単元:4章 図形の調べ方(2節 証明)
この小単元では,証明の必要性や意味を理解し,証明の形式的な手順について理解することがねらいである。しかし,生徒にとっては,以下の点が理解しにくい要因となっているように感じる。
以上の点に配慮し,できるだけ生徒の思考に沿うようにするために,授業展開を考えた。
【問題1】次のことがらが正しければ○を,正しくなければ×を記入せよ。
×の場合,それを成立させるための反例を挙げながら答え合わせをする。
*生徒が考えた例
T先生はN中学校の先生である。→ならば→ T先生は教師である。
僕は日本に住んでいる →ならば→ 僕は地球に住んでいる。 など
自分で例を作ることで,仮定と結論の関係や命題の真偽を考えやすくなる。
仮定と結論が入れかわっている2つのことがらがあるとき,一方を他方の逆という。
例:「しんじくんは愛媛県民である。 →ならば→ しんじくんは松山市民である。」
次のことがらは【問題1】の逆である。ことがらが正しければ○を,正しくなければ×を記入せよ。
×の場合,それを成立させるための反例を挙げながら答え合わせをする。
生徒の実生活に絡んだ例を取り上げることで,仮定から結論への流れがとらえやすくなり,証明の基本構造を理解しやすくなる。また,本来は「逆」については,5章で学習するが,ここで少し触れておくことは,仮定と結論の違いが明確になり,互いに逆の関係にある命題の違いを意識することができる。そのため,命題が真でも逆は真とは限らない点や反例についても理解しやすい。
角の大きさは自由に設定させる。これが後に記述した証明の一般性を示すことにつながる。
生徒に発問しても,習った作図だからと反応があまり返ってこない。そこで,
この線分とこの線分は長さが等しい,または等しいだろうというものや,この角とこの角は大きさが等しい,または等しいだろうというものをすべて出してみよう。
まだ証明の流れが分かっていないので,仮定,結論に関係なく,図で見て等しいだろうなというものを生徒は発表する。
では,今からこれらをグループ分けします。これらを「正しい!」と「正しい?」に分類してみよう。
グループごとに,右図のようなシートとカードを配布する。カードの色と図の中に示している角の印は同じ色にしてあるので,記号と角が対応できにくい生徒も色でどの場所かがすぐ分かるようになっている。カードを動かしながら左側「正しい!(すでに正しいと認められている)」と右側「正しい?(説明していくことで正しいと証明できる)」に分類する。
グループになって,カードを移動させながら,「こっちか?」「どっちだ?」と話し合いながらグループに分けていく。
何が仮定か分かっていないので,結論を左に置く班も出てくる。いきづまっている班には,声かけをする。
OA=OB,OC=OC,AC=BCはどの班も左に置くことができた。△AOC≡△BOCを左に置いている班が出ているので,全体で取り上げる。
「正しい?」の中でも順位があることに気付き,結局図のように流れていくことを確認する。図の中で正しいと思われることはたくさんあったが,実はその中で正しいと認められるのは,自分が作図をしたもののみであり,ここ以降は,これから説明されることだと気付く。
証明の流れが分かったところで,実際に証明を書いてみる。その後,仮定と結論に改めて触れ,仮定やすでに正しいと認められた根拠を使って結論が成り立つことを筋道立てて説明することを「証明」ということを説明し理解させる。また,授業のはじめに書いた図は,生徒それぞれ違っているが,証明の記述の内容は同じになることから,自分がかいた図は,証明のための代表の図となることについてもおさえる。
証明の書き方に慣れていない段階では,形式的な書き方をいきなり与えても戸惑いが起きる。そこで,証明の流れを自分で構築していけるように,また証明の流れを相談しながら共有できるようにした。