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教師の方へ

私の実践・私の工夫(理科)

「電気で明かりをつけよう」
~電気を使ったおもちゃで遊ぶには~

3年

静岡県富士宮市立富丘小学校 遠藤 慎吾

1.はじめに

この「電気で明かりをつけよう」の単元について,「小学校学習指導要領 理科編」の3学年の内容には,次のように述べられている。

乾電池に豆電球などをつなぎ,電気を通すつなぎ方や電気を通す物を調べ,電気の回路についての考えをもつことができるようにする。

ア 電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があること。

イ 電気を通す物と通さない物があること。

この単元では,電気の通り道について興味・関心をもって追究する活動を通して,電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方,電気を通す物と通さない物を比較する能力を育てるとともに,それらについての理解を図り,電気の回路についての見方や考え方をもつことができるようにすることがねらいである。

また,「小学校学習指導要領 理科編」の3学年の内容の取り扱いには,次のように述べられている。

(1)内容の「A物質・エネルギー」の指導に当たっては,3種類以上のものづくりを行うものとする。

ものづくりは,学習して「習得」した内容を「活用」するということ等で,理科教育で重要である。お恥ずかしながら,私はいつも,ものづくりの時間を「学習キット」に頼ってきた。もちろんキットは素晴らしさがいっぱいある。短い時間で学習の復習→活用のプロセスになるように計画されているし,見栄えもかっこいい。しかし,当然のことながら全て同じような完成品になる。

今回の私の実践は,この「電気で明かりをつけよう」という単元で設定し,学習したことの確認や活用に電気のおもちゃを使ったり,子供たちがキットの一部(豆電球やエナメル線,電池ボックス)を使ってオリジナルな作品を作ったりしていく,というものである。

2.単元構想・授業展開について

教科書では,①見通し・単元導入,②明かりがつくとき,③電気を通すもの・通さないもの,④まとめ,という順番で単元が作られている。私はこの単元で「電流イライラ棒」を用いて実践に取り組んだ。なお,子供たちがものづくりするのは③と④である。

電流イライラ棒は,自分が持っている金属の棒を他の金属に触れないように進ませるという遊びである。3年生ではまず豆電球について学習するため,金属同士が触れた場合には豆電球を光らせるようにする。

見通し・単元導入

まず,子供たちと一緒にイライラ棒で遊んでみた。写真1のイライラ棒は,設置された1本の針金に棒(先端が洋灯吊)が触れないように進めていき,写真2のイライラ棒は,左右に張られた針金の間に棒(ボルト・ナット)が触れないように進めていくものである。子供たちはなるべく早いタイムでゴールを目指していたが,だんだん「どうして明かりがつくの?」「腕が疲れた!!休憩所を作りたい!」などの疑問や思いをもってきたため,「みんなが疑問に思っていることを勉強したり,休憩所の作り方を考えたりしていこう」と伝えた。

写真1 洋灯吊タイプのイライラ棒 ※写真1の拡大写真


写真2 ボルト・ナットタイプのイライラ棒


写真3 イライラ棒の回路図

実際に作ってみると,写真1のタイプが早くて安く作ることができた。時間は10分もあれば製作できる。子供たちも奥行きもある写真1の方がおもしろいという声の方が多かった。

全ての材料は近くの工務店で揃えることができ,費用は2つのタイプとも,木材を除けば千円はかからないくらいで製作できた。

回路自体は簡単なため,手軽に作れる。

電気を通すもの・通さないもの

豆電球と乾電池を「わ」のようにつなげば,豆電球に明かりつくことを学習し,次に子供たちは「イライラ棒に休憩所を作りたい」という思いがさらにふくらんできた。そこで,どんな物が電気を通すのか,または通さないのかを調べるために,全員で写真4の牛乳パックテスターを作った。

写真4 牛乳パックテスター 写真5 牛乳パックテスターの中身

子供たちは,自分で作ったテスターで楽しそうに電気を通す物や通さない物を調査した。そして,電気を通す物は金属であるという結論に至り,イライラ棒の途中にビニルテープを巻くという案で,休憩所を作った。

《牛乳パックテスターで使用した材料》

・牛乳パック・・前日の給食で自分が飲んだ牛乳パックを洗って乾かした物。

・乾電池・・・・キットとは別に学校で購入した物(予算の中に入っている)

・豆電球,電池ボックス,エナメル線・・キット付属

このように,牛乳パックテスターは学校にある物や配布されるキットの付属品等で簡単に作ることができる。

まとめ・活用

この単元のまとめ・ものづくりとして,子供たちは自分たちで電流イライラ棒を作った。うまく明かりが点かないときは,回路になっていない?豆電球がソケットから外れている?など,自分たちで原因を考えて作り上げていた。洋灯吊タイプのイライラ棒を製作したが,早い子では20分程で完成させた。その後は,みんなでオリジナルなイライラ棒で遊び,満面の笑みも見られた。

写真6 できた時の笑顔 写真7 完成したときの全体写真

3.終わりに

イライラ棒を単元の導入や単元を貫く道具として使ったことに,疑問をもつ方もいるだろう。イライラ棒は本来,豆電球が点かないように(金属同士を触れさせない)棒を進めていくからだ。しかし,先で述べたように,理科の「ものづくり」とは習得した内容を活用するために重要な教育だと位置づけられている。この実践から半年以上経ち,当時の子供も4年生に進級しているが,「理科の電気の授業,おもしろかったよ」と言ってきてくれる子もいる。これからも,子供の興味を引くようなものづくり・単元を作っていきたい。