3〜6年
見通しをもって観察,実験に取り組む子どもの育成    
〜「自由研究をしよう」の学習を通して〜    
宮崎市立倉岡小学校
坂本 吉郎
1.はじめに

 多くの学校で長い夏休みの課題の1つとして,児童に取り組ませているものに「自由研究」がある。

 本校でも,児童が夏休みを利用して,今までに学んできたことを生かしたり,身の回りの自分が疑問に思ったことを明らかにするために,1つの問題解決に取り組み,自分なりに解決に向けて研究することを期待して,毎年3年生以上の児童に「自由研究」を取り組ませている。

 一昨年までは,特に事前・事後指導もなく,「せっかくの長い夏休みだから,何か自分でテーマを見つけ,自由研究に取り組んでみよう」と児童に投げかけて取り組ませる程度であった。

 さて,本校の児童に自由研究についてアンケートをとってみると,

テーマの決め方がわからない。
どういう手順で調べればよいのかわからない。
観察,実験の段階で考えていたように進まない。
どのようにまとめていいかわからない。

等の悩みや疑問が,ほとんど全ての児童から出された。児童にとって自由研究は,かなり頭を悩ませるもののようだ。

そこで,自由研究に見通しをもって意欲的に取り組ませるために,以下のような実践を試みた。

2.「自由研究をしよう」の実践

 (1)  単元のねらい

 これまでの学習や経験をもとに自分のテーマを見つけ,解決方法を考えて研究の計画を立て,問題解決の見通しをもつことができる。

 自分で決めたテーマの研究を進め,それをまとめて発表する活動を通して,問題解決の力を養うとともに,科学的な見方や考え方を日常生活に生かすことができる。

 (2)  指導の手立て

 【一人一人の自由研究の位置づけと指導の手立て】

1)自由研究の進め方を知る。〈授業2時間〉

 ○ 科学関連施設(人材)の活用

 ○ 昨年度の自由研究の振り返り

 ○ 自由研究の進め方の資料(マニュアル)作成

  別資料「力いっぱい,はまちゃおう!」参照

2)自由研究に取り組む。〈夏休み〉

 ○ 夏休みの教育相談(教師・保護者・児童の三者面談)の活用〜テーマについての検討〜

 ○ サマースクールの活用

 学校のパソコン室,図書室を開放

 自由研究に対する相談の場

3)自由研究の振り返り(自己評価)をする。〈授業1時間〉

 ○ 自己評価カード

4)夏休み自由研究展示週間・・相互評価をする。〈2週間〉

 ○ 友達の自由研究を閲覧するための観点表

 ○ 相互評価カード

5)自由研究発表会をする。〈授業2時間〉

 ○ 倉岡ノーベル賞の設定

 ○ 自由研究発表会の設定

 (3)  授業の実際

1)自由研究の進め方を知る。〈授業2時間〉

 あいさつ

 講師紹介(宮崎科学技術館・大淀川学習館・県総合博物館)

 本時の学習内容の確認

自由研究の方法を知り,自分で計画が立てられるようにしよう。
〜自由研究の取り組み方で,疑問に思っていることや悩みを解決しよう。〜

 昨年の自由研究について振り返る。

 昨年の自由研究の取り組みについて(事前のアンケートから)

 昨年の自由研究の発表

 太陽が作った電気(4年)

 アリの好きな食べ物(5年)

 水の蒸発調べ(5年)

 日の出,日の入りの観察(6年)

 あめ玉のとけ方(6年)

 児童発表に対するコメント・アドバイス(各館から3分程度)

 自由研究の進め方について知る。
 (教師作成資料「力いっぱい,はまっちゃおう!」) ※ 別資料参照


 各館の先生の自由研究例を聞く。

 宮崎科学技術館
(科学・天体関連の自由研究例)

 大淀川学習館
(動物・植物関係の自由研究例)

 県総合博物館
(気象・地質関係の自由研究例)


 自由研究の進め方について,わからないこと・困っていることを質問し,解決する。

 あいさつ

【各科学関連施設の先生の話】

2)自由研究に取り組む。〈夏休み〉

 自分の研究テーマを決定する。(7月)

 夏休みの教育相談(教師・保護者・児童の三者面談)において,テーマについて検討する。

 テーマにそって,自分なりに解決に向けて研究する。(7・8月)

 サマースクールの活用(学校のPC室・図書室の利用,自由研究に関する相談)


3)自由研究の振り返り(自己評価)をする。〈授業1時間〉

 自分の自由研究の取組について自己評価する。

【評価の観点】
 自分のテーマに対する満足度

  イ 調査・観察・実験時の努力度

 まとめの工夫・努力度

  エ 総合満足度(達成感)

 昨年との比較   カ 自己採点
アエに関して

  4〜とても満足 3〜まあまあ満足 2〜少し不満 1〜不満

イウに関して

  4〜とても努力 3〜まあまあ努力 2〜少し努力不足 1〜努力不足

オに関して

  ○〜昨年より努力・満足した   △〜昨年並み   ×〜昨年以下

自己採点

自分で自分の自由研究に得点(100点満点)をつけるとしたら

4)夏休み自由研究展示週間・・相互評価をする。〈2週間〉

 夏休み自由研究展示週間


 友達の自由研究を閲覧する。(相互評価)


5)自由研究発表会をする。〈授業2時間〉

 はじめの言葉

 今年の自由研究の取組について知る。

 
 テーマ等について
(全児童のテーマ一覧作成)

 倉岡ノーベル賞の発表と表彰

 最優秀賞 1点(全体から)

 優秀賞  2点(全体から)

 努力賞  4点(各学年1点)

 代表児童
(努力賞・優秀賞・最優秀賞)が研究発表をする。

 代表児童の発表

 質疑応答

 他の児童の感想等

 教師からのコメント


 校長先生の講評を聞く。

 終わりの言葉

 (4)  取組の成果

 「テーマ」「テーマ設定理由」「予想」「解決方法」「結果」「まとめ」「感想」といった問題解決的な過程を通った自由研究が多く見られた。

 身近なテーマがとても多くなった。

 観察や実験を通して課題解決している自由研究が多くなった。

 年度をまたいだ継続研究が多く見られた。

 夏休みに何度も科学関連施設を訪ねて自由研究に取り組んだ児童も見られた。

 記録したり,まとめる段階で,グラフ,絵,写真等を活用する児童がとても増えた。

 自己評価から自由研究の取組に対する満足感や達成感を味わっていることがわかる。

自己評価の観点ア〜エに関しては4段階で評価させたが,ほぼすべての項目で肯定的な回答が得られた。

観点オの昨年の取組との比較においては,ほぼ9割(特に6年生においては全児童)が昨年より努力・満足したという回答であった。

 以上のような成果が得られたことで,児童は,見通しをもって自由研究(観察,実験)に取り組めたことがうかがえる。

3.終わりに

 自由研究は総合的な力が要求されるものだと思われる。「取組の成果」で多くの成果を述べたが,全ての児童に対してそう言えるわけではなく,まだまだ課題も残るし,研究の余地がある。

 これからも,実践を通して「自由研究の在り方」について追究していきたい。

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