場合を順序よく整理して
具体的な事柄について,起こり得る場合を順序よく整理して調べることができる。
本単元は「具体的な事柄について,起こり得るすべての場合を適切な観点から図や表などを用いて分類整理して,落ちや重なりがないように調べることができるようにすること」や,「起こり得るすべての場合の中から,条件に従って筋道立てて考えを進め,条件に合ったものを見付けることができるようにすること」をねらいとしている。つまり,適当に思いつくままに起こりうる場合を列挙していたのでは落ちや重なりが起きてしまうのを,規則正しく並べ,整理し,表現することで,誤りなくすべての場合を明らかにできるようにすることである。更に,名前を記号化して端的に表すことが,順序よく整理して調べる際に有効であることを実感させることも大切である。また本単元は,中学校数学における確率の理解を進める上での基礎となるものである。
本学級は,算数の課題に対して進んで取り組もうとする児童が多い。しかし,わからないときにはずっと黙っていたり,考えを発表する場になると,いつも決まった児童に任せたりする姿も見られる。よって,「35人みんなで答え山に登ろう」を合言葉に,一人ひとりが必ず参加できる授業になるよう,友達と関わりあいながら学べる場を多く作るよう心がけている。少しずつではあるが,全員が協力することでよりよい授業が出来上がることを,児童が実感できるようになってきたところである。算数の課題に取り組む際,式や答えだけではなく,必ず何らかの絵や図や表を書くよう声がけをしている。また,授業の中で友達のノートを見合う時間を設けている。発表で出てきた図や表のよいところ,工夫しているところを探したり,良いものはまねして書いたりしていくうちに,自分から書いてみようと試みる児童が増えてきた。そのうち,図や表があったほうが,説明するときにわかってもらいやすかったり,自分ではよくわかると思った図が,友達に説明したときに初めて分かりにくいことに気づいたりと,考えを伝えるための図や表の大切さがわかってきた児童も多い。
このような実態を踏まえ,一つの課題を通して,友達と共に学び合おうとする前向きな気持ちを大事にし,また課題を解決する際にも,進んで図や表を書き,そのよさを感じられる児童を育てていきたいと考える。
指導に当たっては,単に場合の数を明らかにするだけでなく,図や表を用いて分類整理することと調べ方の工夫に重点を置く。まず,具体的な事実に即して図,表などを用いて表現させながら,規則正しく並べたり,整理して見やすくしたりして,落ちや重なりがないように順序よく調べていこうとする態度を育てることをねらいとする。そのためにも,「固定して考える(頭をそろえる)」「表や図に整理して考える(樹形図や組み合わせ表など)」「数や条件を変えて発展的に考える(4チームだったら・・・)」という,分類整理する過程を大切にしたい。その学習過程を経て,図や表を適切に用いることができるようにするとともに,条件に従って筋道立てて考えを進めていくことや,順序よく整理して調べる際に名前を記号化して端的に表すことは有効であることを実感させたい。また,中学校とのつながりを考え,図については,樹形図という用語で指導する。
本単元においては,日常生活にある具体的な事柄を通して,組み合わせや並べるといったことについて考えさせたい。本時では,2学期に行うお楽しみ会での「ポートボール大会」を題材に取り上げ,試合の組み合わせについて考える。本時で考えたことがそのままお楽しみ会につながるので,必要感をもって考えられるであろう。また,チームによって試合数が異なると不公平感が生まれるので,落ちや重なりがないように探さなければという思いも持ちやすいと考える。4チームでの対戦は今までに多く経験していることと,思いつくままに組み合わせを書き上げた場合,5チームのほうが落ちや重なりが出やすいのではと考えて5チームを選んだ。組み合わせを見つけるとき,ノートに書いてしまうと動かしたり並び替えたりできないので,カード(単語帳)に書いて調べてもよいことを伝える。何を書いていいのかわからず,動き出せない児童には,色シールを渡し,シールをカードに貼りながら組み合わせを探すよう促す。