実験や観察をたくさん取り入れると,思考力の高い生徒たちにとっては,予想とのズレの分析や結果からの考察を通し,規則性の発見や各知識の統合が進み,より思考力が高まることが多く見られます。また何よりも興味を持って学習に参加し,主体的に学ぶ姿勢が生まれるというメリットがあります。
しかし,下位層の生徒たちを見ると,学習には積極的に参加するものの,得た結果を十分に消化しきれず,個々の事象の混同や混乱をまねいています。結果として,授業は楽しいけどテストで点が取れないことから苦手と感じる生徒がいます。
そこで,実験や観察を減らさず,なおかつ得た知識をしっかり整理して理解する方法について,いい手立てはないかを考えてみました。
ガイダンスを十分に行い,学習の流れや目標を意識させる。
(方法)シラバスの提示で大まかな流れをつかませ,授業のはじめに毎時の目標をはっきり伝える。
○ → 本時の目標を明確にすることで,何が大事であるかを意識して授業を受けることにつながった。
× → 実験後の考察やまとめが次時になることがあり目的意識の持続が難しい場面がある。
授業の終わりに本時の目標に対してどこまで近づいたかをチェックさせる。
(方法)単元の最初にノートを1ページ確保し,単元の目次のページをつくる。(計画or学習内容)
授業のまとめを目標に照らして各自で行い,その後,振り返りのページに評価する。
○ → 目標をはっきり理解することで,自分のための自己評価(見せるためのものではない)ができる。
× → まとめを自分でして振り返るため,間違った結論にたどり着いている場合がある。
単に黒板を写す作業から,板書以外の記録をとらせたり自分で調べたりまとめたりさせる。
(方法)
○ → ノートづくりの指導から3ヶ月後に行ったアンケートでは,
自分なりのノートが作れるようになってきた 69%
ノートづくりをして授業の受け方がよくなった 55%
授業以外でノートづくりの続きをするようになった 44%
× → 板書にだけたよっていた下位層の生徒にとっては,逆にポイントがつかみにくくなった。
小ステップで確認させることと,家庭学習の時間をふやすことを目的に行った。
(方法)小単元ごとに重要語句や,パターン問題などに取り組ませる。
○ → 振り返りの自己評価をテストの点数で実感でき,また自己評価の精度も向上した。
○ → 範囲が狭いので頑張ろうとする生徒が多くなった。
× → 時間の確保が難しかった。
ノートづくりだけでなく,ワークを準備し学習したところを自分で確認しながら問題を解かせる。
(方法)資料集を準備し家庭でもノートづくりができるようにする。
ノートの提出を頻繁にさせ,チェックする。
問題集を準備し単元確認テストまでに解かせるように指導する。
○ → 学習したことを家庭でまとめなおす生徒がでてくるなど,家庭学習をする生徒が若干増えた。
× → 提出物のチェックに限界があるのと,できていない生徒への手立てが十分でない。
今回の取り組みは,理科の授業として特殊なことをしたわけではなく,どちらかと言うと授業を本校の生徒の実情(家庭学習を30分もしない生徒が全体の60~70%)や,下位層の生徒の実態に合わせ,なおかつ実験・観察の時間は減らさないように考えた苦肉の策です。
私自身まだまだ模索中であり,多くの先生方のアドバイスを参考に日々の授業を行っております。さらに研究を進めて行きたいと思っています。