自然現象や社会現象を考察したり理解したりするためには,関数的な見方や考え方を必要とする場合が多い。そのための素養として,関数についての理解が必要であると考える。しかし,現実には,関数領域は,中学校数学の中で生徒が最も苦手とする内容にあげられる。そのため,生徒の興味や関心を引き,少しでも教材に対する抵抗感をなくすため,生徒の身のまわりにある内容を教材化したり,実験や観察を取り入れるなど導入教材を工夫する必要がある。この単元を学習することにより,私たちの身のまわりにある「ともなって変わる量」について考察し,変化の仕方の法則性を見抜くことで,将来(先)のことを予測できるという数学のよさを実感させたい。
携帯電話の3つのプランを時間と料金に着目し,それらの変化や対応を表や式,グラフを使って調べることを通して,関数の特徴を考察し,説明することができる。
学習活動と教師の働きかけ | 評価・留意点 |
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1.課題1提示
A先生は,携帯電話を買うことにしました。
どのプランを選べばいいのか悩んでいます。 |
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Aプラン:基本料金3000円 通話料金1分30円
Bプラン:基本料金4000円 通話料金1分20円 Cプラン:基本料金3500円 50分まで無料通話 50分過ぎると1分50円 |
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どのプランが一番お得でしょうか。
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・挙手によって,課題把握状況を確認する。 |
2.予想 | |
【予想される反応】
3.発表 挙手で確認し,数名に発表させる。 (実際) Cプランと答える生徒が多かった。 |
・自由に考えさせる。 ・選んだプランは何かを挙手で確認する。 ・何人かに指名し,理由を聞く。 |
4.課題2提示
あなたが店員なら,どのプランを勧めますか? |
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どんな調べ方があるだろうか?
【予想される反応】 (実際) どれくらい通話するのですか? という質問があったが,具体的なことは言わなかった。 |
・既習事項を思い出させ多様な方法で調べられることに気づかせる。 |
時間をχ分,料金をy円として,考えてみよう
5.個人での取り組み |
・表は全員に書かせたいので,対応表の作り方を簡単に説明してから考えさせる。 |
6.グループでの追求
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・役割分担をさせる。 |
<予想されるグループの反応>
① 表を書いて説明する。
Aプラン
Bプラン
Cプラン
(実際) すべてのグループが表を完成させていた。
100分で,全部のプランの料金が同じになること,長く話すとCプランは,高くなると理解できた生徒が多かった。
② グラフで説明する。
(実際)表を書いている班は,ほとんどグラフまで完成できていた。
表を書くことで,より長く(100分以上)通話をするのなら,Bプランが一番お得になると理解できていた。グラフを書くと変化の様子がわかりやすいという感想が多かった。
分(約16分)以内なら,Aプランがお得になるが,式化ができない班が多く,この数値を出せたのは1つの班だけだった。
③ 式を使って,説明する。
χ分通話したときの料金をy円とすると,次のような式ができる。
Aプラン y=30χ+3000
Bプラン y=20χ+4000
Cプラン y=50(χ-50)+3500(χ≧50)
☆ 例えば,200分通話したときは
Aプランの場合 料金は,30×200+3000=9000
Bプランの場合 料金は,20×200+4000=8000
Cプランの場合 料金は,50×150+3500=11000
(実際) 式を作って説明できた班は1つだけだった。式を作れた班は,
AプランとCプランが同じになる分を出すことができた。
7.発表 2つの班を紹介します。
(実際)
私たち,YK会社はBプランをお勧めします。理由は,A先生は彼女と毎日通話をすると思うので,100分以上話すと考えたからです。 私たち,中山筋肉コーポレーションはCプランをお勧めします。理由は,A先生は,まめに連絡を取らない人だと思うからです。 8.本時のまとめ ・この時間に学習したことを確認する。 9.自己評価 |
・発表の仕方を示す。 私たち○○社は○プランをおすすめします。 ・通話時間によって,得になるプランが違うことをおさえる。 |
身近な題材だったため,生徒達は取り組みやすかったように思われる。この授業を通して,表やグラフを用いて調べるよさを実感させられた。それと同時に式についての抵抗感をもっていることもわかったので,式の有用性,式を身近に感じさせる指導の工夫をしていきたい。1次関数のまとめとして,表やグラフ,式についての理解度をはかるために有効な題材ではないかと考える。