生活科の学習では,かかわりと体験,表現活動が重視されている。活動や体験を繰り返したり,他者とともに活動したりする中で,自分と対象との関わりが深まり,具体的な気付きが生まれる。そして,それを伝え合い受け止めることで,次の活動への必然性や連続性が生まれると考える。子どもたちが,知的好奇心をもってともに学び合うことができるような活動にしたいと考え実践した。
生活科の内容(6)「自然や物を使った遊び」を中心とした活動である。磁石,ゴム,摩擦,空気など身近にある物や現象を利用したおもちゃ作りが中心となるが,その発表や交流の場として,1年生を招待して行う「○○っ子フェスティバル」を設定した。
○ 身の回りにあるいろいろな材料を利用して,工夫しておもちゃを作ったり,作ったおもちゃの遊び方を工夫したりして,みんなで楽しく遊ぶことができる。
児童は,生活科の製作活動にとても意欲をもって取り組んできている。しかし,ともすると見栄えを重視した飾り立てる作品になってしまったり,少し作っては自己満足をして次の作品に手を出してしまったりする傾向が見られた。
そこで,「身近にある物を使って手作りのおもちゃを作る」「1年生が遊びやすく楽しめる物を作る」という2点をしっかりおさえることで,活動の軸がぶれないようにした。「より高く飛ぶもの」「より速く進むもの」といった科学的な探究の中に面白さや自然の不思議を感じ取るとともに,「1年生に喜んでもらいたい」という情緒的な側面が加わることで,「遊びやすく」「こわれにくく」「安全に」などの工夫の視点が生まれ,児童の活動が広がり充実した。
また,同じめあてをもった児童同士でグループを組んだが,おもちゃ作りはあくまで個人で行い,自分が作ったという達成感がもてるようにした。
作りながら遊び,遊びながら考え,試すことができるように,試行の繰り返しに十分な時間を確保した。
製作活動の途中に3回,友達同士で試し,気付きを伝え合うアドバイスタイムを設けた。1度目は同じグループ同士で,2度目,3度目は他のグループの友達の目で,「良い点」「もっと工夫したほうがいい点」を見つけ,伝え合った。
自分ではもう完成と思っていた作品に対し様々な感想が集まったことで,子どもたちの作品は次々と形を変えていった。また,友達の作品に対してアドバイスを与えることで,自分自身の作品に対する見方も変わってきた。
ゴムの力を利用したロケットを作ろうと考えたT児は,アイディアを元に詳しい計画書を作り,とても凝った仕掛けのロケットを作ろうとした。ロケット部分の細部装飾にこだわり,自分では満足したT児だったが,友達から「やり方がわかりづらい」「1年生にはやりにくい」という感想が出された。これらの意見を取り入れ,T児が考えたのは,持ちづらさを改善するために発射台をつけることだった。 また,引っ張りづらかったゴムに取っ手をつけ,「しかも力もあんまりいらなくなりました。」と振り返っている。「より高く」という科学的な考え方を進めるとともに「扱いやすい」「一年生が楽しめる」という視点が加わっている。
気付きを伝え共有するためには,付箋紙を利用した。貼ったりはがしたりすることが抵抗なくでき る上,アドバイスを受け取った側がその後の処理をする際にも,分類や整理がしやすい。各コーナーで実際に遊びを試しながら気付いたことを,めいめいが付箋紙に書いて貼り,それを整理して作品への評価やアドバイスを集約することができた。
この活動によって「良い点」「直す点」が明確になり,次時の活動への見通しをもつことができたことが,振り返りカードからもうかがえる。