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理科

衛星データを授業で積極的に活用しよう!(その2)

6年
日本宇宙少年団 呉やまと分団副分団長
呉市大和ミュージアム学芸課嘱託
元呉市公立小学校教員

4.授業で衛星データを使うための用意

(1)衛星データの持ち味

地球観測衛星による衛星データ(地球観測データ)とは,人工衛星などに搭載された「センサ(観測機器)」で,地球を「リモートセンシング(電磁波などを使って離れたところから探査)」することである。

衛星データの特色は次の点にあるとまとめられる。

地球観測衛星による観測データを活用して,児童・生徒が,宇宙から見た郷土や世界の,時間的な移り変わり,人の目では見えていない様子を,児童・生徒の興味・関心を出発点に自らみてもらうことにより,児童・生徒の日常の視点をはるかに高い宇宙に移し,児童・生徒の「意識」や「考え」の幅を広げ深め,宇宙の視点でものごとをとらえ考え感じることができる心,児童・生徒が日常の生活の中で宇宙を感じ宇宙を意識できるような心を育むことが可能となろう。

また,地球観測衛星の観測データは,実際の社会で地球規模や地域規模の環境保全や防災などの面で,日常的に役立っている。児童・生徒には衛星データとかかわる学習を通して,地球や人とのつながりを感じながら,社会貢献や,問題解決への意識と意欲が高まることを期待できる。

これらの効果を高めるためには,可能であるなら年齢に応じた工作活動等をとおして人工衛星の観測手法の基礎である光の概念をある程度知っておくことによって,衛星データ活用の教育効果が高まるであろう。(前回紹介した「簡易分光器」「色合成器」などは学習指導要領との関わりを深く考慮する必要があるが,導入時の指導者説明(演示)の一環に加えるなど総合的な学習の時間での題材に工夫するなどの活用も考えられる)

(2)ランドサット衛星データ活用の前に

ランドサットに関わる事業は,NASAとアメリカ地質調査所によって共同で管理されている一連の地球観測事業である。1972年以降,ランドサット衛星は,継続的に地球についての情報を収集している。ランドサット衛星は40年以上の間地球の大陸と周囲の沿岸の地方を撮影している。そして,地球の多く地域を調査して,自然と人間との関わりに関する動的な変化を観測することができている。

ランドサットに関する多くの情報はJAXAのウェブサイトから容易に確認できる。

http://www.eorc.jaxa.jp/hatoyama/satellite/satdata/landsat_j.html
http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/landsat.html

ランドサット衛星データは,現在無料で使用できるデータが豊富にあるということが極めて重要である。幾つかの衛星データについてはサンプルデータの提供等もあるが,ある程度積極的にデータを自由に利用できる唯一のデータである。現時点では。

任意の時間と場所のデータというわけではないが,無料でネット環境があれば,ランドサットのデータをある程度容易に求めることができることの意義は極めて大きい。

ランドサット衛星は現時点まで7回発射されている。

ランドサットの画像

前回冒頭で紹介した桜島の画像は,ランドサット5号のデータである。解像度が高度約700㎞から撮影し約30メートルもある。

ところで,ランドサット等の地球観測衛星は,私どもが通常使用しているデジタルカメラのようなものを衛星が搭載して撮影しているのではない。分光して幾つかのバンドに分けて撮影している。搭載している地球観測センサは,観測しようとしている波長(地表の反射・放射の特性を見極め,土・水・植物等衛星の観測目的に応じて決めている)に特色をもっている。衛星によって対応するバンドの詳細も異なっている。

* JAXAの小中学生向けサイトに,指導時に有用な説明が掲載されている。
「地球観測って何」というコーナーがある。
https://www.eorc.jaxa.jp/kids/observation/

すなわち,観測したバンドを,分析ソフト「EISEI」で合成するのである。

啓林館の高等学校生物の教科書には次の様な説明もある。

脳で合成しているのだから,個人差も当然ある。

啓林館「高校生物Ⅰ改訂版」での説明

(3)衛星データ分析ソフト「EISEI」(えいせい)のダウンロード

まだの方は,次のサイトからダウンロードしよう。
http://EISEI-data.jp/


現在このサイトは,3月末までは開設の予定である。(未定)

コンテストの<「概要」「応募方法」などなど,くわしくはこちら>をクリックすると,コンテストの流れを示している。このサイトでエントリーを登録すると,「EISEI」を入手することができる。(コンテストへの応募は義務づけていない。)

