小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
算数

2数直線図を使って
- 小数倍の意味と演算決定 -

5年 鳥取県米子市立伯仙小学校 友定 章子

1.はじめに

今回の指導要領の中で新しく示された2本の数直線図について,啓林館で5年生の小数の指導にはじめて取り上げられた。教科書には,2数直線図の書き方まで丁寧に示されていた。教科書に示された書き方をそのまま指導しても,子どもたちにとってそのよさが伝わらないと考えた。書き方だけではなく,2数直線図のよさを感じなければ,数量の関係を整理する図として子どもたちは使わないだろうと考え,2数直線図のよさを伝える指導のあり方について実践した。

2.2数直線図の導入

表の項目だけを取り上げ,簡略化して表す。

表と同じで上の数と下の数は対応している(比例している)

表を簡略化して表した数量の一部だけを取り上げて表してもよい。(2数直線図)

伴って変わる2つの数量が比例関係にあるとき,必要な数量だけを取り上げて図に表して考えることもできる。
《書き方》
  • ① 比例する項目の単位を書く。(求めるものを上)
  • ② 考えたい数を右に伸ばした数直線上に表し,関係を矢印で表す。
  • ③ 比例関係にあるため,矢印の上と下は同じ関係。

3.2数直線図を使った小数の指導

① 小数のかけ算の意味

問題
白いペンキが20L,赤いペンキは白いペンキの0.4倍ある。赤いペンキは何L?

整数だとして考えると,2倍の時には
20×2=  白いペンキの量×倍数
だから,小数でも同じ
20×0.4=?  どうやって計算するの?

・ 今までの説明は,0.1を4つ分と考えるから,

・ 2数直線図で式と対応させながら意味を説明

20×0.4
=20×(0.4×10)÷10
=(20×4)÷10 ・・・ 数直線に対応
=80÷10
=8

今までの説明は,「小数を整数として考え,整数として計算したものを戻して考える。」というものだった。そのことを2数直線図で説明すると,子どもたちの納得感は高くなった。

② 小数の割り算の意味

問題
2.4mで384円のリボンがある。
このリボン1mの値段はいくら?

小数を整数だとして考えると,
3mの値段÷長さ(3m)だから,
式は,  384÷2.4=?
どうやって計算するの?

・ 今までの説明

かけ算の時は,10倍したら,10でわったが,わり算はそのままでよい。

(ex)
6 ÷ 3= 2
60 ÷ 30= 2

・ 2数直線図での説明

384÷2.4
=(384×10)÷(2.4×10)
=384×10÷24・・・ 計算の仕方が2数直線図から導かれる
=160・・・ 答えの大きさが2数直線図から判断できる

0.1あたりを求めて

384÷2.4
=384 ÷(2.4×10)×10
=384 ÷24×10
=16×10
=160

今までの説明は,「除法では,被除数,除数に同じ数をかけても,同じ数で割っても商は変わらない」という計算の性質をもとに説明をしていた。しかし,2数直線図を使って式と対応させながら説明すると,計算の意味と答えの大きさの判断の理解が深まった。

4.2数直線図を使った演算決定

多くの子どもたちは,文章題に対する苦手意識がある。その原因は,文章題の中から数量を把握したり,その関係を整理して考えたりすることが難しく,演算決定できないでいる。それを解決するために,文章題の数量を図に表して考えるよう指導してきた。

例えば,前述の問題(単位量あたりを求める問題)は,子どもたちにとって,数量関係をとらえにくい問題としてあげられる。このときの授業の中でも,数量関係を図に表して演算決定をしようとするが,なかなか演算決定ができなかったり,演算決定ができても計算できなかったりする児童がいた。実際に子どもたちが書いた図は次のものである。

問題
2.4mで384円のリボンがある。このリボン1mの値段は?

S1:関係図で考える

・ 関係図から式は 384÷2.4= と考える。
その後,この計算をどうすればよいか悩んだ。

S2:線分図で考える

・ 線分図に数量を表すが,立式するに至らかった。

S3:2数直線図で考える

・ 2数直線図から演算決定をする。

・ 小数の計算の仕方についても,前述の通り2数直線図で説明することができた。

384÷2.4
=(384×10)÷(2.4×10)
=384×10÷24
=160

5.2数直線図の指導を通して

問題文の数量関係を整理して演算決定したり,思考過程を説明したりする際,式と図を対応させて説明するよう指導してきた。その1つに,この2数直線図を加え,子どもたちにとって使えるツールが増えた。この2数直線図で表された比例関係を理解し,書き方だけでなく,意味や表している数量関係をきちんととらえさせることにより,「使える図」として機能できることを実感した。どのような図でも,書き方を教えるのではなく,式同様,その意味をきちんと指導することが大切だと感じた。子ども達がどのような問題に応じてどのような図をかくと数量関係が明確になるか,それぞれの図のよさを理解した上で自分自身で選択できる力こそが考える思考力を育てることにつながると考える。

これからも,自分自身の指導法を工夫することの大切さを感じながら,子ども達と算数を楽しみながら実践を重ねていきたい。