中学校理科における地質学・古生物学は,中学1年生の履修範囲であり,地球科学の入り口ともいえる分野である。小学校段階においては,地層を実際に作ってみる活動や流水のはたらきを実験で解決する活動など,体験的な要素が多く盛り込まれていることから,生徒の興味・関心が強い分野ともいえる。しかし,中学校においては,「身近に露頭がないこと」「身近に露頭があっても活用の仕方がわからないこと」「地球科学分野に自信がないこと」「中学1年生の授業時数の関係で,内容を深く掘り下げる時間がないこと」等の理由が重なり,知識伝達型の授業になってしまうことが多い。
今回の授業実践では,「私たちが住む地域では過去に何が起こったのか」という生徒の素朴な疑問をテーマに掲げることで,生徒の知的好奇心を引き立てることを重点に置いた。また,身近に露頭がない地域でも実践でき,教員の過度な負担にならないように「ボーリング資料」を用いた授業実践を紹介したい。
今回用いたボーリング資料は,役場に保管されているものを借りた。上位より,「砂質シルト,火山灰質砂,火山灰質シルト,火山灰質砂,砂礫,火山灰質砂,砂質シルト,砂」となっている(図1)。中学校段階においては,上位より,「泥,火山灰,礫,火山灰,泥,砂」の6層として扱うこととした。またこの中でも特に,火山灰の地層が9mの厚さで堆積していることに目を向けさせ(図2,図3),自然災害の脅威についても考えさせることで,地域の特性を活用したい。
図1.ボーリング資料
図2.火山灰の資料①
図3.火山灰の資料②
過程(分) | 生徒の学習活動 | 形態 | 教師のかかわり | □評価規準 ■評価方法 |
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課題 把握 (3) |
○岩内町の過去の様子を考える。
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全 |
○岩内町の過去の様子を尋ねる。
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☆問題解決的な学習 |
課題 解決 (37) |
課題 岩内町の過去の様子を推測しよう
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○資料を観察する。
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班 |
○資料を観察させ,層序を記録させる。 |
☆習得した基礎・基本を活用する学習課題 ☆実物教材・視聴覚教材 |
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○個人思考をする。
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個 |
○観察結果を基に過去の様子を推測させる。
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☆個人で深く考えさせ,解決への見通しを持たせる。 |
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○班ごとに話し合い,岩内町ができるまでのストーリーを作成する。
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班 |
○話し合いの時間を設定する。
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○班ごとに発表する。
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全 |
○班ごとに発表をさせ,質疑応答の時間を設定する。
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☆話し合い ☆適切な場面で褒める |
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定着 習熟 (10) |
○まとめをワークシートに記入し,岩内町の過去のようすについて理解を深める。 |
全 |
○岩内町ができるまでのストーリーをまとめる。
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□岩内町の過去のようすを説明している。(思・表) |
○感想を書く。 |
個 |
○感想を書かせる。
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■ワークシート,発表 |
図4.上位層の生徒
図5.中位層の生徒
図6.下位層の生徒
図7.上位層の生徒
図8.中位層の生徒
図9.下位層の生徒
今回の授業実践では,ただ地層について学習するのではなく,「自分が住んでいる場所で過去に何があったのか」という生徒の素朴な疑問を取り上げた。この生徒の素朴な疑問は,古生物学の原点ともいえる疑問であり,どの生徒も一度は考えたことのある疑問である。
そのため,生徒の考察や感想を見ると,興味・関心を持って授業に参加していたことが伺えるとともに,個人思考から集団思考にいく際に,既習事項と関連付けをすることで理解を深めていることがわかる。
また,地域の特性として「火山灰の地層が約9mも堆積していること」に目を向けさせることで,自然災害の脅威を実感させることができ,「もし,また起こったらどうしよう」「火山の噴火についてもっと勉強したい」といったような意欲づけにも繋がった。
(1) 生徒の素朴な疑問である「自分が住んでいる場所で何があったのか」を解決させるためにボーリング資料は適切な教材である。
(2) ボーリング資料はどの地域においても入手が容易であることや資料分析が容易(中学校理科レベルにおいて)であることから,実践しやすい教材である。
(3) 自然災害の脅威についても実感させることができる場合(地域)がある。