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Q&A

教科書に関するよくあるお問い合わせ

全般について
Q1

教科書で「,」ではなく「、」を使っているのはなぜですか?

A.  令和3年度用教科書までは、1952年に通知された『公用文作成の要領(国語審議会建議)』の『句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。』にしたがい、教科書でも「,」と「。」の組み合わせで表記していました。
 その後、2022年に通知された『公用文作成の考え方(文化審議会建議)』で『句点には「。」(マル)読点には「、」(テン)を用いることを原則とする。横書きでは、読点に「,」(コンマ)を用いてもよい。
 ただし、一つの文書内でどちらかに統一する。』とされたため、令和7年度用教科書では「、」と「。」の組み合わせで表記を統一しました。

Q2

リットルの単位を大文字の「L」で表記するのはなぜですか?

A.  教科書で使用する単位は、計量法で定められた国際単位系(SI)の単位を使うことになっています。体積の単位リットルは、SIに属しませんが、国際度量衡委員会で併用が認められています。そのときの単位記号は、ローマン体(直立体)の「l」か「L」と決められています。ローマン体「l」は数字の1と紛らわしいために、大文字の「 L 」を使用することにしました。

Q3

速さの単位がm/秒やkm/時ではなく、m/sやkm/hなのはなぜですか?

A.  教科書では、単位の表記は国際単位系(SI)に基づくことを原則としています。SIによると、「秒」は「s」、「時」は「h」で表すことになりますが、これまでは慣例として、わかりやすい「秒」や「時」の表記を採用していました。
 平成24年度用の教科書から、文部科学省の検定意見により、「秒」や「時」もSIに則って、「s」や「h」と表記することになりました。したがいまして、J/秒もJ/sと表記しています。
 なお、「分」はSIによると「min」という表記になりますが、生徒の負担を考慮して、メートル毎分(m/min)等の表記は扱わないようにしています。

生命

1学年

Q1

花のつくりの学習で、「花びら」ではなく、「花弁」を用いているのはなぜですか?

A.  文部科学省からの検定意見により、平成24年度用教科書から、「花びら」ではなく、「花弁」を用いることとなりました。

Q2

裸子植物の雄花のつくりの学習で、「やく」ではなく、「花粉のう」を用いているのはなぜですか?

A.  文部科学省からの検定意見により、平成24年度用教科書から、裸子植物においては「やく」ではなく、「花粉のう」を用いることとなりました。

Q3

「養分」と「栄養分」の用語はどのように定義されているのですか?

A.  「養分」については、小学校理科では『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編』に次のような表記があります。

・理科5年 B 生命・地球 (1)植物の発芽、成長、結実
(ア) 植物は、種子の中の養分を基にして発芽すること。
(ウ) 植物の成長には、日光や肥料などが関係していること。

・理科6年 B 生命・地球 (1)人の体のつくりと働き
ウ 血液は、心臓の働きで体内を巡り、養分、酸素及び二酸化炭素などを運んでいること。

 それに対して、中学校理科では、『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編』に「養分」の表記はなく、「光合成によって生じた有機物は師管を通って他の部位に移動する」や、「食物が物理的及び化学的に消化され、栄養分が吸収される仕組みを理解させる。」などと表現されています。

 これらを受けて、令和7年度用教科書の中では次のように説明(定義)しています。

・中学校理科教科書-1年 p.30
この教科書では、根から水とともにとり入れられる肥料分を養分、葉でつくられたデンプンを栄養分としている。

 また、「肥料」という用語は、デンプンなどとの区別はわかりやすいですが、「人が作物に与えるもの」という印象から、自然の植物全般に使うのは避けたほうがよいという意見もあります。よって、令和7年度用教科書では「養分」と「栄養分」という用語を使用しております。ただし、「養分」、「栄養分」などの言葉は、分野や文献によっていろいろな使い方をされていますのでご留意ください。

Q4

藻類は植物ではないのですか?

