「自由研究に取り組もう」
大阪府A教諭
1.はじめに
夏休みの課題として取り組まれている「自由研究」。研究物や工作物など様々な形態があります。取り組み方は多種多様ですが,やはり「研究」としてじっくり行わせたいものです。日頃の授業に活かし生徒の興味や意欲を高め,さらに表現力や文章力を向上させるためにも,一定のマニュアルのもとに指導を行うことに効果があると思います。
2.日頃の授業を通して行いたいこと
- ① 理科室(備品・消耗品)の充実および使い方を指導する。
- ② 授業(教科書に記載されている)の実験・観察を演示も含めて行う。
- ③ 結果や考察の書き方を指導する。
- ④ 考察・まとめの発表(個人・班単位)を行う。
- ⇒ これらのことが自由研究を取り組む時に,自然と活かされていく。
※理科室での実験,観察のようす
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← 顕微鏡を 使った観察 |
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← 液体窒素を 使った状態 変化の実験 |
↑ 空き缶がつぶれる 空気圧の実験 |
3.日常生活での疑問
日頃の生活や授業の中で不思議に思ったことや疑問,当たり前に考えていた事象,身近な現象への興味・関心。
⇒ 自由研究のテーマとして取り組ませる。
4.自由研究の取り組みの流れ
- ① 1学期末の授業の中で,自由研究の説明をする。
- ② 夏休み前までに,テーマ・グループを決めて報告し,準備を開始する。
- ③ 夏休み中の理科室開放日を利用して,実験・観察を行う。(家庭で行ってもよい)
- ④ 8月下旬までに実験や観察を終わらせ,まとめを行い,チェックを受ける。
- ⑤ 校内審査を経て,市の審査を受ける。(9月上旬)
- ⑥ 審査結果の発表。入選・特選の生徒は模造紙やパネル製作に取り組む。
- ⑦ 校内作品展(文化祭)での展示や市や府の作品展に発表。
5.自由研究の各項目の説明と様式例 (様式例は最後に記載してあります)
① テーマの選び方・決め方
- 興味を持ったこと,不思議や疑問に思ったことなどから選ぶ。
- 大きな問題や難しい問題は,知識・設備がないので初めからしない。
- 危険なことやむやみに動物を死なせるようなことも適切なテーマではない。
- 疑問に思う事がなければ,「自由研究」に関する本があるので参考にしてもよい。
- テーマを決めたら,テーマに関する予備知識を豊富にする。そのために,本やインターネットなどで調べ,ノートに整理し,頭に入れておく。
⇒ テレビ番組や本,インターネットなどから情報を得て,テーマを決めている生徒が多いです。また,3年間を通して同じテーマで取り組む生徒もいます。
② 目的の決め方
- テーマにせまるために何をどのように調べるかを具体的に項目別にする。
- 目的になる項目を具体的に詳しくすることによって,テーマの疑問を解決するために多方面から取り組むことができる。
- 目的別にその実験方法や実験装置,統一した条件,結果などを予想する。
- 誰もが考えそうなことより,自分たちだけしか考えないようなものがよい。
- 装置作りや工夫が入ると一層よい。
⇒ 目的の決め方が生徒にとっては難しいので,担当教師と相談したり,実験を進めながら目的を細かくしたり,内容を変化させたりすることもあります。できるだけ明確にすることが,実験等を進めやすくなります。
③ 実験方法・結果
- 目的が決まれば,それを調べるためにどのような装置を作り,どのような方法で進めればよいかを考えてノートに書く。
- 方法を考えるときは,調べるもの以外の条件は統一する。(対照実験)
- 実験,観察の装置など準備したものは,写真に撮ったり,スケッチしたりする。
- 測定には誤差があり,生物の観察では個体差がある。したがって,1回や2回の測定や観察では判断できない。
- 実験,観察の前に結果の予想をする。
- 実験,観察中に気づいたこと,感想,意見,結果などは正確に詳しく記録する。
- 結果は表やグラフにした方が分かりやすい。
⇒ 最近はデジタルカメラやパソコン等が普及しており,それらを使って取り組む生徒も多いです。しかし,スケッチや表,グラフ作成,ノートにメモすることなど,地道な作業を行う方が生徒にとって良い経験になります。
④ 考察
- 結果の表やグラフ,実験の方法などから考えられることを詳しく書く。
- 実験から得られた結果になった理由や予想と違った理由などを詳しく書く。
- 何度も読み返して,誰が読んでも分かる文章にする。(「~となったことから,・・・となると考えられる。」や「~となるのは,・・・だからである。」というような表現で書くとよりよい。)
⇒ 考察がきちんと書けたか否かによって,自由研究の完成度は大きく変わります。
考察を結果と同じと考えている生徒も多く,実験から分かった結果だけを書いている場合が非常に多いです。やはり,結果からどういうことが言えるのかということを,時間をかけて考えさせたほうが良い研究結果につながります。
⑤ まとめ
- 目的別に分かったことを1行ぐらいで箇条書きにする。
⇒ 長い文章ではなく,簡潔に書いたほうがいいです。
⑥ 反省・感想・発展
- 研究の感想や反省を書く。
- 今後どのように深めていけばよいか,来年はどういう実験にするかを書く。
6.日常へのフィードバック
自由研究を取り組むうえで,以下のようなことに留意し指導する。
- ○ 理科(実験・観察を通して知る,考える)の楽しさや面白さを体験させる。
- ○ 多角的な見方,考え方を養う。
- ○ まとめ方(結論の導き出し方)を養う。
- ○ 継続的に取り組む力をつける。
- ○ 高い目標への挑戦(作品展入賞)。
⇒ 以上のことを日々の授業にも活かす。
⇒ 様々な面でプラスになると生徒は感じています。また,学年が上がるにつれて取り組む姿勢や実験の進め方,まとめ方などがとても上手になっています。
7.課題
- ○ 長期的に取り組まなければならず,時間の確保が必要。
- ○ 家庭や学校の理解と協力(時間や予算)。
- ○ 評価方法。
8.最後に
現在,理科離れが進んでいると言われていますが,実際に生徒と共に自由研究を行ってみると,実に良く興味や関心を持って取り組んでいることが分かります。理科(実験や観察,理論等)に触れる機会が減っているのであり,授業や課題などの中で,その機会を教師側がしっかりとつくることができれば,その改善の1つになると思います。
「自由研究」という機会を通して,生徒に理科に対する楽しさや面白さ,また興味や関心を持ち続けさせることが大きな使命だと思います。
自由研究の「テーマ」 |
動機 |
・・・ |
テーマを選んだ理由を書く |
目的 |
・・・ |
具体的に項目別にする |
実験方法 |
・・・ |
実験の仕方と装置の工夫や実験の条件なども記す |
結果 |
・・・ |
表やグラフを用いる |
考察 |
・・・ |
結果から考えられることを文章で書く |
まとめ |
・・・ |
目的別に箇条書きにする |
反省・感想・発展 |
「自由研究」の様式例