この単元の学習では,豆電球とLEDをコンデンサーにつなぎ,ためた電気で光らせることで,ためた電気の量と光る時間の関係を捉える実験が行われる。このとき,豆電球の光る時間が短いのは電気が熱にも変換されるためである。
この実験による豆電球とLEDの比較では,回路に流れる電流が弱いものは長く働かせることができ優れているという省エネルギー的な見方や考え方がつくられる。これに加えて,本来のねらいは,電気をつくったり蓄えたり変換したりしながら電流の強さによる働きの違いを明確にすることではないかと考えた。本実践では,その様なエネルギーの生成と消費に対する見方や考え方を養うことをねらい,単元を構成した。
上記のねらいを達成するために,子どもの活動を想定して,以下の様な工夫をした。
○これにより並列で複数のものをつなぐことができる利点が生まれる。
○使用するモーターにもよるが,コンデンサーへの満充電で10メートル前後の走行が可能である。
○本実践では,ミニ四駆用のものと,光電池用のものの2種類のモーターを使用した。
【自然事象への関心・意欲・態度】
【科学的な思考・表現】
【観察・実験の技能】
【自然事象についての知識・理解】
手回し発電機を用いて様々なものに電気を流す活動では,子どもたちは以下の3つのことに注目した。
・回す速さ
・回す向き
・手応えの違い
回す速さと回す向きについては自分たちの働きかけを変えることで,モーターが速く回転したり逆回転したりした。しかし,手応えは,つなぐものを変えることで大きく違った。そこから子どもたちは「電気をたくさん使うものは手応えが重いのではないか。」と推論を生み出した。
手応えの重いものは電流が強いはずだという見通しをもって電流を計測する活動を行い,子どもたちは手回し発電機の手応えと電流の強さの関係を捉えていった。
単元の導入で見せた災害用ラジオの明かりがハンドルを回していない時も光る様子を想起させ,コンデンサーを提示し,子どもたちに調べてみたいことを問うと,電気をつくった経験から
・何秒ためれば何秒使えるか。
・使うものによって時間が変わるのか。
という2点にまとまった。
「豆電球なら何秒くらい使えそう?」と問うと,「ためる時間によって変わるはず。」という反応があった。ためた時間と使える時間に対する見通しをもたせるために,30秒ためたら何秒光ると思うかを予想させた。活動に入ろうとすると「回す速さによっても変わる。」と考えた児童がいたため,「ためる時間」と「回す速さ」を追究の柱として活動に入った。これにより,ハンドルを長時間回したり素早く回したりすることでコンデンサーに電気をたくさん蓄えることができるという見方や考え方をもつことができた。
電気をためる場面での子どもの工夫・・・回す速さを正確に揃える
回す速さを感覚的に変えても豆電球が光る時間には大きな違いが生まれていた。しかし,一つのグループがストップウォッチを見ながら正確に1秒間に3回のペースで回そうと工夫していた。この工夫を全体に広げ,ためた電気を揃えられる価値を全体で共有した。
豆電球以外のものはどれくらいの時間使えるかを調べた。手回し発電機を用いて電流を調べた経験から,強い電流の流れるものほど使える時間は短そうだという見通しをもって活動に取り組んだ。豆電球で実験した時と使える時間の比較をするため,子どもたちは1秒間に3回のペースで電気をためる方法でコンデンサーに電気をためていた。ブザーが30分以上鳴り続けたのは驚きだったようである。
冒頭で紹介したコンデンサーカーを提示し,子どもたちに何秒ためればどれくらい走るかという走行距離の見通しをもたせて活動を行った。電気をためる時間を変えることで走行距離が変わることが明らかになった。そこでミニ四駆用のものと光電池用の二種類のモーターを提示した。手回し発電機で手応えを確かめさせると,二種類のモーターで大きく異なったことから走る距離や速さに違いがありそうだと見通しをもっていた。
この活動のねらいは,
「モーターを変えて車を走らせる活動を通して,走る距離があまり変わらないことに気付き,電流の強さによってモーターの回転の速度と回る時間が変わるという見方や考え方をもつ。」と設定した。
コンデンサーカーを走らせる場面での子どもの工夫・・・走行距離を正確に比較する
子どもたちは走行距離の比較を正確に行いたいと願い,活動場所に1メートルごとにテープを貼り,実験の際の目安としていた。
当初はミニ四駆用モーターのスピードの速さに驚きを感じ,ためる時間を変えながら繰り返し走行距離を測定した。しかし,ソーラーモーターでも同じように実験をしていく中でゆっくりでも走り続ける様子に気付き,どちらも走行距離としては大きく差がないことを捉えていた。これにより,電流の強いものは働きが強い分消費が大きく,電流の弱いものは働きは弱いが消費は少ないという見方や考え方がつくられていった。
子どもたちが目標をもって活動に取り組むことで,定量的に電気をためたり,正確に距離を比較したりしようと目印をつくるという工夫を生み出すことができた。また,単元を通して回す速さとためる時間を正確に揃えていこうとする意識をもてたことにより,二種類のモーターの比較を高い精度で行うことができた。
一方で,モーターの性能の違いを電流の強さと結びつけるためには電流計は不可欠であった。モーターの電流を計測する活動では,教師の関わりが必要となってしまい,電流計を使いたいという子どもの様子が見られなかった。その点については,学習展開を再考する必要があると考えられる。また,二種類のモーターに対して充電量を変化させながら追究していく活動は,条件が多すぎて子どもがどこに焦点を当てて考えるかが定まりづらいという課題も明らかになった。この点についても,発達段階と追究の質をより緻密に計算し,再考したい。