A.  平成24年度用教科書から五界説の考え方に基づき、藻類を植物のなかまに分類しておりません。五界説では、造卵器をもち、内部に胚を形成する有胚植物(陸上植物)を植物界に分類しております。なお、藻類は五界説では原生生物界に分類されます。

さらに詳しい説明
 かつて生物を植物と動物、あるいは植物、動物、原生動物に分けていたような分類体系では、光合成生物の多くは植物に分類されていました。現在でも世間一般の理解はほとんどそのままになっていますから、藻類が植物でないと急に言われると疑問だらけになるというのはもっともです。しかし、現在はできるだけ生物の系統樹にみられる枝分かれにおいて、単一の枝(単系統群)をそれぞれ独立した分類群にしようという考えが学会ではふつうになっています。この観点に基づくと、少なくとも造卵器をもち、内部に胚を形成する有胚植物(陸上植物)を植物界としてまとめ、あわせて動物界(後生動物)と菌界をまず独立した分類群とし、それらの祖先となる真核生物を原生生物界、さらに最も単純な体制をもつ原核生物界を認めるという五界説のほうが生物の進化過程に近い分類だという判断がなされました。

 平成24年度用教科書から、この五界説の考え方に基づき、植物は陸上植物のみに限定した分類群になりました。そうすると、植物の祖先である緑藻類やその他の藻類は、より原始的な原生生物に含まれることになりました。従って、藻類は植物のなかまに分類しておりません。

 五界説の原生生物界は、植物、動物、菌の祖先を含む多様な群となり、当然のことながら多くの系統を含む多系統群で、この点では「単系統」を重視するという方針とはあわないことになります。進化には枝分かれと段階とがあり、枝分かれだけで忠実に分類すると実際の社会ではとても使いにくい分類体系になってしまいます。旧来の広義の植物が今も使われているのは、このような大まかな理解が結構便利だからです。五界説は現在の社会で、科学と実用性の両方から判断して教科書で教えるべき最良の分類ということになります。

 なお、高等学校生物教科書では、さらに進んで3ドメインという生物の大分類をまず行い、そこからドメインごとの分類を行うという体系に替わっています。この場合でも、真核生物ドメインの分類はこれまでの五界説の分類に近いものになっています。

Q5

「変温動物」と「恒温動物」の扱いが変更されているのはなぜですか?

A.  動物の体温に関する内容は、中学校学習指導要領(平成29年告示)の範囲外の内容となったため、令和3年度用中学校理科教科書から、発展的な学習として扱うようにしました。そのため、「変温動物」と「恒温動物」は、従来のように、重要語句として扱わないようにしています。

2学年

Q1

植物の光合成の実験で、オオカナダモとBTB溶液を使った実験をとりあげていないのはなぜですか?

A.  以前は植物の光合成の実験にオオカナダモとBTB溶液を使ったものもとりあげていました。しかし、この実験については次のような可能性が考えられます。

 「光合成によって発生した酸素の泡の中に、水中の二酸化炭素がとりこまれて、一緒になって水から出ていく可能性がある。それによって水中の二酸化炭素が減少し、BTB溶液の色が変化するのではないか。」

 つまり、水中の二酸化炭素が減少する原因には、植物の光合成以外の可能性もあるということです。
 そのような背景から、この実験をとりあげていません。

Q2

植物の光合成や呼吸の実験で、BTB溶液を使わずに石灰水を使うのはなぜですか?

A.  おそらくBTB溶液でも、二酸化炭素の発生や二酸化炭素量の減少を確認できます。ただし、BTB溶液は酸・アルカリ指示薬であり、二酸化炭素の有無や増減を見るための試薬ではありません。ですので、この実験では石灰水を使用しております。

 また、石灰水はBTB溶液のような色の調整が不要ですし、小学校でも使用した経験がある試薬ですので扱いやすいという点も、この実験で石灰水を使用する理由の1つです。

 なお、実験の際には、アルカリ性水溶液である石灰水が目に入らないように保護眼鏡を着用し、安全面にご配慮ください。

Q3

「デンプンが分解されると糖ができる」という表現をしないのはなぜですか?

A.  文部科学省からの検定意見により、平成24年度用教科書から、デンプンも糖のひとつとして扱うことになりました。このため、「デンプンが分解されて糖ができる」という表現では、デンプンが糖ではないかのような誤解を招く恐れがあります。教科書では、「デンプンはより小さな分子(麦芽糖など)に分解された」や、「デンプンは、最終的にブドウ糖に分解される」のような表現を用いています。
※麦芽糖とは、ブドウ糖2分子が結合した二糖類。

Q4

脂肪が消化されてできる分解産物は、「脂肪酸とモノグリセリド」と教科書に書かれています。以前は「脂肪酸とグリセリン」だったように思います。「モノグリセリド」と「グリセリン」の違いは何ですか?

