小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
算数

自ら式をつくり,数の関係に気付く授業の創造
2学年「たし算とひき算のひっ算(2)」

2年 高知県 芸西村立芸西小学校 矢田 敦之

1.はじめに

第2学年では,たし算の筆算とともに,ひき算の筆算を学ぶ。この学びの過程では,計算の原理とともに,計算の手順であるアルゴリズムを重視し,その技能を確実にすることで,正確に答えを求めるようになる。
本時の授業では,たし算を含め,筆算の学習で培ってきた「正確性」を大切にしながら,教材の工夫により,筆算においても,児童に対し,数の並びから数の関係に気付く「発見性」,「探究性」を求めた。また,授業構成では,筆算の授業で表出の多い,記号的表現(式化),言語的表現(言葉による説明)だけでなく操作的表現(位取り表の活用)にも留意した。

2.単元目標

○既習の筆算をもとに,2位数の加法及びその逆の減法の筆算の仕方について理解し,正確にできるようにするとともに,それを用いる能力を伸ばす。
○筆算形式による3位数+1,2位数,3位数―1,2位数の計算の仕方を理解する。

3.単元の評価規準

○2,3位数の加減の筆算のよさに気付き,生活や学習において活用する。(関心・意欲・態度)
○既習の筆算をもとに,2位数の加法及びその逆の減法の筆算の仕方を考え,数学的な表現で示すことができる。(数学的な考え方)
○2位数の加法及びその逆の減法の計算について,筆算のアルゴリズムをもとに,正確に計算することができる。(技能)
○2位数の加法及びその逆の減法の計算が,1位数などの基本的な計算をもとに成り立つことを知り,それらの筆算の仕方を理解する。(知識・理解)

4.実践計画

(1)指導計画(全11時間)

たし算の筆算(3時間)
ひき算の筆算(4時間)
大きい数の筆算(2時間)
文章,図,式の相互理解(2時間)

(2)本時(11/11時)

①目標

  • 3位数―2位数の計算(百の位からの繰り下がりあり)が正確にできる。
  • 計算によって,数の並びに目を向け,「きまり」や数の仕組みに気付くことができる。

②展開

学習活動及び学習内容 指導上の留意点

①前時までの復習をする。

百の位から繰り下がりのある3位数―2位数の計算を行う。

②本時の問題を捉える。

問題 1○△―△○を計算しよう。

③ルールを知る。

・○,△には0~9の数が入る。

・2つの○,△にはそれぞれ同じ数が入る。

・○より△が大きい。(△>○)

例示によって,ルールを確認させる。

④自分で筆算を立て計算する。

ワークシートを配付する。

⑤筆算を書いたカードを黒板に掲示する。

全員が掲示できるようにする。

⑥答えを確かめる。

答えが正確かたしかめる。

⑦答えを小さい順に並べる。

問題を解決できたことを評価したうえで,答えを並び替えることを求める。

⑧整理された答えをみて,気付いたことを出し合う。

・一の位の数が1ずつ減っている。

・十の位の数が1ずつ増えている。

・9ずつ増えている。

・十の位の数と一の位の数を足すと10になる。
これらの気付きを求めるが,意見がでない場合は,気付きが生まれるように,指示棒の指し方でヒントを与える。

⑨十の位の数と一の位の数を足すと10になることを位取り表の活用により説明する。

位取り表と磁石を用意する。

5.授業の実際




6.授業を終えて

「自分で式をつくる」活動は,初めてであったが,子どもたちは意欲的に取り組むことができた。この過程で,「また,同じ答えになった。」と数の関係の気付きに繋がる声が聞こえた。また,バラバラだった答えを縦に整理することで,数の並びが明らかになり,変化に目を向けることができ,これらには一定の成果が認められる。一方,見ただけでは9ずつ変化していることは捉えづらいこと,また,十の位の数と一の位の数を合わせた数が10であることには興味が抱いたが,その「操作的証明」には,あまり関心を示さなかったことが,今後の課題といえる。
なお,今回とルールを変えて,○>△で計算すると,導出される解は,次の通りになる。ルールを変えても,数の並び,数の増え方(9ずつ増える),各位の数の和(10)は同じである。

参考資料 (PDF:42KB)