6年生の最初の単元である「1.ものが燃えるとき(わくわく理科6年)」には,さまざまな実験が用意されている。そのため,子どもたちの興味・関心はとても高い。その単元において,「ものが燃え続けるには空気の入れかえが必要」であることを理解するための実験を行った後に,その理解を深めるために次のような課題実験を行った。それは,ある現象をより深く理解するには,既習事項を活用して,学習を進めていくことが大切だと考えているからである。
教科書の実験によって,ものが燃え続けるためには空気の入れかえが必要なことを学習する。右の図は,わくわく理科6(10ページ)のものである。底なし集気びん,粘土,ろうそく,および線香を用いて,4つの条件でものの燃え方と空気の流れを確かめた結果である。これによって,子どもたちは,『ものが燃え続けるには空気が入れかわる必要』がありそうなことに気づいていき,そのことを理解していく。
この実験の活動では,次の課題実験につなげるために,子どもたちに自分の考えや疑問をたくさん交流させた。また,今日の授業でわかったことを友達に説明させ,ここまでの内容を全員が理解できるように授業を進めた。その後,この既習事項を課題実験の中で活用させ,理解のさらなる定着を図った。
まず,隙間ができないようにたてた細口の長いびんの中では,ろうそくの火が燃え続けないことを確認した。そして,火が消えた理由を一人ひとりに考えさせた。ほとんどの子どもたちが,このびんの特徴を広口の集気びんと比較して考えることができ,火が消えた理由を次のように答えた。
『あたたかい空気が上にいくだけの穴しかないから,新しい空気はおし出されて火が消える。』
『集気びんの口は広くて,温かい空気はこみあわないけど,長いビンは口がせまいので,温かい空気がこみあう。』
課題実験で用いるびんは,広口の集気びんと比べて口が細くなっているため,あたためられて古くなった空気と新しい空気が,入口のところでぶつかり合う。そのため,空気の入れかえができずに,ろうそくの火は消えてしまう。ここまでを子どもたちが理解したところで,ろうそくの火を灯し続けるためには,どのような空気の流れがあればよいのかを一人ひとりに考えさせ,そのイメージ図を描かせた。その後,班での交流・全体での交流を通して,空気の流れについて共通の認識をもたせた。このような交流によって,空気の流れのイメージは3つに分けられ,その中の2つは,アルミニウム箔をうまく利用すれば作り出せる空気の流れになっていた。
この後,イメージした空気の流れを作るためのアルミニウム箔を配布し,ろうそくの火を灯し続ける,すなわち空気の流れを作りだす方法を考えさせた。ここまで学習を進めても,最初はびんの入り口に注目することができず,アルミニウム箔をびんに巻く班があった。しかし,試行錯誤を重ねる中で,口の部分やろうそくの部分に注目しだし,火を灯し続けるために,どの子どもたちも夢中で活動していた。そして,入口をアルミニウム箔で左右に仕切ることによって,一方からはあたためられた空気が,もう一方からは新しい空気が流れ込み(左側と右側に一方通行の空気の流れができ,空気の入れかえができるようになる),このびんの中でろうそくの火を灯し続ける班がでてきた。45分の授業の中で,この実験を成功させることができたのは,9班中5班だったが,時間を延ばすことができれば,すべての班で成功させることができ,子どもたちの笑顔を見ることができるだろう。
ただ,びんとアルミニウム箔がぴったりとついていないと,あたためられた空気がその隙間から出ようとするので,新鮮な空気が流れ込むことができない。粘土をうまく使ってアルミを固定する班もでてきたが,最初から説明ができないので,子どもたちに気づいてもらうしかなかった。さらに,事前に注意をしていても,夢中でやっていると,熱せられたびんに触れることやアルミニウム箔を燃やしてしまうということがあった。そのため,夢中になっている時こそ,やけどをさせない注意が必要である。
この授業では,細口の長いびんの中でろうそくの火を灯し続けるために,児童は夢中になってアルミニウム箔の利用法を考えていた。既習事項を活用できる実験になっているため,難しい課題にもかかわらず積極的な活動が見られ,成功させたときの笑顔はとても印象的だった。また,実験の最後には,どうしてろうそくの火を灯し続けることができたのか,友達に自分の言葉で説明させると,理解の定着とともに,言語活動を取り入れることもできる。このように,既習事項を活用できるように実験を組み立てることによって,理解のさらなる定着が図れると考えている。
(参考文献)