A.  文部科学省からの検定意見により、平成24年度用教科書から、「脂肪は脂肪酸とモノグリセリドに分解される」となりました。
 モノグリセリド(別名:モノアシルグリセロール)は、グリセリン1分子に脂肪酸1分子がくっついた状態のものになります。つまり、モノグリセリドとグリセリンの違いは、脂肪酸1分子の有無です。
 今までの教科書では、モノグリセリドは、モノアシルグリセロールリパーゼによって、グリセリンと脂肪酸までさらに分解が進むという考えでしたが、近年の研究により、そこまで反応が進むことはないことがわかってきています。小腸粘膜では、グリセリンまで分解されるより先に、脂肪が再合成されてしまうようです。

 脂肪(別名:トリグリセリド、トリアシルグリセロール)は、グリセリン1分子に脂肪酸3分子がくっついた形状をしています。脂肪は消化の際に、2種類のリパーゼによって分解されます。
 まず、トリアシルグリセロールリパーゼによって、脂肪(別名:トリグリセリド、トリアシルグリセロール)は、ジグリセリド1分子と脂肪酸1分子に分解されます。
 さらに、ジアシルグリセロールリパーゼによって、ジグリセリドは、モノグリセリド1分子と脂肪酸1分子に分解されます。

図
Q5

「じゅうもう」は「絨毛」と書くのではないのですか?

A.  教科書で使用します専門用語の表記は、原則として文部科学省の『学術用語集』にしたがっています。

 「じゅうもう」については、『学術用語集-動物学編-』にしたがって「柔毛」としています。また、『生物教育用語集』(日本動物学会/日本植物学会 編)でも同様に、「柔突起、絨毛ともいうが、教育用語としては、字数が少なく平明な柔毛に統一した。」となっています。

3学年

Q1

植物には、「成長」ではなく「生長」を使うのではありませんか?

A.  教科書で使用します専門用語の表記は、原則として文部科学省の『学術用語集』にしたがっています。

 「せいちょう」については、以前の『学術用語集-植物学編-』では「生長」、『学術用語集-動物学編-』では「成長」と記載してありましたが、改訂を経て、現在の『学術用語集』ではどちらも「成長」に統一されています。(ちなみに、どちらも英語の「growth」に対応した用語になっています。)

 一般の辞書では、現在も「生長」と「成長」を使い分けているものも多いですが、教科書では、現在の『学術用語集』にしたがって、どちらも「成長」としています。

Q2

発生の学習で、「卵」という用語がでてきますが、「卵」と「卵子」はどちらが正しいのですか?

A.  教科書で使用します専門用語の表記は、原則として文部科学省の『学術用語集』にしたがっています。

 文部科学省の『学術用語集-動物学編-』と『学術用語集-遺伝学編-』では、すべて「卵〔子〕」と記載されています。
 また、『生物教育用語集』(日本動物学会/日本植物学会 編)でも、「成熟卵を卵子ともいうが……教育用語としては卵子は用いず卵に統一する」となっています。
 上記のことから、啓林館中学校理科教科書では「卵」を用いています。
 ただし、「卵」と「卵子」で、どちらが正しいということはありません。医学や畜産学では、「卵子」を用いることが多いようです。

Q3

「優性形質」と「劣性形質」は、いつから「顕性形質」と「潜性形質」に変わったのですか?

A.  令和3年度用中学校理科教科書より、遺伝の用語「優性形質」と「劣性形質」を、それぞれ「顕性形質」と「潜性形質」に変更し、原則、これらの表記を用いる事となりました。一方で、「優性形質」と「劣性形質」は、長らく中学校現場に浸透してきた用語でもあるので、別名として紹介しております。
 従来の「優性形質」と「劣性形質」という表現は、遺伝的に「優れている」・「劣っている」と誤解を招く恐れがあると長年指摘されておりました。これらの経緯より、2017年に遺伝学会が「顕性・潜性」への変更を提唱し、2019年には、日本学術会議の報告『高等学校の生物教育における重要用語の選定について(改訂)』より、「顕性・潜性」を見出し語として扱うことが提言されています。
 教科書では、「優性形質」と「劣性形質」の本来の意味についても、これまで同様、学習者が誤解しないように丁寧な説明を記載するよう努めています。

Q4

哺乳類は、爬虫類から進化したのではないのですか?