互いのノートを見合う時間を設け,友達の考えを知ったり,互いの考えを伝え合ったりできるようにする。その際,自分の考えと同じもの,似ているところなどを探しながら見るよう声を掛ける。発表させたい図や表で,書くのに時間を要すると思われるものは,この時間で書かせるようにする。できれば,図や表を書いた児童とは別の児童に説明を求めたい。説明の中から出てきた児童の言葉は板書し,似ているところや同じところを探させることで,「二つのチームのうちの最初を一つに決め,次にその相手を探す」という考えは共通であり,落ちや重なりのないように組を作っていくには,一定の順序に従って調べていくのがよいことに気付かせたい。これらの方法は,4チームでも同じように使えるのか挑戦するよう促し,発展的にも考えさせられればと思う。
次 | 小単元 | 時 | 学習活動 |
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1 | 場合の数の調べ方 | 1 | 5チームでの試合の組み合わせを,一方を固定しながら,落ちや重なりなく調べる。(本) |
2 | 5チームでの試合の組み合わせを図や表に書いて,順序よく整理して調べる。 | ||
3 | 5種類のケーキから3種類を選ぶ組み合わせを表に書いて,順序よく整理して調べる。 | ||
4 | 4人でリレーする時の走る順番の組み合わせを,図にかいて順序よく整理して調べる。 | ||
5 | 4色のうち2色を使って旗をつくる場面で,旗が何とおりつくれるかを図にかいて順序よく整理して調べる。 | ||
6 | 道順は何とおりできるか図にかいて順序よく整理する方法を考える。 | ||
2 | いろいろな場合を考えて | 7 | すべての行き方を,図や表にかいて順序よく整理して調べ,その中から条件にあてはまる行き方を見付ける。 |
8 | みかんがほしい人,バナナがほしい人,両方ともほしい人の人数から,みかんだけがほしい人とバナナだけがほしい人の人数を考える。 |
学習活動 | 教師の支援(・)と評価(☆) | ||
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1.本時の課題を把握する。
□チームでポートボールの試合をします。
どのチームとも1回ずつ試合をします。 試合の組み合わせを全部見つけましょう。 |
□に5を入れる。 ・5チームは赤,青,黄,緑,オレンジとすること,その中から2チーム選んで組み合わせることを確認する。 |
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2.本時のめあてを知り,考える。 | |||
試合の組み合わせを,必ず全部見つけることができる方法を考えよう。 | |||
(先頭を決めて) | |||
① 赤と青 ② 赤と黄 ③ 赤と緑 ④ 赤とオレンジ |
⑤ 青と黄 ⑥ 青と緑 ⑦ 青とオレンジ |
⑧ 黄と緑 ⑨ 黄とオレンジ ⑩ 緑とオレンジ |
(リーグ戦の表で) ・カード(単語帳)に書いて,動かしたり並べ替えたりしながら考えてもよいこと,ノートに考えを書き写すよう伝える。 ・児童のノートを見て,わかりやすい表現(図や表,記号化,色分け,補足説明,複数の考えを書いているなど)があれば,進んでよい評価言を出す。 ・自力解決の後,お互いの考えを見合ったり,ミニ先生をしたりできるように,机を行き来する時間をとる。 ☆試合の組み合わせを,頭をそろえて,落ちや重なりがないように進んで調べようとしている。(ノート) ・説明の中で出てきた言葉を板書し,キーワードとして残す。(○○を決めてから,順番に,・・・) ・それぞれの考え方を見比べて,同じところや似ているところをたずね,表現の仕方は違っても,「選ぶ二つのチームのうちの最初を一つに決め,次にその相手を探す」という考えは同じであることに気づかせる。 |
(樹形図で) (順番につなげて) 3.考えた方法を発表する。 |
