このたび,理化学研究所の実験チームを率いる森田浩介博士(九州大学)らが合成に成功した113番元素が国際的に新元素として認定されました。
2016年6月,新元素の名称案「ニホニウムNh」が発表され,その後5ヶ月間のパブリックレビュー後,日本時間11月30日午後5時(米国東部時間午前3時)に国際純正・応用連合(IUPAC)は,113番元素の元素名と名称案をグループの提案通り正式決定しました。これにより,ついに日本発,アジア初の新元素が周期表に掲載されることが決定しました。
平成28年度から使用されている中学校理科教科書「未来へひろがるサイエンス」では,113番元素について大きく特集を組み,森田博士のインタビューも掲載しています(2年p.180-181)。1908年に小川正孝博士が発表しつつ幻となった元素「ニッポニウム」の話題や,森田博士自らが設計した装置のようす,400兆回におよぶ原子核同士の衝突実験のエピソードなどを紹介しています。
実は教科書を制作している2014年の時点では,ロシアとアメリカの共同研究グループも113番元素の発見を主張しており,理化学研究所の森田グループが命名権を獲得することは確定していませんでした。いざこうして,長年の悲願が達成され,周期表に「日本」の名を由来とした元素の名が刻まれることを編集委員会一同たいへん喜ばしく思っております。
元素はあらゆる物質の構成要素です。新しい元素の存在を実証した森田博士らの偉業は,未来の科学,ひいては科学技術と社会の発展に大きく貢献する成果です。教科書の周期表に掲載される「ニホニウムNh」の文字に,日本の中学生が誇りを感じ,より一層科学へ興味を抱いてくれることを編集委員会も祈っております。
最後になりましたが,113番元素「ニホニウムNh」の教科書掲載にあたり,さまざまなご協力を賜りました森田博士をはじめ理化学研究所の方々に,周期表掲載のお祝いと併せまして心からの御礼を申し上げます。
【リンク】
●理化学研究所 113番元素特設サイト http://www.nishina.riken.jp/113/
2016年12月吉日
啓林館 中学校理科編集委員会