A.  文部科学省からの検定意見により、平成24年度用教科書から、哺乳類は爬虫類から進化したと記述しておりません。
 今までの教科書では、哺乳類は爬虫類から進化したと説明していました。しかし近年の研究の成果から、哺乳類と爬虫類は、別物であるという考えが主流となっています。
 現在では、両生類から羊膜類(羊膜と卵殻をもつ四肢動物)が進化し、そのときに双弓類と単弓類が進化したと考えられています。
 双弓類は頭骨の左右に2つずつ、双弓型側頭窓という穴をもち、『爬虫類と鳥類の共通の祖先とそのすべての子孫を含む単系統群。(生物学辞典 東京化学同人 2010)』と定義されています。
 単弓類は頭骨の左右に1つずつ、単弓型側頭窓という穴をもち、『すべての哺乳類の共通の祖先とそのすべての子孫を含む単系統群。かつてはディメトロドンやキノドン類などを哺乳類型爬虫類とよんでいた。しかし、単弓類と爬虫類が石炭紀から独立した進化をしていたことが明らかになるにつれ、単弓類の一部を爬虫類の一部のような名前でよぶのは適切ではないと考えられるようになっている。そのため、かつての哺乳類型爬虫類(哺乳類ではない)は単弓類と称するのが一般的になりつつある。(生物学辞典 東京化学同人 2010)』と定義されています。
 また、『単弓類はペルム紀には大型の草食者や肉食者に進化し、その時代には支配的な四肢類であった。しかし、ペルム紀末から三畳紀はじめの大絶滅の時代に激減し、三畳紀(2億5100万~2億年前)にはその多様性は減少した。その後、哺乳類様の単弓類が2億年前の三畳紀末期に出現した。(中略)最初の真の哺乳類はジュラ紀(2億~1億4500万年前)に出現し、いくつもの系統に分化したが、その多くは短命だった。(キャンベル生物学 丸善 2013)』とあるように、単弓類の進化の道のりも、平坦ではなかったようです。

図

 以上のことから、哺乳類は、両生類から進化した単弓類(爬虫類とは別物)から進化したと考えられています。

地球

1学年

Q1

「雲仙普賢岳」は、「平成新山」に変わったのですか?

A.  まず、雲仙岳は普賢岳、国見岳、妙見岳、野岳、九千部岳などを有する山の総称で、気象庁などでは成層火山に区分されています。平成新山は、普賢岳の山体における1990年からの火山活動で形成された溶岩ドームで、雲仙岳の最高峰になります。気象庁や国土地理院などの表記に準じて、雲仙岳の最高峰の溶岩ドームを指し示すときは、「平成新山」と表記することが適切と思われます。

Q2

「三原山」は傾斜がゆるやかな形の火山ではなく、円すいの形の火山なのですか?

A.  「三原山(伊豆大島)」は、割れ目噴火や山体の形状などから、従来、マウナロア(ハワイ)などと同じ傾斜がゆるやかな形の火山に区分しておりましたが、気象庁や理科年表では、その成因などから、「三原山(伊豆大島)」は成層火山(円すいの形の火山)に区分されております。

Q3

火成岩での岩石名は、ひらがな交じりの漢字で表記されているのに、鉱物名はカタカナ表記されているのは、なぜですか?

A.  教科書で使用します専門用語の表記は、原則として文部科学省(旧文部省)の『学術用語集』にしたがっています。
 火成岩の6種類の岩石名は、学術用語集では、ひらがな交じりの漢字で表記されており、教科書もそれに準じております。一方、鉱物名は、学術用語集では「角閃石・カクセン石」のように、漢字表記とカタカナ(+漢字)表記の両方が、併記されています。したがって、鉱物名に関しては、漢字表記とカタカナ(+漢字)表記のどちらの表記を選択しても、問題はありません。
 啓林館の中学校理科では、1年生で初めて、合計12種類の岩石名や鉱物名に触れる場面において、岩石名と鉱物名を混同する恐れがあるという発達段階を考慮し、岩石名(ひらがな交じりの漢字表記)と一目で区別しやすい、カタカナ(+漢字)表記の鉱物名の表記を用いております。

Q4

火成岩の分類の図(教科書1年p.96~97図39)では、6種類の岩石の左右の並びが、以前の教科書と異なっているのはなぜですか?

