算数はしばしば「積み上げの教科」と言われ,既習事項をもとにして新しく問題解決を行っていく教科である。また身に付けた知識や技能を生活や学習に"活用"していく大切な教科であると考えている。単に計算などの技能の定着だけでなく,考える力や表現する力を養うことが大切である。
高学年になってくると,抽象的な思考が多くなるため難易度が高くなってくる。そこで,「1あたり量」の概念や数量関係が視覚的に捉えられるような図を課題解決の手がかりとなるようにした実践である。5年生の「単位量あたりの大きさ」や「割合」では,1あたり量や関係図を使って考えを整理してきた。これまで学んだことを生かし,考え方や表現を工夫し,それを共有したり発展させたりして,数学的な思考力・表現力を育てていきたいと考えた。
全体を1と考えて,割合の和や積を考えて解くことができる。
本単元は,第5学年の「割合」の発展的な内容であり,文章題から部分にあたる量の割合に目をつけて数量関係を明らかにする学習である。全体を1として,部分の割合を1あたり量で表し,問題解決の手立てとしていく。
割合は関係を表す数であり,イメージしにくいため,関係をわかりやすくする工夫が必要になる。そこで,割合の意味を捉えさせたり,割合の計算を判断させたりするために,線分図や関係図などを使うようにしたい。線分図や関係図を使うことで「割合」「もとにする量」「比べる量」を視覚的に捉えることができる。そして,図や式,数の意味を問題と照らし合わせて考えるようにして数量関係を捉えながら,自分なりに筋道を立てて解決できるようにしたい。
(1)本時の目標 線分図など割合の考え方を利用して,問題を解決することができる。
学習内容 | 展開の様子 |
---|---|
○生活場面に近い問題を提示する。 |
部屋をそうじするのに,1人だけだと30分,兄弟3人だと9分かかります。
はじめ,1人で10分そうじしていましたが,その後,兄2人が帰ってきたので3人で残りの部分をそうじしました。 3人でそうじした時間は何分でしょう。 |
○問題場面を線分図などに表し,解決の見通しを持つ。 |
|
○個人解決をする。 ○グループで考えを説明する。 ○全体の場でも考えを説明する。 |
【関係図を使って考える】
1人だけだと30分かかるけど,10分だけ掃除していたから,10÷30で全体のを掃除したことになる。(を掃除したので)残りは。兄弟3人だと9分で終わるところのだから,9×=6。答えは6分。
【線分図を使って考える】
1人で10分掃除した量は全体のだから,線分図ので区切る。ここまでが1人で掃除した量。残りは。それをずつそうじしてくので,÷=6。答えは6分。
【面積図を使って考える】
1人で10分そうじすると,部屋のできるので,残りは。3人でするには,3分かかる。はが2つ分だから,3×2=6。 1人で10分やって,残りを3人でしていくので,それぞれの図を組み合わせて(一番下の)図のようになる。答えは6分。 |
具体的な数字をあてはめて考える子も予想されたが,ワークシートに線分図や面積図があるのでそれを使って問題解決する子がほとんどであった。図があることで考えやすく,問題の構造も理解することができたようである。
線分図や面積図などを使うことで,問題場面を整理しながら考えることができる。筋道立てて考えるためのよい道具となる。しかし,それだけではない。自分の考え方を他人に説明するとき,わかりやすくするための道具にもなりうる。全体の場で聞いているみんなの反応を確かめながら,説明をすることができた子もいる。さらに,そのような図と考え方について,学級全体でその意味とつながりを考えることで,それぞれの図のよさの理解につながっていく。このように,様々な考え方を共有し,それぞれについて吟味していくことで考えを深めることができるのである。