平成26年3月に教職を退職し,2年が経とうとしています。現場の忙しさから解放された安堵感を感じる反面,数学の授業ができない寂しさのようなものを時々感じることがあります。今は細々と個人塾を開設しながら,数学を楽しんでいます。
そんなあるとき,中学3年生の相似の問題を考えていました。すると現場に34年いたのに,全く考えもしなかった図形の性質に気づきました。
今回はそれを紹介したいと思います。
しかし,その性質を「定理として知っている」とか,「すでに生徒に考えさせている」という方がいるかもしれません。そうであれば,「今頃何を言っているんだ」と一笑に付してください。もし初めて知ったというのなら,是非活用してみてください。
これを称して,「対角線3等分の定理」(命名:コマツイチロウ)
相似の学習がベースにあるので,中学3年生の相似の学習の後,特に中点連結定理の後でトピック的に提示してはどうでしょうか。
辺の長さや面積,そして作図に於いても有効な性質であると考えます。(例題後述)
性質としてはそれほど目を引くものではなく,証明もわりと簡単にできます。
中点連結定理に関する問題や相似に関する問題で活用している先生や生徒がいるかもしれません。しかし,それをあえて"定理"としてまとめてみました。
これが「対角線3等分の定理」です。
(証明例)相似の学習の後であれば,生徒でも容易に理解可能である。
①②③よりAR=RS=SCとなる。つまり,AR:RS:SC=1:1:1(終)
①②③よりAR:RS:SC=1:2:1
今回は長方形でサンプルを示しましたが,平行四辺形であれば成り立つことがわかります。
つまり,平行四辺形・長方形・ひし形・正方形に於いて成り立ちます。相似を利用するよりも容易に色々な問題が解決できるので,中学生に提示しても良いのではないでしょうか?
[その1]
(1) ピタゴラスの定理より AC=10cm
対角線3等分の定理よりAR=cm
(2) △DACの面積は 48÷2=24cm2
対角線3等分の定理より△DRS=24÷3=8cm2
(3) 五角形PBQSR=長方形-△APD-△DQC-△DRS
=48-12-12-8=16cm2
※この定理を知らなければ・・・・ちょっと大変かも。(@_@)
[その2]
(参考)この方法以外に,線分を3等分する方法をご存じですか?
重心を使いたいところですが,重心の学習はかなり前に削除されてしまいました。
あとは平行線と線分の比(相似)から描くこともできますが・・・。
[その3]
(1) △ARDと△CSDにおいて
AD=CD(正方形の1辺)・・・①
∠DAR=∠DCS(45°)・・・②
AR=CS(対角線3等分の定理より)・・・③
①②③より,2辺とその間の角が等しくなる
よって, △ARD≡△CSD (終)
※この定理を知らなければ・・・・ちょっと大変かも。
(2) ピタゴラスの定理より
よって,対角線3等分の定理より
※この定理を知らなければ・・・・。
(3) ※この問題には,対角線3等分の定理は直接関係ありません。
(4) △DPQを底面とする三角錐を考える。
面積比 4:9
[その4]
※ 対角線3等分の定理を使わずに考えると・・・。(補助線の利用)
△ASD∽△OSPから AS:SO=2:1・・・①
中点連結定理より QC=2XY・・・② よって,OY=4XY
つまり,OX=3XY・・・③
②③よりOT:TC=3:2・・・④
つまり,AS:ST:TC=10:14:6=5:7:3 (終)
結構,大変ですね・・・!!
※ 対角線3等分の定理を知っていると・・・。(補助線の利用)
対角線3等分の定理より AS:SO:OC=1:1:1 ・・・ ①
△DYQ∽△DOX・・・相似比3:2
よって,OX:YQ(QC)=2:3
つまり,OT:TC=2:3 ・・・②
両方とも,補助線の引き方に難しさはあるが,対角線3等分の定理を
用いる方が,考え方が容易ではないだろうか?