中高一貫コースにおける中学段階での探究活動の指導をどのように始めたか,報告したいと思います。本校と同様に探究活動の指導についてどこから手を付け始めたらいいか検討している学校にとって少しでも参考になれば幸いです。
福岡大学附属大濠中学校・高等学校は,「明朗闊達」「自重敬他」「研学練体」「進取創業」を校訓とした福岡市中央区にある進学校です。その中に中高一貫コースが併設されており,
1.国際的な視野を養い,適正な判断力と自主性を発揮する
2.高い知性と豊かな感性を培い,自由で伸び伸びとした活動をする
3.たくましい体と思いやりの心を育み,お互いの人格を尊重する
の3つの教育目標を中学校に設けて,学力の伸長はもとより,全人教育を目標に掲げ,幅広い人格形成の場としての教育環境を提供しています。
【2019年度まで】
中学では総合的な学習の時間に「自分を知る・職業を知る・国際理解」などの学年テーマに基づいてグループに分かれて調べ学習を行っていましたが,安易にインターネット検索に頼るなど,自分の考えに昇華する段階に至っていない場合も多く,課題がありました。
【2020年度】
コロナ対策でグループ学習が禁止となり,講義形式で使用できるテキストを必要としていました。また,この状況を逆手にとって探究のしかたを学ぶ機会としたいと考え,中学1年で試験的に「課題研究メソッド スタートブック」(啓林館)を導入しました。
【2021年度】
昨年度の取り組みを参考に,年次進行で行っていくことになりました。
1年 | 1 |
【序章】 課題研究に取り組む注意点について学習する。 (課題研究メソッド スタートブック p.4~13) |
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2 |
【1 – 2】 図書館で,情報の集め方(書籍)について学習する。 (p.14~15) |
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3 |
【1 – 3】【2 – 2】 PC教室で,情報の集め方(インターネット),言葉の調べ方について学習する。 (p.16~17, p.22~23) |
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4 |
【1 – 4】 外部講師の講演を通して,人から情報を引き出す方法について学習する。 2020年度は学校行事「土曜講座」で東京大学名誉教授の石浦章一先生でした。 (p.18~19) |
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5 |
【2 – 1】【2 – 3】 これまで集めた情報を,キーワードや図を用いて整理する。 (p.20~21, p.24~29) |
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6 |
【ここまでのふりかえり①】 教員側から生徒に新聞記事を与え,行わせる。 また,Task2,3に個人によって違いがあることを気づかせる。 (p.30~31) |
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7 |
【3 – 1】【3 – 2】のA・B 「問いを立てることの目的」や「問いの種類」について学習・実践する。 (p.32~37) |
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8 |
【3 – 2】のC・D 「問いの種類」について学習・実践する。 (p.38~41) |
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9 |
【3 – 2】のE・F 「問いの種類」について学習・実践する。 (p.42~45) |
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10 |
【3 – 3】 グラフの読み方について学習する。 (p.46~49) |
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11 |
【ここまでのふりかえり②】 教員側から生徒に新聞記事を与え,「情報の整理」「問いを立てる」について実践する。 (p.50~51) |
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2年 | 12 |
SDGsの1から16のゴールを各生徒に割り振り,それを踏まえたうえで,生徒は研究テーマを深めていく。 【4 – 1】【4 – 3】思考ツールを用いたアイデアの整理方法について学習し,マンダラート・キーワードマッピングの作成を行う。 (p.52, p.62, p.63,p. 65) |
13 |
【ここまでのふりかえり③】【5 – 1】 12時間目に割り振ったテーマについて,問いの整理・まとめなどを行う。 (p.67/Task3, p.69/Task1~3) |
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14 |
【5 – 2】 クラスの中間発表のなかで,これまで立てた問いについて検証する。 (p.72~73) |
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15 | 同上 | |
16 |
【5 – 3】【5 – 4】【5 – 5】 研究計画書の作成に向けて,「調査・実験」「仮説」「課題研究の意義」について学習・実践する。 (p.74~79) |
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17 |
【終章】 研究計画書を生徒それぞれで作成する。 (p.80~91) |
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18 | 同上 | |
19 | 同上 | |
20 | SDGsのテーマ別に分かれて,研究計画書の発表会を行う。 | |
21 | 研究計画書の冊子集を作成し,課題研究の感想を書く。 | |
年度末に中学校全体の総合文化発表会で発表を行う。 | ||
3年 | 研究計画書に基づいた活動と,秋に行われる修学旅行の事前・事後学習を2本立てで行う。 | |
年度末の中学校全体の総合文化発表会で発表を行う。 |
※週1単位の「総合的な学習の時間」を使って,少しずつ進めていきます。
※SDGsはあくまで探究活動のきっかけとして活用することとします。そのため,SDGsの1から16を機械的に割り振ります(17番目は割り振らない)。
講演メモ
文章のビジュアル化
問いのロジックツリー
計画立ててやっていますが,もっと上手に授業展開やテキストの活用をできるのではないかと思いながら,実際は試行錯誤しています。毎年改善していきたい。
本校の中高一貫コースには課題研究に関する6年を通したカリキュラムはありません。
高校の総合的な探究の時間では,講演会や国際交流を通して多方面から刺激を与える機会を設けたり,修学旅行先をフィールドワーク先と設定したグループ単位での事前学習と発表会を行ったりしています。
しかし,本校では,高校での探究活動は,総合的な探究の時間に限らず,むしろ各教科の時間の中で行われていくのが本命であると位置付けています。これからも高校の各教科や総合の中で行われる探究活動の土台づくりを中学の総合的な学習の時間を使って効果的に行っていけることを期待しています。
まだ,始めたばかりなので,大きな成果があるわけではありません。今後も改善しながらやっていきたいと考えています。最後に,生徒の感想をいくつか紹介します。