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教師の方へ

授業実践記録(数学)

2点間の最短経路を調べよう
~実感的な理解をもとにする活動を通して~

兵庫県公立中学校 教諭

単元:1年生 平面図形

1.はじめに

すでに小学校でも扱われている部分もあるが,用語や記号も小学校より一歩進んで拡張され,抽象的になり,図形に対する概念も小学校のそれより広がってくる。そこで,既習事項がここでの学習の基礎となるので,その関連性を図りながら進めていくことが大切である。

既習の基本的な図形を対称性の観点からとらえ,見通しをもって作図したり,作図方法を対称性に着目して見直したりするなどの活動が大切である。また,その活動を通して,平面図形についての理解を深め,直観的な見方や考え方を養うとともに論理的な考察の基礎を培うことが大切である。

2.授業実践

(1)指導計画(16時間)

1節 直線図形と移動
1 直線と角 ・・・・・・・・・・・・・・3
2 図形の移動 ・・・・・・・・・・・・・3

2節 基本の作図
1 基本の作図 ・・・・・・・・・・・・・3

3節 円とおうぎ形
1 円とおうぎ形の性質 ・・・・・・・・・2
2 円とおうぎ形の計量 ・・・・・・・・・3
3 問題演習 ・・・・・・・・・・・・・・2

(2)授業の流れ

① 本時の目標

  • 平面図形の基本的な性質や対称な図形の特徴を用いて,最短経路を作図することができる。
  • 自分のことばで伝えることができる。

② 評価規準
【数学への関心・意欲・態度】

  • 図形の対称性に関心をもち,小学校で学んできた基本的な平面図形を,対称性の視点から考察しようとする。
  • 角の二等分線などの基本的な作図について関心をもち,基本的な作図方法を用いて目的に応じた図形をかこうとする。

【数学的な見方や考え方】

  • 観察,操作や実験を通して,小学校で学んできた基本的な平面図形を,対称性の視点から考察することができる。
  • 角の二等分線などの基本的な作図の方法を対称性に着目して調べることができる。
  • 作図した図形が条件に適するものであるか否かを振り返って考えることができる。

【数学的な表現・処理】

  • 線対称や点対称の図形を見つけたり,作ったりすることができる。
  • 定規やコンパスを使って,角の二等分線などの基本的な作図ができる。
  • 基本的な作図方法を用いて,目的に応じて図形をかくことができる。

【数量,図形などについての知識・理解】

  • 線対称や点対称の意味を理解している。
  • 線対称の軸や点対称の中心の意味を理解している。
  • 角の二等分線,線分の垂直二等分線,垂線などの基本的な作図の方法を理解している。
  • 円の半径と接線との関係,弧や弦の意味を理解している。

③学習過程

学 習 活 動 支 援 活 動
1 基本的な計算問題をする。 ・等式の性質や移項を用いて解けるか確認する。
2 既習事項の確認をする。
・2点間の距離 ・線対称
・最も長い(短い)理由が,既習事項の用語を使って説明ができるよう支援する。
3 本時の課題を知る。

【課題1】

草原の中を流れている川に橋をかけます。
A地点から川の反対側のB地点へ行く道のりを最も短くするには、どこに橋をかけたらよいでしょうか。
ただし、川幅は一定で、橋は川に垂直にかけるものとします。

①作図して,橋の位置を求める。 ②その理由を考える。
・川幅の長さだけ移動させて考えるよう助言する。 ・「2点間の距離」を用いることを確認する。 ・川幅の分だけ平行移動した点を直線で結ぶと最短距離になることに気づくよう支援する。
4 課題2を知る。
【課題2】
A地点と同じ側にある点Cへ大切な水を運ぶとき,あなたなら川のどこでくんでから,どこを通って点Cへ行きますか。水をくむ場所点Pをどこにすればいいでしょうか?
①作図をして,水をくむ場所点Pを決める。 ②その理由を考える。 ③班になり,意見交換をする。
・平行移動,対称移動などを使うよう助言する。 ・机間巡視をしながら,各自に対応し,支援する。 ・折れている線より直線の方が短いことに気づかせる。
5 本時のまとめと次時の予定を確認する。 ・本時の学習活動の評価を行い,次時の学習課題を確認する。

○生徒の反応

  • 課題1において,「川幅は一定で,橋は川に垂直にかけるもの」という条件を見落としていた生徒は,現実にはあり得ない幅の広い橋をかけるという発想の生徒もいた。
  • 2点を結ぶ道のりをイメージできた生徒はおおむね,「2点を結ぶ直線」を利用して求めることができていた。
  • 課題2において,実際にバケツに水を入れて運ぶとした場合のことを考えて,牛舎から一番近い川辺から水をくむ生徒が多くいた。一番近い道のりのことを考慮しなければ,水を入れたバケツを運ぶには,牛舎に近い方が重たくないし,こぼさなくていいので,牛舎から垂直なところにしたようだ。

3.授業実践を通して

○成果と課題

  • 身近な事柄を題材にすると,みんなの取り組み方や考えようとする姿勢が違ってくる。
  • 図を書いて考察することのよさを体感した生徒もいた。
  • 短い文章でも読解が出来にくい生徒が増えてきたように思えるので,題意を理解する力を付ける必要性を強く感じた。
  • 既習事項である「線対称な図形の性質」などをしっかり理解していないと思いつかない生徒もいたので,基礎基本の大切さを改めて確認できた。