A.  平成9年度用の教科書では、流紋岩や花こう岩のような白っぽい岩石を左側に、玄武岩や斑れい岩のような黒っぽい岩石を右側に置いており、地学の専門書などと並びが逆になっているという指摘を受けていました。地学の専門書などでも、必ずしも統一されていない状況ですが、火成岩の多様性を説明する上で重要な「マグマの分化作用」をもとに、近年はSiO2の量が少ないものを左側に、多いものを右側に、つまり黒っぽいものを左側に置くことが多いようです。そのため、平成18年度用以降の教科書では、黒っぽいもの(SiO2の量が少ないもの)を左側に置いて並べることで統一しております。

Q5

「地質時代」が「地質年代」に変更されているのはなぜですか?

A.  「地質時代」と「地質年代」は、「地質時代」は地球誕生から歴史時代以前までの過去全体、「地質年代」はそれを細かく分けた年代区分といった意味で使い分けが行われていることもありますが、ほぼ同じ意味で使用されていることも少なくありません。同じ意味の場合、「地質時代」よりも、「地質年代」と呼ばれることのほうが、近年は多いようです。その背景には、地層の相対的な位置関係からの時代の推定よりも、放射年代測定などによる絶対的な年代の測定や調査、研究が盛んになってきたことなどがあると考えられます。
 また、中学校理科教科書では、全社的に「地質時代」から「地質年代」へと変わっており、学習指導要領でも「地質年代」と記述されていることを受けて、平成28年度用の教科書より「地質年代」の表記に改訂しております。

Q6

侵食の「侵」の字が「浸」でないのはなぜですか?

A.  教科書で使用します専門用語の表記は、原則として文部科学省(旧文部省)の『学術用語集』にしたがっています。
 「しんしょく」については、『学術用語集-地学編-』において、昭和59年度発行のものから、それまで使われていた「浸食」が「侵食」に変わり、これに合わせて、教科書も平成元年度用から「侵食」に変更しております。この変更は、中学校・高等学校のすべての社で行われています。ちなみに、『学術用語集-地理学編-』では昭和56年のものから「侵食」となっています。また、学習指導要領解説書(平成20年9月)も「侵食」を用いています。
 『学術用語集』での「侵食」への変更理由につきましては、当時の文部省に問い合わせを行ったところ、「川が土地を削り取るというはたらきを重視して、侵(おかす)にしたほうがよい」との専門家の意見によるもので、「浸」には「ひたす・しみこむ」という意味もあるために、「削り取る」といった意味合いが薄いという考えだと聞いております。しかしながら、国語辞典や一般の出版物では、現在でも、以前からの表記である「浸食」がよく使用されていると思います。

2学年

Q1

揚子江気団の表記がないのはなぜですか?

A.  以前、揚子江気団と呼ばれていたものは、気団の定義となる「移動しない、または、移動しにくい停滞性の大規模な高気圧」といったものに該当しないことから、現在の気象学では日本付近の気団は、シベリア気団、オホーツク海気団、小笠原気団の3つとされています。

3学年

Q1

教科書3年p.51の観察1、p.52の図2の記録例とp.52の図2の写真とで、黒点の移動方向(左右)が異なっているのはなぜですか?

A.  望遠鏡を使った3年p.51の観察1では、まず、対物レンズに入った光は、対物レンズによって一度実像になって、接眼レンズの所で上下左右反転して見えます。さらに接眼レンズから離れた投影板に映る像は、接眼レンズによって、もう一度実像として映し出されたもので、2回上下左右反転しているため、投影板の裏側から見ると、肉眼で見た向きと同じになります。これを、投影板の表側(内側)から見ると、左右だけが反転して見えることになり、上が北、下が南、左が西、右が東になります(下図参照)。

図

 一方、3年p.52の図2の写真では、空に見たまま太陽の向きで掲載しているため、上が北、下が南、左が東、右が西になるため、東西の向きがp.51の観察1の記録例とは、左右逆になります。

物質

1学年

Q1

教科書に掲載されている融点や沸点などのデータの出典を教えてください。

A.  物質の性質などのデータは、おもに毎年刊行されている『理科年表』(丸善、国立天文台編)をもとにしています。『理科年表』にない場合は、『理化学辞典(第5版)』(岩波書店、1998)、『化学便覧(第5版)』(丸善、日本化学会編、2004)などをもとにしています。

Q2

溶質が水にとけていく実験(教科書1年p.162~163図29)で、硫酸銅を用いるのはなぜですか?

