2つの量を比べるとき,その比べ方にはいろいろな仕方があります。
1つは,大きさの違い,つまり差で比べる仕方です。6と2を比べて,「6は2より4大きい」といいます。
これに対して,一方が他方のいくつ分にあたるかという割合で比べる仕方もあります。例えば,「6は2の3つ分」のとき,「6は2の3ばい」ともいいます。これを倍概念といいます。
倍概念は,下のように「6cmの2ばい」といった例で導入すれば分かります。しかし,倍概念は割合の認識ですから,完全な理解は,わり算を学習してから後のことと考えるべきでしょう。
かけ算は,ある大きさの2倍,3倍,……を求める計算で,倍概念に基づいています。しかし,倍概念を強調するあまり,導入の段階から,もとにする量,比べる量などといっても,第2学年の児童にはわかりません。
教科書では,数図ブロックなどの具体的な操作を通して「基準量のいくつ分」の意味をしっかりと促えさせ,これをもとにかけ算の意味指導をしています。その後,上のように,「倍」という概念の中に含まれている基準とする量の「いくつ分」という操作に着目して,かけ算の意味を見直すことにしているのです。
倍概念は,高学年で,小数倍,分数倍へと拡張されて,その意味を深めていくことになります。