算数科における言語活動とは,ただ自分の考えを分かりやすく説明することではない。日常の事象の問題を解決する場面において,解決に必要な数量関係の情報を取り出し,操作や図や式や言葉などと関連付けながら,簡潔,明瞭,的確の観点から,より抽象化された式へと高めていくことである。その過程において,次の3点を充実させたいと考え,本実践を行った。
○ 任意数をxとし,文字を使った式の表し方を調べる。 ―――――――――(2時間)
・加法や乗法の場面での式の表し方 … ① ・乗法と減法が混じった式 …①本時
○ 変数をxとyとし,2つの文字を使った式の表し方を調べる。 ――――――(2時間)
○ 品物のねだんと式を結びつけて,式のよみ方を調べる。 ―――――――――(2時間)
○ 文字にあてはまる数の求め方を調べる。 ―――――――――――――――(1時間)
本時指導にあたっては,1辺のビーズの個数と全部の個数の関係を,重なりに着目して(x-1)×4やx×4-4と表すことを図と関連づけて説明することができる子どもを目指している。そのために,ビーズで正方形模様をつくる場面を教材として取り上げる。次に,x×4で表すことができないといったズレから,重なりがないようにするためのまとまりの作り方を見つけ,文字を使った式と図を関係づけながら説明する活動を仕組む。そして,正三角形の場面に活用させ,1辺の数と全部の数の関係の表し方の一般化を図る手立てを講じる。
○ 1辺が5個の場面で,5のまとまりの4つ分を提示し,内容と方法の見通しをもたせる。
・内容の見通し… | 重なりがある→重なりがないようにするために |
・方法の見通し… | 正方形の図→まとまりのいくつ分の囲み→計算の仕方 →xを使った式へ |
○正方形にビーズが並んでいる図を与え,式に表したまとまりを囲ませる。
○一般化を図り,納得してまとめることができるようにするために,正三角形の場面を追事象として設定した。
○ ビーズを正方形に並べたとき,1辺の個数と全部の個数の関係の表し方は,1辺がx個とすると(x-1)×4やx×4-4になることを図と関連付けて説明し,見出した見方を正三角形の場面に活用し,(x-1)×3やx×3-3の式で表すことができるようにする。
学習活動・児童の反応 | 具体的な手立て |
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【めあてをつかむ段階】 T すすむ君としんじ君とかずこさんが,ビーズの数について話し合っていますよ。みんなで読んでみましょう。 T <スライド3を読んだ後>しんじ君は24個と言っているけど,本当に24個ですか? C 違います。20個です。 T みなさんは,計算で求めましたか,それとも数えましたか? C ※全員に挙手をさせたら,「計算で」「数える」どちらもいた。 T 計算でも,できそうですね。 <スライド4を読んだ後> C ※x×4-4とかいている子もいれば,見通しが持てない子もいた。 T この前の正方形の周り辺の長さを求めたようにx×4には,ならないのですか? C ビ-ズの場合は,x×4になりません。 T それでは,ビーズの数を簡単に求めるための関係の式を見つけて,かずこさんに分かりやすく説明しましょう。
(めあて)1辺の個数と全部の個数の関係の表し方を調べよう。
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4枚のスライドを提示する <スライド1> <スライド2> <スライド3> <スライド4> |
【見通しをもつ段階】 T なぜ,辺の長さの時のようにx×4にならないのですか。 C 重なりができるからです。 T どこが重なるのか1辺が6個の場合で説明してみましょう。 C ※右図のように代表児が6×4のまとまりを囲んで説明 T それでは,重なりができないように式で表してみましょう。 |
図を使って6×4にしたときの重なりを説明させる。
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【自力追究の段階】 C ※ノートに1辺の個数と全部の個数の関係をxを用いた式で表し,図と言葉を関連付けて説明をかく。 |
正方形にビーズが並んでいる図を与え,式に表したまとまりを囲ませる。 |
【交流の段階】 T 二人の友達に求め方の式をかいてもらいました。 C x×4-4の式の意味は, C (x-1)×4の式の意味は, |
2つの式の意味を全員に読み取らせるために,まず,横の友達に図を使って説明させてから,全体の交流を仕組む。 |
T どちらの方法でも求めることができますね。それでは,みなさんなら,かずこさんに一辺が8個の場合を説明するのに,どちらの式を選びますか。 C 私だったら,(x-1)×4の式を使って説明します。その理由は,8×4-4よりも(8-1)×4の方が,計算が簡単になるからです。 C ぼくも,(x-1)×4の式を使って説明します。その理由は,はじめから重なりの部分をなくしているので,説明が分かりやすいからです。 T それでは,一辺が8個の場合は,何個になるか,横のお友達をかずこさんだと思って分かりやすく説明してみましょう。 |
抽象化した式から,はじめの具体的な場面にもどす。 |
【まとめの段階】 T こんどは,正方形ではなく,正三角形に形を変えたら,同じように式で表すことができるでしょうか。一辺をx個にして,全部の個数を式で表してみましょう。 C (x-1)×3 C x×3-3 T それでは,今日の学習のまとめをします。 1辺の個数と全部の個数の関係は,1辺がx個の場合,全部の個数は(x-1)×(辺の数)やx×(辺の数)-(辺の数)で表すことができる。
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下の正三角形に並んでいる図を与え,式と関連付けて(x-1)のまとまりが3つできるように囲ませる。 |
<板書>
交流では,x×4-4と(x-1)×4の2つの式を意図的に取り上げた。もちろん子どもたちが考えた式は,2通りだけではない。例えば,(x×2)+(x-2)×2などの式を考え出していた子もいた。丁寧にするのであれば,正方形で3,4通りの式を出した後,正三角形で使える式を選択させて,いつでも使える式といった観点で一般化を図る方法もあるが,45分間では終わらない。授業は45分間で本時の目標を達成させなけらばならない。
そこで,本時の目標を,正方形で見つけた式を,正三角形に活用し,一般化を図っていくことに重点をおいた。そして,意図的に2通りの式を出させて,別の子に式と図を関連付けて説明させるようなペア交流と全体交流を仕組んだことで,式の意味を深く理解させ,本時の目標を達成させることができた。子どもたちがつくり出した多様な式については,机間指導や事後指導のときにノートに丸をつけて,たくさん褒めた。