A.  水に溶解するようすを見せる上で、どのような物質を選択するかの条件として、重要と考えられる順に
 (1)呈色し溶解の観察が可能な物質であること
 (2)純物質(純粋な物質)であること
 (3)分子性物質(電荷をもたない物質)であること
が挙げられます。ただし、中学校で扱う物質の中で、(1)~(3)の全ての条件を満たすような物質はありません。
 そこで、中学校で扱う物質の中で、上記の条件のうち(1)(2)の条件を満たし、早く溶解する硫酸銅を用いることにしました(コーヒーシュガーは(1)の条件を満たしますが、(2)の条件を満たさないため、避けました)。
 (3)に関しては、硫酸銅は分子性物質ではなく、イオン性物質(電解質)です。硫酸銅の青色は銅イオン(正しくは銅の錯イオン[Cu(H2O)4]2+)に由来するもので、結晶中でも、溶液中でも同じ構造をしています。ただし、1年生の段階では粒子概念を学習し始めたところであり、イオンの概念を学習しておりませんので、銅イオンが拡散していることが、「硫酸銅の粒子が拡散している」という生徒の認識に影響を与えることはないと考えられます。

Q3

教科書1年p.175の発展で、「液体が気体になる変化」を「蒸発」と表記してありますが、「蒸発」ではなく「気化」ではないのですか。

A.  教科書で使用する用語の表記は、原則として文部科学省(旧文部省)が発行している『学術用語集化学編』を参考にしております。
 同書では、液体が気体になる変化について「蒸発」という用語を掲載しており「気化」という用語は記述がありません。
 また、平成6年度版高等学校化学ⅠBの教科書検定において、それまで「蒸発(気化)」と併記していた記述に検定意見がつき、以降、弊社教科書の物理・化学分野においては同様の内容について、単に「蒸発」と記述しております。
 一部の辞典では、「蒸発」と「気化」について、広義に同じ位置づけで記述しているものもありますが、「気化」については液相(または固相)から気相へと相転移する現象を差し、「蒸発」と「昇華」を区別しておりません(それらの総称として「気化」と定義している記述が多いです)。
 このような理由から、教科書では「蒸発」という用語を用いております。

2学年

Q1

金属と結びつく酸素の質量の実験(教科書2年p.196)で、酸化銅、酸化マグネシウムの質量が理論値に近い値になりません。よいデータを得るには、どのようにすればよいですか?

A. <銅と酸素の場合>
 使用する銅粉は、できるだけ細かい目のもの(350メッシュくらい)で開封後間もないものがよいです。また、銅粉表面に有機物が付着していたり、古いものではすでに表面が酸化されていたりします。ご使用前に6 mol/L(18%)くらいの塩酸で洗う処理を加えることで、実験の精度はかなり上がります(処理はドラフト内で行ってください)。このほか、加熱時にかき混ぜる操作が入っていますので、かき混ぜ棒に付着してしまう銅粉にはご注意ください。

<マグネシウムと酸素の場合>
 考えられる要因はいくつかあります。

  1. (1)加熱時に高温になり、一部が気化し煙となって逃げてしまう。
  2. (2)金あみでふたをしますが、それによる酸素不足で、窒化マグネシウムができてしまう。

 (1)に関しては、目の細かいの金あみでふたをすることである程度解消できますが、同時に(2)の問題が浮上します。
 (2)に関しては、実験後のステンレス皿を水で洗うときにアンモニア臭がすると、窒化マグネシウムが生成していたと考えられます。これを防ぐためには、最初から1~2回の加熱を経て、質量があまり変わらなくなり、煙も出なくなった後、次の加熱から金あみをはずして空気とよく接する状態で加熱すると、生成していた窒化マグネシウムは酸化マグネシウムまで反応が進みます。

(ご注意)この実験では、加熱時の煙が目に入ったり、煙を吸い込んだりしないように、また、後片づけの洗浄時にも水と反応してアルカリ性になりますので、必ず保護眼鏡を着用させるようご指導をお願いいたします。

Q2

「元素」という用語が使われるようになったのはなぜですか?

A.  以前の教科書では、「原子」という用語を用いて、「原子の種類」や「原子の記号」としていましたが、『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編』では、“「元素」や「元素記号」について触れる”という趣旨に変更されたことから、令和3年度用中学校理科教科書より、「原子の種類」を「元素」、「原子の記号」を「元素記号」として表記を変更しております。

Q3

「化合」という用語が使われなくなったのはなぜですか?

A.  『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編』では、「化合」という表現が用いられなくなったことと、日本化学会からの提言をうけ、令和3年度用中学校理科教科書より、「化合」という用語は用いず、「(金属が酸素や硫黄が)結びつく」という表現に変更しております。

※ 日本化学会 「高等学校化学で用いる用語に関する提案(2)への反応」
https://www.chemistry.or.jp/news/information/2-4.html

3学年

Q1

「希ガス」から「貴ガス」に変わったのはなぜですか?

