小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
生活

繰り返し関わることで気付く,新たな支え
~1年生生活科 学校たんけん~

1年東広島市立西条小学校 岩崎 千尋・逢󠄀坂 瑠衣

1.はじめに

本校の2022年度1年生児童(4学級 142名)は,2022年5月に2年生と学校探検を行っている。さらに各学級でも探検を繰り返し行ってきた。これをきっかけに,休憩時間にも探検に出かける児童が増え,学校内には様々な施設があることに気付いている。また,行事を通して,第1学年の担任とも関わる機会が増え,顔と名前が一致している児童が多い。しかし,その他の先生については関わる機会が少なく,名前や何をしている人なのかを認識していない児童が多い。この学習を行うことで,自分たちの学校生活には,様々な人が関わっていることに気付かせ,自分も学校の一員であることを実感させたいと考えた。

2.単元について

(1)単元名 「学校たんけん」

(2)単元について

本単元は,学校探検を通してたくさんの人と出会い,関わりを繰り返していく中で,自分たちの学校生活はたくさんの人々に支えられていることを実感するとともに,友だちや先生と関わることの楽しさに気付き,学校での生活を豊かに広げようとする態度を育てることをねらいとしている。
学習においては,学校生活を支えている人々に関心をもち,その方々の存在や役割などの特徴,自分との関わりに気付くだけでなく,その方々が学校や自分たちのために働いてくれていることの意味を見出すことのできる学習活動を工夫することが重要である。

(3)単元目標

<知識及び技能の基礎>

学校生活を支えている人々や友だちのことがわかり,それらと自分との関わりに気付くことができる。

<思考力,判断力,表現力等の基礎>

学校生活を支えている人々や友だちとの関わりについて,自分なりに考えたり振り返ったりして,それを工夫して表現することができる。

<学びに向かう力,人間性等>

学校生活を支えている人々や友だちに関心をもち,楽しく学校生活を送ろうとしている。

3.本気で考え,学びを深める指導の手立て

<課題の設定:ここは どこ? あなたは だれ?>

前期で行った学校探検の復習として学校クイズを行い,施設については知っていることが増えた一方で,学校にいる先生については知らないことがたくさんあることに気付かせる。そこで,「学校の先生のひみつを調査しよう」という課題を設定し,これからの活動に意欲をもたせる。

<課題の追求:ぼくたちおしごとちょうさたい!>

初めに学校マップを用いてどこにどんな先生がいるのかを調べさせる。その中で,どんなことをしているのか分からない先生(事務の先生や給食配膳員,学校司書教諭など)を取り上げ,調査に行く準備をさせる。調査のきまりを自分たちで考えさせることで,楽しい調査の中にもルールやきまりがあることを意識させる。また,調査の際,記録係や写真係など一人一人に役割をもたせることで,やりがいを感じさせるとともに友だちと協力することの大切さを学ばせたい。一回目の調査では,それぞれの仕事風景を見せてもらったり聞いたりして,分かったことや疑問に思ったことを「先生ちょうさブック」に記録し,それを基に交流させる。二回目の調査では,自分たちがさらに調べたいことについて話を聞いたり体験したりすることで,より理解が深まるようにする。調査後にそれぞれのグループで分かったことを全体で交流し,気付きや感想を振り返らせる。グループで調べた先生の働きや意味について話し合い,交流することで働きの価値について考えさせるとともに自分たちの学校生活はたくさんの人々に支えられていることに気付かせる。さらに,校長先生や教頭先生などまだ調べていない先生を調査させることで,自分たちを支えてくれているという気付きをより確かなものにさせる。その後,「先生ずかん」に調査したことや考えたことをまとめ,紹介させる。

<学びの深化:あれ?だれだろう? まだまだちょうさだ!!>

PTA役員や教材業者など,時々学校に現れる「先生以外の人物」の存在を知り,他にも学校に関わっている人がいるのではないかという疑問をもたせる。何のために働いてくれているのかを考えさせた後に,人物が普段仕事をしている場所に着目して地図にまとめていくことで,いつも学校にいる人だけではなく,学校に来ている人や地域にいる人も学校や自分たちの学校生活を支えてくれていることを実感させ,第2学年の町探検の学習につなげたい。

