用し,投げかけるなど児童自身の「やりたい」という思いに根ざした必然性のある活動にすることができる。児童の発言等を記録しておくとよりよい。
また,本実践の後の単元でお世話になる先生方と学校探検の中で意図的に出会わせた。つまり,先生方の得意分野を今後の児童の活動で必要な情報として獲得させるようにしたのである。
例えば,「アサガオ」を育てる学習に関連し,理科主任の先生からは,「アサガオ」の情報を児童に発信してもらい,教室内に担任がメモを取って掲示しておく。そうしたことで,活動の時には実際に種を頂いたり,お世話の方法を教えて頂いたりする活動につながった。また,栽培活動でお世話になる用務員の先生からは,「畑仕事などが得意」といった情報を児童に発信してもらい,同じように掲示しておいたことで,児童自らお願いをして,土や畑仕事のお手伝いをしてもらった。
これからの活動でお世話になる先生方は,指導者しか見通せない部分でもある。だからこそ,学校探検で出会い,取材をする最初の段階で,児童のこれからの活動で必要な情報を発信してもらうようお願いしておく。そしてそれを記録しておいて児童の目にふれるようにしておいたことで,児童が主体的に「あの先生が詳しい!」といった情報を持ち出し,活動につながりを持たせることができたのである。
このように,児童の言葉から活動につなげていくことや,先の単元の見通しを持って,意図的に様々な先生と出会わせることが,活動につながりを持たせるきっかけとなった。
本実践では,「学校探検」の単元において,いかに児童の意識をつなげていくのかということについて紹介をしてきた。児童は「やってみたい」という思いが強い分,そこに様々な手立てを取ることで,活動に継続して意欲的に取り組むことができる。それは1年生に限ったことではない。ちょっとした手立てや見通しを持った実践を積み重ねる中で,児童が生き生きと活動し,生活科が本来ねらいとする「自立への基礎」につなげていけたらと思う。