A.  令和3年度用中学校理科教科書より、周期表の第18族の元素群は「希ガス」から「貴ガス」へと表記を変更し、合わせて注釈として「希ガスともよばれていた。」を併記しています(教科書3年p.119発展)。
 貴ガス原子は、19世紀末頃に続々と発見されましたが、当初は「発見しにくい(希な)」の意味で「希ガス」とよばれていました。しかし、その後、発見しにくいのは、他の元素と結びつきにくいからだとわかり、現在では「高貴な」という意味で「貴ガス」とよばれることが多くなっています。

Q2

中和の実験(教科書3年p.153)で、指示薬としてBTB溶液ではなくフェノールフタレイン溶液を用いているのはなぜですか?

A.  BTB溶液は、BTBの化学構造が中性時は不安定で、中和点の前後で連続的に色が変化し続けてしまうため、中和点を見つけにくい試薬です。一方、フェノールフタレイン溶液は中和点付近において水溶液一滴で一気に色が消える鋭敏な試薬であり、滴下をやめるタイミングが判断しやすい試薬であるといえます。
 例えば、教科書の実験のように、水酸化ナトリウム水溶液(強アルカリ)に塩酸(強酸)を加えていくと、中和点付近ではpH7を一気に飛び越えて酸性側に傾くため、BTB溶液では緑色を見ることなく一気に黄色まで進んでしまいがちです。また蒸発させる際に、その溶液に溶けていた二酸化炭素が先に蒸発してしまうことで、わずかながらアルカリ性に変化してしまい、残った結晶は青色に色づいてしまいます(フェノールフタレイン溶液は中和点で無色であり、二酸化炭素の蒸発により変色することはありません)。このような現象をBTB溶液の特徴とともに理解しながら、実験を進め中和を学習していくことは、中学生にとって難しいことであるといえます。
 以上の理由で、指示薬にはフェノールフタレイン溶液を用いています。

Q3

中和の実験(教科書3年p.153)で、水酸化ナトリウム水溶液に塩酸を加えているのはなぜですか?

A.  中和の実験において、こまごめピペットで水溶液を少しずつ滴下する操作は中学生にはやや難しく、アルカリ性の水溶液に酸性の水溶液を滴下するほうが、酸性の水溶液にアルカリ性の水溶液を滴下するよりも、アルカリ性の水溶液にふれる危険性がより少なく、安全であると考えられるからです。
 また、この中和反応では、操作上中和点を通り過ぎてしまうことが多いです。塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えていく場合、水酸化ナトリウムが過剰になり、水を蒸発させると水酸化ナトリウムと塩化ナトリウムの混晶になる可能性があります。一方、水酸化ナトリウム水溶液に塩酸を加える場合は、塩酸が過剰になった状態でも、塩化水素として加熱によって蒸発するため、塩化ナトリウムの純粋な結晶が得られます。
 以上の理由で、水酸化ナトリウム水溶液に塩酸を加える方法を採用しています。

Q4

「イオン式」という用語が使われなくなったのはなぜですか?

A.  『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編』では、「イオン式」という表現から「化学式」で表現されるようになったことから、令和3年度用中学校理科教科書より、「イオン式」という用語は用いず、「化学式」という表現に変更しております。

エネルギー

2学年

Q1

教科書の回路図では、導線がT字に交わるときに(教科書2年p.213図6(b)など)、黒丸がかかれています。問題集などには、導線をT字に接続するときに黒丸がかかれていないものもありますが、黒丸は必要なのですか?

A.  回路図を表すための電気用図記号は、日本工業規格(JIS)で定められています。その中に、導線をT字に接続する場合の電気用図記号として、黒丸がある図とない図の両方の記載があるため、どちらを使用しても間違いではありません。一方、導線を十字に接続する場合は、必ず黒丸が必要です。そのため、啓林館の教科書では、接続点には常に黒丸をかくという表し方で統一しています。

Q2

オームの法則の実験(教科書2年p.227)で結果をグラフに表すとき、横軸に電流、縦軸に電圧をとれば直線の傾きが電気抵抗を表すので、このほうがよいのではないですか?