<まとめ・振り返り:かんしゃのきもちをつたえよう大さくせん>

既習の掲示や「先生ちょうさブック」等を振り返らせ,改めて自分たちの学校生活が様々な立場の人々に支えられていることを感じさせる。また,これからの学校生活をどのように過ごしたいかを考えさせたり,お世話になった先生たちや地域の方々へ感謝の気持ちを手紙に書かせたりする中で,西条小学校の一員として今後の学校生活をよりよくしようとする意欲を高めていく。

4.単元計画(全18時間)

「ここは どこ? あなたは だれ?」

「ぼくたちおしごとちょうさたい!」

「あれ?だれだろう? なにをしているのかな?」

5.成果と課題

図1 本の整頓を体験している様子

本単元の実践では,学校の先生たちの仕事を調べに行き,先生たちの仕事やその意味を考えさせたことで自分たちの学校生活は,たくさんの先生たちに支えられていることに気付き,今後の学校生活をどのように送っていきたいかを考えることができる児童の姿を目指した。授業では,調べた仕事を報告し,その意味を考えることで,多くの先生が立場は違っても自分たちの健康や安全,学習のために働いているという共通点に気付かせることができた。
グループで話し合う活動では,事前に,調べた先生の仕事は何のためにされているのかを付箋に書き込ませておいたことで,話し合いの時間を十分に確保することができた。全体で話し合う際には,体験したこと(図1)を振り返らせたり,その先生が居ない状況を考えさせる発問を行ったりしたことで,先生の働きやその仕事の意味について理解を深めることにつながった。その結果,98%の児童が「みんなのため(学校のため)に仕事をしてくれている」と気付くことができていた。しかし,自分と対象との関わりについてワークシートに記述することができた児童は,68%と満足できる数値ではなかった。先生が働いている価値について考えをもつことはできていたが,1年生段階でワークシートに考えを記述することは難しかった。そのため,調べた先生たちに今後の学校生活で頑張りたいことや日頃の感謝の気持ちなどをメッセージに書く表現活動を取り入れることで対象に対する思いを表出させることができ,対象の価値と自分の学校生活とを関連付けながら考えることができたのではないかと思う。

<仕事の意味を書き込んだ付箋>

<本時の板書>

6.実践を振り返って

図2 先生にインタビューしている様子

図3 事務の先生についてまとめた「先生ずかん」

本単元では,自分たちの学校生活は,たくさんの先生たちに支えられていることに気付くことができる活動を行った。さらに,校外にも支えてくれている人がいることに気付き,今後の学校生活を考えることができるよう単元を仕組んだ。前期に行った学校探検を振り返り,「先生たちを調べてみたい」という意欲をもたせ,再度,学校探検を行った。調査後に,「先生ずかん」にまとめるという活動を設定し,作成に向けて仕事の様子を見たり,インタビューしたりと繰り返し関わることができるように学習を進めた(図2)。そうすることで,時間外でも休憩時間に調べに行く児童や先生の名前を呼んであいさつをする児童の姿が増え,先生に対する関心を高めることができた。また,「先生ずかん」にまとめる活動では,その仕事の意味や価値まで詳しく書くことができており,図鑑を作成することで児童の学びを確かなものにすることができた(図3)。「学びの深化」では,先生以外の人物の仕事を動画で見たり,学校以外でも働いていることを町の地図にまとめたりすることで,学校に来る人や地域の人にも自分たちを支えてくれている人がいることに気付くことができた。「まとめ・振り返り」では,「先生以外にも多くの人に支えられていることが分かった」「いつも給食の準備をしてくれてありがとうございます」「これからも本を大切にします」など感謝の気持ちや今後の学校生活の送り方について書いている児童が多く見られた。このことから,繰り返し関わらせることや新たな視点を与えることで,自分たちを支えてくれている存在について幅広く知ることができたと考える。また,対象への関心や感謝の気持ちを深めるとともに今後の学校生活について考える姿を引き出すことにも有効であったと考える。

<参考文献>