第8回 啓林館「教育実践賞」について

第8回 審査結果のお知らせ
教育実践大賞教育実践賞審査員特別賞審査委員会から
  第8回啓林館「教育実践賞」の募集につきましては,多数のご応募をいただきありがとうございました。
日頃の先生方の授業の工夫,ご苦労が感じられました。心から御礼申し上げます。
  ご応募いただきました「実践事例」は,審査委員の先生方による慎重な審査の結果,下記の実践が評価され入賞となりましたので,ご報告いたします(各入賞事例は順次掲載する予定です)。
  併せて,審査委員会の「審査を終えて」を掲載いたします。

教育実践大賞
 
部門 教科 タイトル(実践事例と審査委員会講評) 学校名 氏名
小学校 算数 倍概念を育む指導の工夫 東京都板橋区立
板橋第五小学校
福岡 勇人
東京都品川区立
延山小学校
宮本 恵美子
小学校 理科 教科の枠をこえた科学的な体験活動の支援・指導のあり方を求めて
〜児童が行う身近な川の水質調査活動を通して〜
茨城県美浦村立
大谷小学校
桑名 康夫
 
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教育実践賞
 
部門 教科 タイトル(実践事例と審査委員会講評) 学校名 氏名
中学校 数学 方針にもとづく証明指導のあり方
ー全国学力調査問題を数学の授業で扱った実践からー
信州大学教育学部附属
長野中学校
勝野 学
  理科 該当者なし    
 
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審査員特別賞
 
部門 教科 タイトル(実践事例と審査委員会講評) 学校名 氏名
小学校 算数 児童の思考のつながりに着目した文章問題(数量関係)への取り組み 大阪府東大阪市立
枚岡東小学校
神保 勇児
中学校 数学 生徒に数学の有用感を実感させる数学指導
〜実生活でおきている問題を数学で解決させる授業を通して〜
徳島県立
川島中学校
三橋 和博
高校 数学 “数学と生活との結びつき”を実感させる数学授業の創造 高知県立
安芸桜ヶ丘高校
島田 佳幸
中学校 理科 中国地方の火成岩類を用いた教材開発と実践 広島県広島市立
古田中学校
荒谷 涼
高校 理科 「身近な物質を教材としたカルシウム化合物の授業」 富山県立
富山高校
横田 淳一
高校 理科 体で感じる力のモーメントの導入 享栄学園
鈴鹿高校
佐野 哲也
 
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審査委員会から 「審査を終えて」
 
「審査を終えて」総評

 今回ご応募いただいた授業実践は,いずれも実践者の創意工夫と指導に対する熱い思いが込められたものばかりでした。新しい学習指導要領の理念や内容に即した実践,また,各種の調査結果などから浮き彫りとなった教育の課題に対応する実践の提案や報告がなされていました。受賞された方々には,研究の成果を今後の実践に生かしていただき,継続して追究を深めていただけるよう期待します。惜しくも今回,入賞されなかった方々につきましても,実践から得られた示唆を基盤として,有意義な実践を積み重ねていただけるよう期待します。
 審査の結果について,教科ごとの総評を以下簡単に述べさせていただきます。

■算数・数学
 小学校の実践では,身の回りの具体物を用いて児童が図形に親しめるような工夫を取り入れた実践,国語科など他教科と算数科との関連を重視した校内研究の取り組みなどが見られました。
 中学校の実践では,折り紙を用いて平方根の視覚的な理解を促す実践,生徒の知的好奇心を高めるための教材や学び合いを意識した実践などが見られました。
 高等学校の実践では,小中高の連携に関連した取り組み,教師が作成した授業テキスト,ICTを効果的に活用した実践などが見られました。

 小学校・中学校・高等学校のすべての実践において,実践者の指導技術に関する研鑽の成果がうかがえました。我が国の教師の指導力の高さは,教育の風土でもある授業研究と併せて諸外国から注目を集めています。こうした文化的側面を大切にしつつ,今後も優れた指導技術を広く共有していくことが,より良い教育を創造していく上で重要と言えます。
 また,具体物を提示したり,操作活動を取り入れたりした授業,日常生活との関連を中心に据えた授業など,児童・生徒が算数・数学の有用性を実感し,興味を持つことができるような工夫が,教材や授業の流れからうかがえました。これらの取り組みは,日常的な教材研究を基盤として実現するものであり,一方で,児童・生徒の実態把握がなされてこそ成果を得られるものです。
 研究方法に関しては,指導によって児童・生徒の発言やノートの記述がどのように変化したのかを質的に分析したり,アンケート調査や小テストの結果をもとに変化や特徴を量的に分析したり,様々な手法が取り入れられていました。実践記録には,授業中の発言の記録や板書の記録,ノートに書かれた感想などが効果的にまとめられていました。

■生活・理科
 生活科の授業実践は1件にとどまりましたが,小学校理科では,実験観察の創意工夫を初め、児童生徒が主体的に取り組む理科授業の実践例や教科の枠を越えた体験活動など,実感を伴った理解を大切にした実践例が多くありました。
 中学校理科では,探求心を育てる工夫や身近な地域教材を取り上げた教材開発も多く報告されています。
 高等学校では、身近な物質の教材開発、生徒の興味関心を引きつける授業展開などが見られました。いずれも,きめ細かく思考されて出てきた思慮深い実践例です。多くは、時間をかけて開発されたもの,大変な労力をかけて実践されてきたものでした。

 理科学習では,机上の勉強を越えて,実社会との関係にどう結びついているかを学ぶことも重要です。今回入選された論文には、教科の枠をこえて科学的な体験活動を地域の専門家に指導と助言を仰ぎながら身近な川の水質調査活動をしたものが選ばれました。これは,環境問題は重要な学習課題であると唱えるだけではなく,科学的にアプローチし,主体的な探求する力を身につけることの大切さが評価されたものと思われます。その他,理科教育における科学史を活用した授業案や,身近な物質であるカルシウムを多様な観点からとらえ,科学の神髄を理解させようと試みられた実践例がありました。また,力のモーメントの授業では,情動記憶に強く刺激する“アレ”と思わせるものを導入し,授業を活気あるものにしていこうとする工夫などがありましたが,いずれも明日からの授業で活用できる豊富なアイデアが評価されました。岩石学習では,抽象的に終わることがないようにするため,効果的な教材教具の工夫も見受けられました。
 今後とも,実践を伴った研究を蓄積していただきたいと思います。なお,入賞出来なかった応募論文いずれもレベルが高く,思慮深いアイデアが盛り込まれていました。今後のさらなる研究開発を期待しています。

以上

 
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