本学級の児童は,素直で元気な子どもたちで,理科の観察や実験に意欲的に取り組め,集中して授業に臨むことができる。しかしその一方興味がある学習には進んで取り組めるが,あまり関心のないものには消極的な態度をとってしまったり,集中を欠いてしまったりする児童もいる。そこで児童の興味・関心を引き,自分なりに思考することができるように,観察・実験などの活動時間を多く設定した。身近な生活に沿った学習を意識させ,個人差に応じた指導や支援を行うことで,学習に見通しをもち自分なりに気づき,考え,表現することのできる児童を育成していきたい。
第5学年では「自然事象の変化や働きをそれらにかかわる条件に目を向けながら考える力」を「思考力」と考えることができる。また「表現力」を「問題解決の活動の推進力となる自然事象に対する意見や情報を,相互作用的にやりとりする力」と捉えると,自分の考えを論理的に説明したり,友だちの考えを自分の考えと比べて聞いたりする力,実験の結果をわかりやすく示し合う力,学びの成果をまとめて発信する力等が「表現力」であり,その育成に取り組む。
「思考力」と「表現力」は,密接な関係を保ちながら,相互的に高め合っていく。思考することによって表現したいという意欲が生まれたり,適切に表現することができるようになったりする。また表現することによって,さらに思考が深められるようにもなる。両者が相互に作用することによって,主体的な問題解決の活動が行われ,豊かに感じる心を培い,科学的な見方や考え方を養うことができると考える。
(1)教材と単元構成の工夫
子どもたちの日常生活における疑問や気づきがきっかけとなって学習が始まるように,学校のビオトープや地域の用水などでの観察や,いままでの経験を話し合った。そこから子どもたちの気づきや疑問を取り上げ,学習問題として設定した。
(2)話し合いの場の設定とその支援
互いの考えやその根拠となる情報を示し,話し合う場の設定と,その支援について以下のようなことを行った。
①「見通しをもつ場面」
単元や学習の最初に疑問を挙げ,それを予想 → 観察・実験 → 結果 → わかったことの流れに沿って学習を進め,見通しをもたせた。自分の身の回りの自然事象から,自分で予想させ,観察・実験を行い,結果やわかったことを自分なりに思考しまとめる。そこで意味を解釈し適切な方法で表現することや,友だちに意味を解釈してもらうために自分が提示する情報の表現方法を工夫することにより,表現力が育成される。
②「結果を考察する場面」
子どもたちや各班から出された観察や実験の結果を基に,「これらからわかったことは何か」を話し合う場を設定することで,子どもたちの思考力を育む。それをもとに結果からわかったことを導き出し,思考を伴った学習を進める。予想をワークに書かせ,班の中で意見をまとめたり,自分なりの意見を話し合ったりする時間をとり,観察・実験の終わった後,結果についても班で話し合いクラス全体へ自分たちなりの表現で発表する流れをとった。また,観察した水中の小さな生き物をイラストに書いたり,デジタルカメラで撮影したりして,発表の際に友だちに見せ説明しやすくする工夫も行った。
自分の身近な生活に沿った課題を意識させることができるように,観察や実験を多く取り入れた。例えば,教室にプランクトンを発生させた水槽を,子どもたちの目につくように置き「何か小さな生き物がおるよ。」と子どもたちが見つけられるようにしたり,学校の近くの用水やビオトープにプランクトンの採取に出かけたりした。そうすることにより,子どもたちは興味・関心が湧き出し,見通しをもちながらよく考えるようになった。自分が予想したことや発見したことを,自分の言葉で表現しようとしたり,友だちにわかりやすく伝えることができるように,イラストやデジタルカメラを活用しようとしたりした。そこで多くの意見を通して自分の意見と比べたり友だちの意見を取り入れたりすることができるようになってきた。
今回の学習を通じて,子どもたちは学習の流れを身につけることによって,気づき,考え,表現する機会を多くとることができた。自分で予想,観察・実験をすることから,発見したことをよく考え,どのようにして友だちに伝えるか工夫をすることができた。支援としてテレビモニターやデジタルカメラを活用することにより,自分の言葉はもちろん,描いたイラストを使ってわかりやすく表現しようとする態度が見られた。また,ワークに自分の考えを書く際に,どうしてそう思ったのか理由を自分なりに表現できるようになりつつある。今後も子どもたちのより確かな思考力や表現力の定着を図ることができるような授業を構成し,子どもたちの力を伸ばしていけるようにしたい。