本学級は,男子13名女子9名,計22名で理科が好きな子が多く,どの単元でも興味関心をもって学習に取り組んできた。アンケートでは,ほとんどの児童が「理科が好きだ」と答えている。しかし,実験には意欲的だが,多様な実験をしても自分なりに考えをまとめたり,伝え合ったりすることは,あまり得意でない傾向があった。
本単元「もののあたたまり方」は,熱の伝わり方が目に見えないので,子ども自らが問題を見つけにくい,変化が急激な実験では観察の結果を見逃しやすい,自分がイメージする熱の伝わり方を友達に伝えるのが難しいという特徴をもっている。さらに,固体・液体・気体によって熱の伝わり方がちがう。
本単元では,各グループが同じ実験をすることで,同じ視点で考えを伝え合い,思考を深める活動を促すことができるのではないかと考えた。そして,この単元の指導に当たっては,次のような4つの工夫をすることで研究主題に迫れるのではないかと考えた。
予想の過程における伝え合いのための支援として(1)と(2)と(4),考察し,結論を導き出す過程における伝え合いのための支援として(3)と(4)を位置づけた。
(1)出会いの工夫
単元導入にあたっては,子どもにとって身近なクレープ作りを行い,素朴な気づきや疑問をもとに課題を設定しようと試みた。変化の様子を集中して見るために,デジタルカメラを使うことにした。
(2)ワークシートの工夫
予想と結果を並べて表現し,ちがいを比べることができるようにした。伝わり具合がよくわかるようにマトリクスを入れた。実験では,班で相談してどこをあたためるか決めさせた。あたためる所に×印をつけさせ,そこから矢印で熱の伝わり方を予想させた。
(3)自分なりの表現の工夫
熱の伝わり方は言葉だけの表現では難しいと考え,ワークシートに描かれたイメージ図を手がかりにして発表できるようにしたいと考えた。そこで,ワークシートを実物提示装置でテレビに映し,視覚的にとらえられるようにした。自分の描いたイメージ図をもとに発表し,それをもとに子ども同士が考えを伝え合い「知を更新する」ことができるのではないかと考えた。
(4)教材・教具活用の工夫
(ア)デジタルカメラ
金属の熱の伝わり方は速く,結果を見過ごしてしまう子どもがいるかもしれないと考えた。そこで,集中して観察し,後で実験結果を確認できるようにデジタルカメラの活用を考えた。
(イ)示温テープ・サーモインク
金属の棒にろうを均一に塗ることは難しい。そこで,児童に示温テープがあることを知らせ,それを貼り付けることで金属の棒のあたたまり方が分かることを教えた。ビーカーの水のあたたまり方についても,教師がサーモインクがあることを提示した。
(1)出会いの工夫
クレープは実験用ガスコンロでフライパンの中央を熱して焼いた。「どこから焼けるか見ときよ。」「よくわかる写真を撮ろう。」という教師の指示に対し,「1枚目は真ん中から固まったのに,2枚目ははしから固まったよ。」「2枚目は,フライパンがあたたまっていたからはしから固まったんだ!」という子どもの発言があった。大型テレビでデジカメの写真を見せることで,クレープの固まり方の違いから,子どもたちに,金属の板は熱が広がるのではないか,どのように熱は広がるのだろうという興味や疑問が湧いてきた。
(2)ワークシートの工夫
子どもたちは,クレープを焼く体験から,金属の板の熱の伝わり方を予想することができた。金属の板に描いた5×5のマトリクスはあたためる所やあたたまり方を意識づけることができた。その結果,予想では矢印の数が少なかった子どもも実験をすることで矢印の数が増えていた。これは,熱が面として伝わっているのを表していると考えられる。また,予想では矢印の長さが短かった子どもも,実験後は矢印がはしまでかけていた。熱が金属の板全体に伝わっていることが,とらえられていた。
(3)自分なりの表現の工夫
ワークシートに描かれたイメージ図を実物提示装置で映し出し,それをもとに自分の考えを発表した。「はしをあたためたときは,反対のはしまでいったよ。」「真ん中をあたためたら円く広がっていきました。」「あたためたところから順番に溶けていったんだ。」友達の実験結果と自分の実験結果を比較したり受け入れたりすることで,熱の伝わり方についての素朴な概念がより客観的な概念になっていった。
(4)教材・教具活用の工夫
(ア)デジタルカメラ
子ども達はデジタルカメラで記録することによって,いつ撮ればよいかと緊張感をもって観察をするようになった。また,後で結果を視覚で確認することができた。
(イ)示温テープ・サーモインク
熱の伝わる順序を視覚的にとらえることができ,学習材として非常に有効であった。子どもたちは興味をもって実験に取り組み,変化を見届けようと集中して観察することができた。
子ども自らが「知を更新する」学びを目指して研究に取り組んできた。4つの工夫をすることで自分なりの考えをまとめたり,伝え合ったりする活動の充実が図られた。今後も思考力・表現力をより一層のばしていけるよう研究を重ねたい。