数学の学習場面において,問題解決に数学的な考え方を用いることができる力,すなわち,活用力を育てる必要があると考える。
活用力は,既習内容を用いて問題解決する際に発揮される。そして,数値を変更したような類似問題よりも,異なる場面で既習内容を用いるときに活用力がより発揮されると考える。さらに,「何をどのように用いているのか」など,問題解決の基となっている数学的な考え方を生徒に意識させることが活用力を育てるために必要であると考える。
そこで,解決方法の発想の着眼点を明確にする【発想の着眼点を明確にする場面】,解決方法の基となっている数学的な考え方を明確にする【数学的な考え方を明確にする場面】,さらに,明確になった数学的な考え方を活用する問題を提示し解決させる【数学的な考え方を活用する場面】を学習過程の中に位置付ける。なお,今回の実践では,活動の中に,どのような問題にどのような数学的な考え方が用いられたのかを記録する「活用図」を取り入れる。これらにより,活用力を育てる数学指導の実現を目指すことにした。
活用図は右図のような形式にした。
活用図を完成させた後に,解決方法の基となる数学的な考え方は同じであるが,場面が提示問題とは異なる活用問題を提示し,完成した活用図を確認しながら解決に取り組ませる。そうすることで,既習内容が様々な場面の問題解決に用いることができることを実感させる。
○事象の中から一次関数を見いだし,一次関数を用いて問題を解決することができる。
【発想の着眼点を明確にする場面】
【提示問題】
Aさんは家を出て,途中の店で買い物をしてから,おじさんの家に行きました。出発してからx分後の道のりをykmとして,xとyの関係をグラフに表すと右のようになりました。
店に着く前とあとでは,どちらが速かったでしょう。
≪生徒の解決方法≫
① | 店に着く前の速さ | ⇒ | 同じ速さになる。 | ||
店を出たあとの速さ | ⇒ | ||||
② | 店に着く前のグラフの傾きは で,出たあとのグラフの傾きも で同じになる。 | ||||
③ |
店に着く前の変化の割合を調べると 店を出たあとの変化の割合を調べると よって,同じになる。 |
【数学的な考え方を明確にする場面】
≪完成した活用図の例≫
【数学的な考え方を活用する場面】
T:活用図を確認してから次の問題を解こう。
【活用問題】
Aさんは家を出てから2500m離れた図書館まで1時間で行きました。途中,疲れたので公園で20分間休憩しました。家から公園までは分速50m,公園から図書館までは分速150mで歩きました。家から公園までの距離を求めなさい。
≪生徒の解決方法≫