今年度より評価の観点が3観点となった。観点の1つである「主体的に学習に取り組む態度」という観点は評価が難しいと日々感じている。「指導と評価の一体化」と言われるように,評価を行うためには,児童が主体的に学ぼうと思う指導を教師が行わなければならない。そのためには,単元のどの段階で,または1時間の授業の中でどのように,児童が主体的に「取り組みたい」と考える活動を入れられるかが,重要である。では,児童が実際に「やってみたい」「試してみたい」といった感情をもつためにはどのようにしたらよいか。様々な方法があると思うが,今回は児童の振り返りを意識した授業展開について考える。授業の終わりに児童が書く振り返りを活用するのだ。そこには,児童の学びや深まり,疑問などが見て取れる。ここから児童の思いを取り上げて授業展開や単元計画を考えることで,児童は自分たちの発言が授業を作っていると考えるようになる。すなわち,受け身的だった児童が主体的に変わってくると考える。
今年度はコロナ禍により,授業時間数の確保,単元計画の見直しや入れ替えを行ってはいるが,基本はこの啓林館の単元計画を参考にし,習熟度別少人数指導の単元計画を立てて実践をしている。
まずは既習事項の振り返りから行った。4年生の「面積」では,面積の概念形成及び,長方形や正方形の面積の求め方を学習している。
既習事項をもとにして,直角三角形やその他の三角形(以下は三角形で統一)の面積の求め方を考えた。既習事項を生かし,単位正方形の敷き詰めや,等積変形,倍積変形などの考え方で求めることができた。様々な考え方を出し,そこから公式化をしていく。なぜ三角形の面積は「底辺×高さ÷2」で求めることができるのかを,図と式を関連付けながら説明をすることができた。
前時に三角形の面積の求め方を行っていることもあり,等積変形や倍積変形などの考え方が多数出てきた。児童がワークシートを用い,平行四辺形の面積の求め方を発表し合った。その中に面白い考え方が出てきた。
「(斜めの)平行四辺形を,たてに起こして長方形にする。」
(児童の考え)
他の児童の反応は「それは本当に分かるの?」「なんで起こしたら同じになるの?」と言ったものであった。ただ「起こす」という表現では児童は納得しがたく,この考えは一度保留になった。そして,他の様々な平行四辺形の面積の求め方から平行四辺形は「底辺×高さ」で求められると理解した。
しかし,その後「先ほどの考え(平行四辺形を起こして長方形に変形させる)は,本当になるのか調べてみたい」という児童の反応が多く見られた。気になったことを調べたいという児童の意欲を大切にするために,単元計画では11時間目の発展的な学習「平行な直線を使って」という内容であるが,先に扱うことにした。
実際に単元計画を児童の振り返りによって入れ替えるには,単元の中で各時間に何を学ぶのか教員が理解しておかねばならない。今回は発展的に扱われているこの「平行な直線を使って」という内容を先にもってくることで課題になるのは「高さが外にある場合の求め方」である。ここも取り扱わなければこの学習内容を進めることは難しい。そこで,児童と「平行な直線を使って」の内容を確かめる方法を考えつつも,教師は必ず「高さが外にある時の求め方」を一緒に取り扱うことを理解しておくことが大切である。
児童とどのように考えたら面積が同じなのかを考えた。前時と同じ平行四辺形を活用して考えていることから,面積が24㎠になれば良いということは理解している。1つ目の意見「そのまま,斜辺を垂直にして面積を考える。」を実際に計測し,長方形に戻して面積を求めてみた。
底辺 6cm
高さ 4.5cm
6×4.5=27 27㎠
面積は等しくならない。
「これだと面積は同じにはならない。」と児童たちは結論付けた。だが,前時の学習で出た考えはどうやら底辺を左右にのばす,すなわち平行な2本の直線を使っていることに気付く。そこで,平行な2本の直線の中で平行四辺形を立てて長方形にして考えるという案がでたので,確かめてみた。
底辺 6cm
高さ 4cm
6×4=24 24㎠
面積は等しい。
「面積が同じだ!」「平行四辺形を起こして長方形にしたら面積は等しい。」などの反応が見られた。しかし,「偶然じゃないのかな」「他の場合はどうなのかな。」といった反応も見られた。そこで,平行四辺形を平行の2本の線の中で,様々な形に変形して確かめてみることにした。
少しだけ角度を緩やかにした場合
6×4=24
もっと角度を急にした場合
6×4=24
反対(右)側に倒した場合
6×4=24
反対(右)側で角度を急にした場合
6×4=24
様々な角度で平行四辺形を作成し面積を求めると,全て等しくなった。しかし,この先新しい形に出会った。「高さが外にある場合」である。
高さが外にある場合の面積を求めようとして,ここで一度児童の手がとまった。今までのように高さがないからだ。
そこで,まずは既習事項をもとにしてどのように面積を求めるかを考えた。
等積変形(長方形に変形)
2つの平行四辺形の合計
児童は外に高さがある場合でも面積は等しくなることから,「底辺と高さが垂直であれば,外に高さがあっても良い」ということを理解した。
この学習を通して,児童は「底辺と高さは垂直の関係であるということは,2本の平行の線を利用すれば,高さはいつも等しい。だから,どんな平行四辺形の斜辺の角度を変えても,底辺の長さが同じ平行四辺形は,面積は等しい。」
と結論づけた。
○児童の振り返り
と言ったものであった。
単元計画を入れ替えるのには少し戸惑いを感じてしまうこともあるかもしれない。なぜなら,教科書はとても考えられて作られているからだ。だからこそ,事前の教材研究を行うことで,各単元,各時間に指導をしたい内容は教員が理解し,そのうえで,児童の「知りたい」「やってみたい」「どうしてそうなるのかな」といった疑問や新たな発見を取り入れていくことは,児童が主体的に取り組むようになると考える。今後も,児童の振り返りから授業を展開することも考えつつ,真摯に教材研究を行っていきたい。