教科書を見ると「ストローにエナメル線を巻いて,ストローに釘を入れましょう。」と電磁石作りから入っている。そして,電磁石の巻き数や電流の強さを変えて,電磁石の強さを調べる活動が中心となっている。児童は電磁石の仕組みもわからずに,単元を終えていく。ここでこの単元の問題になっていることは2点ある。
そこで,子どものわかり方に着目して,実験結果とその原因の関係付けをしながら,電磁石の仕組みを理解するための単元の流れを見直していきたい。また,この単元で使われている教材にも着目したい。
3年「じしゃくのふしぎをさぐろう」→4年「電気のはたらき」→5年「電磁石のはたらき」→6年「発電と電気の利用」と磁石の単元はつながっている。ただ,系統的に関係しているというと簡単なことであるが,どこがどのようにつながっているかが重要である。
まず,3年「じしゃくのふしぎをさぐろう」で捉えさせたいことは「磁石に直接ついていなくても,鉄を磁化できる」ということである。つまり,児童の言葉で言えば,「磁石のレーダーの中に入れば,針は磁石になる」ということである。
次に,5年「電磁石のはたらき」で捉えさせたいことは電磁石の仕組みである「コイルに電流を流すと強い磁場ができ,この中に鉄を入れると磁化されて鉄が磁石になる」ということである。
そして,6年「発電と電気の利用」で捉えさせたいことは発電の仕組みである「磁石の磁力とコイルを作用させること(コイルの中に磁石を動かしながら通すこと)で電流が流れる」ということである。つまり,電磁石の仕組みと反対のことをすれば電気が作れることである。
この3つの単元がそれぞれ系統的に知識としてつながっていることによって,「電磁石の仕組み」や「発電の仕組み」の理解につながっていくのである。
電磁石の仕組みを捉えるためには,「電流が流れると磁力が発生すること」との出会いをじっくり時間かけていくことが重要である。児童にとって電気から磁気が生まれることを理解することはそんな簡単なものではないからである。そして,コイルに巻くことによって1本に生まれた磁力が強い磁場をもつことの理解につながるからである。
時数 | 学習内容 | 気付かせたい,捉えさせたい事実 |
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1 | 1本の導線の周囲に生じる不思議な力(磁力)を方位磁針で調べる |
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4 | 1本の導線の周囲に生じる不思議な力(磁力)を調べよう。永久磁石との比較 |
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2 | 導線に発生した磁力を強くして鉄を磁化させる
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1 | コイルのどこに鉄を近づけるとよく磁化するのか調べる |
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1 | コイルに発生した磁力を調べる |
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1 | 電磁石の性質を調べる |
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4 | 電磁石の強さについて調べる 【比較実験・条件制御】 |
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1 | 電磁石の性質を用いたおもちゃの動く仕組みを考える |
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2 | 動きの大きなおもちゃに改良する |
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電流が流れると光や熱に変わることは諸感覚を通して捉えられる。しかし,磁気は諸感覚では捉えることができない。それだけ,児童にとって磁気に気付くということはそんな簡単なものではない。導入として,エナメル線に乾電池をつなげて,児童に提示し,理科室にあるものなら何でも使っていいから,エナメル線に起きていることを調べさせた。児童は永久磁石,温度計,方位磁針,クリップ,鉄粉,釘などを使って調べる。
児童は電流を流すとエナメル線の周りに不思議な力が出ていることに気付く。しかし,「磁石の力(磁力)だと思うけど,よくわからない。」という児童も多く見られた。
クリップを使用して鉄を磁化することができるか調べた。しかし,エナメル線に近づけても,つけても,クリップを磁化することができなかった。(1つの班では,すでに学習していたのか,すぐにクリップにエナメル線を巻き付け,鉄粉がつくことを確認していた。)児童は「きっと不思議な力は磁力が弱い。磁力を強くすれば鉄を磁化することができるのでは。」と考えた。そこで,不思議な力を強くする方法を考えた。
エナメル線のどこにでも不思議な力が出ていたのだから,上手く集めれば強くなるはずだと考えた児童は,様々な形を考え始めた。その中で,3種類の形の考えが出た。「①1つの塊にする②折りたたんで束にする③同じ方向に巻く」である。
結果③にクリップを近づけたときによく磁化していた。また,①の間に入れたときに少し磁化していた。①が少し磁化したのはどうしてか考えさせると③との共通点に気付く児童が出てきた。それは,同じ方向に巻いている部分があるということである。きっと,エナメル線を塊にしたときに同じ方向に巻いている部分があったのではないかという考えからである。しかし,③を試していた班でなかなかクリップが磁化しなかった班があった。同じ方向に巻いたコイルでも,場所によって磁化しやすい場所があるのではないかと考え始めた。
前時からの流れでコイルのどこに鉄を近づけると鉄はよく磁化するのか調べることとなった。児童から出てきた予想は以下の5つである。
結果より,AとCがよく鉄の棒にマグチップがついた。共通点から「コイルの内側に鉄の棒を入れれば鉄はよく磁化する」ことがわかった。そして,なぜコイルの内側に入れるとよく磁化したのか班ごとに考察させた。Aについては,周りに出た磁力が中心に集まりやすいのではないかと考えた。また,前時コイルの磁力線を観察し,コイルの内側は鉄粉が立っていた。だから,コイルの内側は磁力が強いのではないかと考えた児童は,磁力の強いところに鉄を入れたから,鉄はよく磁化したと考えた。そして,「鉄がよく磁化したのは,鉄をコイルに直接付けたからではなく,コイルから出る磁力が強いところ,磁力が集まりやすいところに鉄を入れたからである」と児童は捉えていった。
しかし,コイルの内側の磁力が強いということは児童の捉えとして弱いことに気が付いた。そこで,次時にコイルの内側の磁力が強いなら,永久磁石のように極ができているのではないかと児童との話し合いの中で投げかけた。
コイルの直径と太さ,マグチップがつく量
電磁石の仕組みに気が付くためにはコイルの直径とエナメル線の太さが重要である。この時間に気が付いてほしい事実は「エナメル線に直接触れていなくても,コイルの内側に鉄を入れれば,鉄はよく磁化する」ということである。そのためには,コイルの直径は小さすぎるとエナメル線に鉄が触れなくても磁化することに気が付きにくい。また,エナメル線の太さは細すぎると鉄が磁化しているのかマグチップのつく量で比較しにくい。(資料7 コイルの太さ0.4mm,コイルの直径4cm)そこで,ベストのコイル直径とエナメル線の太さはコイルの直径は4cm,コイルの太さは0.6mm(資料1 コイルの太さ0.6mm,コイルの直径4cm)がよいだろう。