私の実践・私の工夫(算数)
データを活用する力の向上を目指して
グラフから何が言える?「折れ線グラフ」
4年
1.はじめに
本単元「グラフから何が言える?」は,算数科の「折れ線グラフ」と総合的な学習の時間の「地域のためにがんばる人を調べよう」との関連を図ることによって,本校が目指す資質・能力「課題を見つけ,追究する力」での整理・分析,考察する力の育成を目指している。また児童は,理科の単元「天気と1日の気温」で,折れ線グラフのかき方や読み取り方の学習もしており,「活用できる知識・技能」の育成も期待できる単元である。
「折れ線グラフ」は,折れ線グラフのかき方について知ること,折れ線グラフの線の傾きに着目して変化の特徴や傾向を調べることをねらいとしている。「地域のためにがんばる人を調べよう」は,「地域でがんばる人アピールビデオ」を作成することをゴールとした探究活動で,その過程で集めた資料を基にグラフを作成したり,複数のグラフを関連付けて読み取り,考察し表現につなげたりすることをねらいの1つとしている。
平成30年度の全国学力・学習状況調査では,「日常生活の事象を,グラフの特徴を基に,複数の観点で考察したり表現したりすることができるかどうかをみる」という趣旨のもと複数の情報を関連付けて読み取る問題が出題された。さらに,次期学習指導要領では,「データの活用」が領域とされる等,データを活用して,判断したり,結果について考察したりする力は,これからの社会の中で必要とされているといえる。
これらのことを踏まえると,折れ線グラフの学習ではグラフの特徴や傾向を調べることに留まらず,問題解決を行うための資料の一つとして折れ線グラフが活用できることを目指す必要があるといえるであろう。そこで,算数科では,問題解決のために複数のグラフを関連付けながらグラフから何が言えるかという視点で特徴や傾向を調べ,それを基に考察する学習活動を位置付ける。そして,算数科の学びを総合的な学習の時間での課題解決学習に活用させ,データを活用して整理・分析,考察する力を汎用的なものにしていきたいと考え本単元を設定した。
〇本質的な問い
様々な情報(資料等)を考察したり表現したりするにはどうすればよいか。
〇永続的な理解
目的に応じて表やグラフを用いて表し,それらを関連付けながら変化の特徴や傾向を調べることで,様々な情報を考察したり表現したりすることが可能となる。
2.指導のポイント
①課題意識をもたせ,資料の内容の理解を促すために,学習体験(総合的な学習の時間)との関連を図った資料を提示する。
②資料の見方や考え方の幅を広げるために,二つのグラフを関連付けて考えさせ,対話的な活動において自分の考えと友達の考えを比較する活動を仕組む。
③資料を問題解決のために活用する力にまで高めるために,資料の読み取りに終始することなく,自分ならどう考えるかという意思決定をさせる場の設定を行う。
3.指導の実際
第1時
折れ線グラフと棒グラフを比較し,それぞれの特徴を理解し,折れ線グラフを読む。
第1時では,総合的な学習の時間で聞き取りをした地域の方に頂いた資料(寄せ植え教室の参加者の推移の表)を棒グラフと折れ線グラフに表しそれぞれの特徴の比較をさせた。
第2時「折れ線グラフのみでの判断」
傾きが大きい折れ線グラフと傾きが小さい折れ線グラフを比較し,傾きと変わり方の大きさとの関係を理解する。
第2時は,「もし自分が,庄原焼きで地域の活性化を図られている○○さんに出店を薦めるならどちらの夏祭りですか。」という問いかけから授業をスタートした。自分達の住む市からの距離や夏祭りの内容は同じであると考えることを確認し,H26年からH29年までのA市とB市の夏祭りの人数の推移を折れ線グラフに表したものを示した。
第3時「折れ線グラフと棒グラフからの判断」
棒グラフと折れ線グラフを関連付けて変化の特徴や傾向を調べ,それを根拠に判断する。
第3時の導入では,もう一つの資料としてA市とB市の夏祭りの鉄板店の数を示した棒グラフを提示した。棒グラフから分かることを,部分的(最大値,最小値),全体的傾向の視点で確認した後,前時の折れ線グラフと棒グラフを重ねた複合グラフを提示した。「もう一つ資料が増えたことで,グラフから言えることは変わってくるのかな。」と問いかけ,折れ線グラフと棒グラフを関連付けて考えていくことを確認し本時のめあてへとつなげた。
第4時,第5時は,折れ線グラフのかき方を考え,折れ線グラフをかいていく学習を行った。
(省略)
4.実践の成果と課題
成果
〇ストーリー性のある単元の構成を行ったことにより,児童が毎時間の導入時において課題意識を明確にもつことができた。
〇お互いの考えを説明する中で,何となく思っていたことがより明確になったり,相手の考えを聞いてグラフの見方が広がったりする児童が多く見られた。また,相手を納得させるという視点を与えたことで,相手意識をもって筋道の通った説明をしようとする姿が見られた。
〇未知の事柄を推測して判断する場を設定したことで,根拠を明確にして筋道を立てて考えていこうとする学びが見られた。
課題
〇根拠として数値にこだわらせることが十分でなかったため,最終的な判断が曖昧なものになってしまった。
〇対話を仕組むにあたって,意見が違う児童同士をグループにするなどの工夫が必要であった。
5.おわりに
今回の実践は,目標を自校の目指す資質・能力の一つである「課題を見つけ,追究する力」とし,算数科として,課題解決のためにデータを活用して「推測」していく力の育成を目指したものである。内容としては,第3時に棒グラフと折れ線グラフの複合グラフを扱った。棒グラフ,折れ線グラフそれぞれの特徴が意識でき,さらに棒グラフの数量の大小と折れ線グラフの傾きの関連付けができるものを資料とした。方法としては,思考スキルとして比較,関連付けに重点をおき,対話的活動を通して,資料の見方や考え方について自己の考えを広げ,深めることを大切にした。今後も,データを活用して課題解決ができる児童の育成を目指し,更なる指導方法の工夫改善を行っていきたい。