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4.4チームで考える。 赤,青,黄,緑 |
・5チームのときに出てきた方法を使って,4チームでも同じように見つけることができるか,挑戦できるようにする。 ・自分がやった5チームのときとは違う方法にも挑戦させることで,友達の考えを活用するよさを感じさせたい。 |
どんな組み合わせがあるかを児童に問い,児童から出たものをカードに書いて黒板に貼っていくようにした。10の組み合わせがあるうちの,9つの組み合わせのカードが出たところで,「もうない?」とたずねたところ,「まだある」という意見と,「わからない」という意見が出た。黒板に貼ったカードを,わかりやすく並べ替えることができないかたずねると,先頭の色をそろえて並べ替えた。「あ~,なるほど」「それなら,ほかにも見つけられそう」という声が上がった。「どうして,こう並べ替えたかわかる?」とたずねると,「赤の仲間,青の仲間・・・と先頭をそろえて分けて並べたほうが,まだ出ていないのを見つけやすい」という意見が出た。
「まだ他に,自分の考えを言える人いるかな?」と問うと,「全部書くと20あるけど,赤と青,青と赤は同じ意味だから,青と赤のほうは数えないで・・・」と順序良く組み合わせを書き出していた児童がいたので,その考え方を取り上げた。色の列ごとに書き,重なるものを消していったら「どんどん減って,階段のようになる」ことに気づいた児童もいた。
「赤と試合をするのは青,黄,緑,オレンジの4つで,これで4試合。赤を使った組み合わせはこれでもうなくなるから,次は青との組み合わせを考えると黄,緑,オレンジで3試合。次は黄色の組み合わせで緑とオレンジの2試合。残りは緑とオレンジしかないから,その1試合。全部で10試合になる。」と,色カードを用いながら説明する児童もいた。
先頭をそろえて考えるとよいことに気づいたところで,4チームでは何試合になるのかをそれぞれで考え,全試合の組み合わせをノートに書いて考えた。色ごとに列をそろえて,落ちや重なりなく書く児童が多く,「できた」「わかった」という声が多く聞こえた。6試合を見つけるのは簡単なようだった。中には,6チームで考える児童もいて,5チームで出した10試合に5試合を加えればいいことに,図を描くことで気づいたようであった。「チームが多くなってもやり方は一緒だ」「数を足していけばいいだけだから,多くなってもわかりそう」と,法則が見つかって嬉しそうであった。
「組み合わせをランダムに出していくと,ごちゃごちゃしてわかりにくい」「これで全部あるのかわからない」という場面を作るために,「思いつくまま」組み合わせを児童から出させ,カードに書き出し,ホワイトボードに貼っていった。しかし,「まだあるよ」「まだ出てないのがあるよ」と,組み合わせを見つける児童が多く,結果,9個も出させてしまった。3つくらいを児童から出させて,ホワイトボードにカードを貼り,組み合わせの見つけ方や,個人カードへの書き方を示してから,すぐ個人思考に移るべきであった。ノートに書き出しているうちに,「よくわからないな」という意見が児童の中から出れば,「誰もが全試合を見つけられる方法を考えよう」というめあてに,自然とつながったように思う。一人ひとりがノートに書いて考える時間を十分にとらなかったことが反省である。
個人思考の時間を設けていたら,リーグ戦の表で書く児童がいたと思われる。それと,カードを並び替えたものを見比べ,同じところを比較することができたであろう。また,4チームでの試合の組み合わせを考えさせたとき,樹形図を用いて考えていた児童もいた。よって,全体発表のときには,カードで考えた児童を先に取り上げ,それから,表や図を用いた児童の考えにつなげていくとよかったのではと考える。
時間のない中ではあったが,4チームでも同じように見つけることができるかを挑戦させたところ,先頭の色をそろえながら組み合わせを見つけようとする姿が多く見られた。「□チーム」にしておくことで,進んで6チーム,7チームと考える児童も出てきた。設定を変えても,学んだことが同じように活用できるか試すことは,とても大切だと感じた。