A.  確かに数学的にはそのとおりですが、理科で実験結果をグラフに表すときには、横軸には変化させた量(実験者がコントロールした量)をとり、縦軸にはその結果変化した量をとるのが基本ですので、教科書では横軸に電圧、縦軸に電流をとっています。この場合、グラフの傾きが大きいほど電流が流れやすいということになり、グラフの傾きは電気伝導度を表すことになります。
 いったんこのようなグラフを作成し、横軸と縦軸を入れ替えたグラフに変換させて、直線の傾きの意味を考えさせたうえで電気抵抗と関連づける指導法もあると思います。

3学年

Q1

教科書3年p.228にある「図74 いろいろな発電方法」で、水力発電の水車・発電機や火力発電のタービン・発電機のところに「運動エネルギー」がないのはなぜですか?

A.  発電機は、水力発電の場合は水の力、火力発電や原子力発電の場合は水蒸気の力で、水車やタービンに直結している発電機を回転させ、その仕事によって電気を発生しています。このとき、水力発電における水の位置エネルギーや火力発電・原子力発電における水蒸気の熱エネルギーが、すべていったん水や水蒸気の流体としての運動エネルギーに変換され、さらに水車・発電機やタービン・発電機の運動エネルギーに変換されて、それが電気エネルギーに変わるわけではありません。
 例えば水力発電の場合、水車・発電機にぶつかる直前であっても、水の位置エネルギーの大部分は水の運動エネルギーに変わっているわけではなく、水圧が水車の羽を押す力によって発電機を回転させます。また、水車と発電機は、定常運転中は一定の速さで回転しているので、水車や発電機の回転する運動エネルギーは増加・減少することなく、いったん運動エネルギーに変換されているということにはならないのです。

環境

3学年

Q1

「生産者」「消費者」「分解者」の定義が、以前の教科書と異なっていますが?

A.  文部科学省の検定意見により、平成24年度用の教科書から、「生産者」「消費者」「分解者」の定義が、以下のように変更になっております。

○平成23年度用までの教科書での定義
生産者:光合成を行う植物。
消費者:ほかの生物を食べて栄養分を得る動物。ただし、菌類・細菌類のような有機物を無機物にする最終分解者は除く。
分解者:有機物を無機物に分解する菌類や細菌類(最終分解者)。

●平成24年度用以降の教科書での定義
生産者:光合成によって自分で栄養分をつくる生物。つまり独立栄養を営む生物。五界説において原生生物界に属する緑藻類など植物ではない生物も含む。
消費者:ほかの生物から栄養分を得る生物。つまり従属栄養を営む生物。
分解者:消費者のなかで、生物の遺骸やふんなどから栄養分を得る生物。

 それぞれ、生物の役割(はたらき)を示す言葉の定義に変更になっているため、例えば、アオカビは消費者であり、分解者でもあることになります。

Q2

アオミドロやクンショウモは藻類なのに、「植物性プランクトン」ではなく、「植物プランクトン」とされているのはなぜですか。

A.  教科書で使用します専門用語の表記は、原則として文部科学省(旧文部省)の『学術用語集』にしたがっています。
「学術用語集-植物学編-」では、「植物プランクトン」と記載されているため、このような表記としています。

Q3

PETは「ポリエチレンテレフタラート」(教科書3年p.264)となっていますが、「ポリエチレンテレフタレート」ではないですか?

A.  以前は、『化学大辞典』(東京化学同人、1989)などをもとに「ポリエチレンテレフタレート」という名称にしていましたが、より新しい文献である『理化学辞典(第5版)』(岩波書店、1998)、『化合物命名法』(東京化学同人、日本化学会化合物命名法専門委員会編、2011)にあわせて、「ポリエチレンテレフタラート」を用いています。なお、『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編』(文部科学省、2018)でも「ポリエチレンテレフタラート」と表記されています。

Q4

「外来種」が「外来生物」という表記に変わったのはなぜですか?

A.  令和3年度中学校理科教科書から、『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編』の表記が変更されたことと、分類学上の“種”に限定されたかのような表現であることから、「外来種」から「外来生物」という用語を用いることとなりました。
 岩波生物学辞典(岩波書店 2013)や、生物学辞典(東京化学同人 2010)では、「外来種」と「外来生物」は同義であるとしています。
 一方で、外来種(外来生物)は、その生物がどこから来たのかという起源によって、国外外来種と国内外来種に区分されますが、法律(外来生物法)においては、「外来生物」という用語は、国外外来種のみを指す用語として使用されています。

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