衛生データを使った体験学習プログラム

ダウンロードページに示しているように「Windows XP 」の場合,「EISEI」をご使用する場合,「.NET Framework 2.0(または3.0,3.5)」を別途インストールする必要がある。
(当該「EISEI」ダウンロードページ参照)

(4)使用する衛星データのダウンロード

衛星データを授業で積極的に活用しよう!(その1)」では,1990年4月14日にランドサットが撮影した画像を示した。この画像をどのようにしたら教室で利用できるか具体的に紹介しよう。

ランドサットデータのダウンロードの方法は2つある。

(上記 http://EISEI-data.jp/ にも「EISEI」の取り扱い説明書とともに,データ入手方法を示している。本稿では,その補足説明を中心にする。基本的な使用方法については重複を避けている。)

ア メリーランド大学のサイトを利用する場合

メリーランド大学のサイトは,多様な方法で衛星データを入手することが出来る。

ここでは,緯度経度情報を用いて,衛星データを入手する方法を記述する。

サイトを利用する前に,入手したい場所の中心点の緯度経由を予め調べておくとよい。

グーグルのサイトで地図を表示する。調べたい場所にカーソルを合わせ,右クリックをし,位置情報を求めると左図の様に表示される。

国土地理院のウェブサイトからも,容易に位置情報を求めることが出来る。(http://watchizu.gsi.go.jp/

イ 衛星の位置情報を手がかりにする場合

上記メリーランド大学のサイトは,とても便利なものであるが,時折利用できない場合がある。その場合に利用できる他のサイトを利用したい。(このサイトも無料である)

上記メリーランド大学のサイトの説明で,「P/R」(p/r)という説明をしている。

この「p」「r」(Path/Row)はランドサットなどの極軌道衛星で取得されるデータの1シーンの位置を特定するための呼称である。通常,東から西へ並ぶ縦の線をパス,北から南へ並ぶ横の線をロウという。

次のサイトで,「Path/Row」を調べることができる。
http://landsat.gsfc.nasa.gov/about/wrs2.gif

日本周辺を拡大すると次の様になる。

この図で,桜島の位置は,p112r38と判明する。
ftp://ftp.glcf.umd.edu/glcf/Landsat/WRS2/pXXX/rXXX/

pXXX → p112
rXXX → r038

ウ 「EISEI]で分析できるランドサットデータ

既述のようにランドサット衛星は1号~7号までの画像データがあり,それぞれの衛星によりファイル名が異なっている。その例を下記に示す。

ランドサット衛生のファイル名

「EISEI]は入手出来るランドサットデータを全て分析できる訳ではない。
対応できないデータもある。

「p112r38」のランドサットデータは次のデータがダウンロード出来る。

ところが,「SR」が付いているデータは通常の衛星画像と中身や形式が異なるため,現在の「EISEI」では開けない。

表記に「SR」を含んでいるデータは地上反射率(Surface reflectance)というデータで,画像の値が小数点になっている。その他のデータは画像の値が整数である。このようなデータの形式の違いがあるため「EISEIは対応できない

末尾がGLS××××のデータの使用を推奨したい。

(EarthSat-Orthorectifiedと表記されているデータは,同じ観測日のものが, 「GLS」にもあるので,それを使うようことをすすめたい。)

時間はかかるが,1つずつのデータをダウンロードすることを必ず守らねばならない。

5つのデータは,「gz」が附記されているように,圧縮データであり,必ず「解凍」しなければいけない。

エ 重ねての留意事項

5.「EISEI」を使用したランドサットデータの分析の具体

既述のように,「EISEI」の取扱説明書も次のサイトで入手出来る。
http://EISEI-data.jp/

取扱説明書にそってランドサットデータを使用できるが,そのポイントを紹介しよう。

最後に,幾つかの画像の特色を表示している。

6.衛星データ活用の展望

紙面の都合でフォルスカラー・トゥルーカラー・ナチュラルカラー・輝度温度のみ具体的な操作を補足的に説明した。「EISEI」では,植生指数とレベルスライスという機能も既に持っている。

衛星データ活用研究は,学校教育においても「理科」に留まらず,各教科・領域と横断的な脈絡を持っている。本研究は,多くの方々と今後の展開を協働したいと願っている。

付記