私の実践・私の工夫(算数)
「表とグラフ」における資料の活用に関する指導の工夫
- 食育の指導の視点を取り入れて -
1.食育の指導との関連について
「食に関する指導の手引」や「学習指導要領」には,給食時間や学級活動だけでなく各教科においても食育に関する内容を取扱い,学校教育活動全体を通じて総合的に推進することが示されている。今回の報告は,第3学年「表とグラフ」の単元において,生活習慣のチェックカード(さわやかカード)の情報をもとにして表されたグラフの傾向や特徴をよみとり,自らの食生活を改善することの必要性に気付かせることをねらいとした実践例である。
2.授業で活用した資料について
本校では,子どもたちが生活のリズムを整え,朝ご飯をしっかり食べて「今日も頑張るぞ!」という気持ちが持てるように下のような「さわやかカード」を実施している。この「さわやかカード」から,約半数の子どもたちは朝食をとっているが,栄養のバランス(赤・緑・黄の栄養)がとれていない実態があることが分かった。そこで,児童の生活を映し出した資料であるさわやかカードを教材化することによって,算数科の指導内容の一つである資料の活用に関する指導をより充実させ,さらに自分たちの生活を見つめ直させたいと考えた。
3.授業の実際
(1) 単元の目標
身の回りにある事象について資料を分類・整理し,表にまとめることができる。また,棒グラフについて知る。
(2) 指導計画(全7時間)
- 第1次 表(1時間)
- 第2次 棒グラフ(4時間)
- 第3次 二次元表(1時間)
- 第4次 まとめ,発展(1時間)本時
(3) 本時の目標
自分たちの食生活についての情報をグラフ化することにより,グラフの傾向や特徴をよみとる。
(4) 食育の視点
よみとったグラフの傾向や特徴から考えられることを話合い,栄養のバランスのとれた食事をしようとする意欲を育てる。
(5) 本時の授業の流れ(T教師,C子ども)
朝食の栄養バランスのグラフについて予想する。
- T 赤・黄・緑がそろっている人と,そろっていない人の人数について棒グラフにしています。どっちの人数が多いと思う?そろっている方だと思う人?(挙手をさせて,自分の立場を決めさせる。)
そろっていないと思った人が多いみたいだね。じゃあ,まず,金曜日!見てみよう。(模造紙をめくって金曜日だけ見せる。) - C そろってる人の方が多い!
- C やったー。
- C 土曜日と日曜日が,まだある。
- T じゃあ,次は,土曜日。(全部めくってみせる)
- C え~。ない!
- C これじゃあ予想が当たったか分からん。
- T 今,Mくんが,「土曜日は,分かる」と言ったけど,どういうこと?
- C そろっている人の人数が12人だから「35-12=23」です。
- T Bさんが,どうしてこのような式を考えたのか想像ができますか?
- C Bさんは,全体の35人から分かっている12人を引いて,まだ分かっていない23人を出したのだと思います。
日曜日については,紙の小さな破片が残っていたという設定にした。
日曜日の棒グラフについても,分かっている数値をもとにして,棒グラフを完成させた。
グラフの傾向や特徴から判断したり,予測したりする。
- C 言いたいことがあります。
- T はい,Sさん,どうぞ。
- C 日曜日に赤・黄・緑がそろっていない人は,多分,遊びに行ったりするときに,早く出かけるから忙しくて食べられなかったんだと思います。
- C あっ!そうそう。そういうときある。
(多くの子どもたちの声) - C 土曜日と日曜日の休みの日には,そろっていない人が多いです。
- C 私は休みの日には,朝と昼が一緒になります。
- C みんなで35人だから,一方の人数が分かると,もう一方の人数も分かります。
グラフをよみとり,判断・予測したことを生活に生かそうとする。
- T 今日の朝ごはんはどうだったかな?
先生が今朝,食べてきたものは,これ。
(ヨーグルト・ごはん・納豆の3品を板書する。)
赤・黄・緑に分けてくれる? - T 先生はバランスよく食べるにはどうしたらよかった?
- C みかんを食べたらいいです。
- C 先生は朝,車で来ていて,時間もなくて忙しいから,みかんより野菜ジュースにすると車の中でも飲めると思います。
- T やさしいなあ。ありがとう。先生の朝の生活のことまで考えてくれたんだね。
- T ありがとう。先生も気をつけるよ。明日は,お休みの日。みんなはグラフのどっち側に入れるかな。
4.児童の反応(ワークシートへの記述)
- ○ 元通りになったグラフを見れば,日曜日は赤・黄・緑がそろっているのが少ないと分かる。
- ○ はじめは表がちぎれて分からなかったけど,クラスの人数と分かっている人数を基にすれば,分かりました。
- ○ 明日の朝からは,栄養のバランスを考えて食べるように注意したいです。
5.指導の成果と課題(○成果 ▲課題)
○ 全校で取り組んでいる「さわやかカード」の情報を教材化したことによって,子どもたちの生活から出てきた身近な資料であるために学習意欲が高まり,自らグラフの傾向や特徴をよみとろうとしていた。
▲ 「赤・黄・緑の栄養のバランスがそろっていない」というのは,どれが特にそろっていないのかを調べ,グラフ化するという学習も考えられる。そうした学習を行うことで,資料の活用に関する指導が充実し,算数の有用性を感じさせることができるのではないだろうか。ただし,プライバシーに配慮しながら学習を進めるべきであろう。
※ 本実践は,授業参観で行い,保護者への啓発もできた。
【参考文献】
『小学校学習指導要領』文部科学省
『食に関する指導の手引』文部科学省