小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
生活

一人一台端末を活用した教育活動
~試行錯誤し,おもちゃや遊びをパワーアップさせる学習活動を通して~

2年長浜市立びわ南小学校 教諭

1.はじめに

本校では,「自ら学び,自分の思いや考えを伝え合うことができる子どもの育成~一人一台端末を活用し,思考を整理し,友だちと伝え合う活動を通して~」というテーマで校内研究を進めている。身近な人々や社会及び自然物等と豊かに関わったり,よりよい生活に向けて思いや願いを実現しようとしたりする生活科の学習活動は,校内研究に関わりの深いものであると考え,授業実践に至った。また,本実践では,生活科での一人一台端末のより良い活用方法についても模索している。

2.単元について

(1)単元名「うごく うごく わたしのおもちゃ ~めざせ びわ南小 あそび名人~」

(2)本単元で大切にしたいと考えたこと

①しっかりとしたねらいをもつ

・動くおもちゃのおもしろさや不思議さを感じながら,身近にある材料が自分たちの工夫で楽しいおもちゃにできることに気付かせること。

・友だちと一緒に試行錯誤しながら,より動くおもちゃに改良したり,より楽しめるように場の設定や遊び方を工夫したりする中で,互いのよさを認め合いながら協力することで得られる喜びを感じさせること。

・相手意識をしっかりもち,誰に楽しんでもらいたいかを考えさせること。

②ゆったりした場を与える

単元の導入では,教師の見本のおもちゃを使って遊ぶ体験を通して,興味や関心をもてるようにした。おもちゃ作りの楽しさや遊ぶ楽しさを味わわせ,「作りたい。」「遊びたい。」「他の人にも遊んでもらいたい。」という思いを高められるようにした。
また,児童が試行錯誤しながらおもちゃ作りができるような場を準備した。さらに,互いに教え合う時間や,作り直す時間を確保し,自分たちで楽しみながら解決できるような場の設定を工夫した。

③主体的・対話的で深い学びにつながる教師の手立て

同じおもちゃを作る者同士でグループになり,交流しながらお互いの気付きを共有させた。また,児童自身が,おもちゃや遊び方の工夫,動く様子をタブレット(ロイロノート・スクール)に記録することで,相手に説明するための道具としても活用し,主体的・対話的で深い学びにもつなげられるようにした。

(3)本単元に求める自立

学習上の自立

・作り出す楽しさや夢中になって遊ぶ楽しさを味わうことで工夫する面白さに気付く力

・発想を膨らませ,工夫してアイデアを出す力

・作り方や遊び方をまとめたり,友だちに伝えたりする力

生活上の自立

・自分の作りたいおもちゃに必要なものを準備したり必要な情報を得たりする力

精神的な自立

・おもちゃ作りや遊ぶ活動を通して,友だちや自分のよさ,工夫やがんばり,協力することの大切さに気付く力

・相手のことを思いながら遊ぶことを通して,人と関わりを深める力

(4)単元目標

身近にあるものを使って,動くおもちゃを作る活動を通して,よりよく動くように改良したり,もっと楽しくなるように遊び方やルールを変えたりするなどの工夫をし,遊びの面白さや自然の不思議さに気付くとともに,みんなで楽しみながら遊びを創り出そうとすることができるようにする。

(5)単元全体に関わる評価基準

<知識・技能>

身近にある物を使って,動くおもちゃを作る活動を通して,遊びやおもちゃを作る面白さや,自然の不思議さに気付いている。

<思考・判断・表現>

身近にあるものを使って,動くおもちゃを作る活動を通して,おもちゃがより動くように改良したり,より楽しくなるように遊び方を変えたりするなど,工夫しておもちゃや遊びを作っている。

<主体的に学習に取り組む態度>

身近にある物を使って,動くおもちゃを作る活動を通して,みんなで楽しみながら遊びを創り出そうとしている。

(6)単元指導計画

小単元名 活動内容 教師のねらう活動の姿 教師の手立て
うごくおもちゃをつくろう
(4時間)

①見本のおもちゃを動かして遊ぶ。

②見本のおもちゃや教科書等を参考にして,おもちゃに必要な道具を用意する。

③自分のおもちゃを作る。

④自分のおもちゃを動かして遊ぶ。

※②~④は流動的に行う。

※同じおもちゃを作った者同士で遊べるようにする。

・おもちゃに関心を持って遊び,楽しむ姿

・どんな材料や道具が必要か考える姿

・動くおもちゃのおもしろさや不思議さに気付き,作ってみたいという意欲をもつ姿

・複数のおもちゃを用意し,おもちゃ作りへの意欲付けをする。

・試行錯誤しながらおもちゃを作る活動の中で,子ども同士をつなげ,助言し合えるようにする。

・学習の見通しをもたせるための学習計画や掲示物を作成する。

もっとよくうごくおもちゃにしよう
(4時間)

⑤同じおもちゃのグループで交流しながらおもちゃを改良する。

⑥自分が作ったおもちゃで他のグループの友だちと遊び,遊んで気付いたことを話し合う。

⑦友だちと協力して試行錯誤し,性能が高まるように改良しながら遊ぶ。

⑧これまで工夫してきたことを振り返ってロイロノート・スクールに記録し,伝え合う。

・おもちゃの動きがよくなるように考え,工夫して作る姿

・友だちと積極的に関わり,改良するために試行錯誤する姿

・友だちの工夫(ゴムの使い方,磁石の位置など)に気付き,自分のおもちゃにも取り入れようとする姿

・試行錯誤できるよう,材料と時間を確保する。

・協力し合っている点や改良した点を見つけ,全体に紹介する。

・タブレットでおもちゃが動く様子を撮影したり,工夫したことをメモしたりして,記録を残すようにする。

あそび方をくふうしよう
(5時間)

⑨みんなで遊ぶためのルールや遊び方を考える。

⑩「おもちゃパーティー」会場の準備をしたり,遊び方の紹介を作ったりする。

⑪⑫みんなで楽しく遊び,遊びながらおもちゃを改良したり遊び方を工夫したりする。

⑬おもちゃパーティーの振り返りをしよう

・遊び方やルールを進んで考えようとする姿

・友だちと協力して準備する姿

・パーティーを通して,人と関わることの楽しさに気付く姿

・相手の立場になって考える力

・みんなが遊ぶ場面を十分にイメージさせ,遊び方やルールを考えさせる。

・パーティーを振り返り,相手の立場で考えられるようにする。

・タブレットに気付いたことをメモや動画で記録できるようにする。

おもちゃフェスティバルをひらこう
(4時間)

⑭⑮1年生を招待するための準備をする。

⑯1年生を「おもちゃフェスティバル」に招待して遊ぶ。

⑰おもちゃ作りをしたり,「おもちゃフェスティバル」を開いたりして気付いたことを振り返る。

・自作のおもちゃについて自信をもって説明する姿

・工夫したことで,友だちに喜んでもらえたという達成感を味わう姿

・年下の友だちへの関わり方を考える姿

・相手意識と目的意識を持たせ,学習意欲が持続できるようにする。

・遊び方を分かりやすく伝えるための方法を考えさせる。(掲示物,説明する順番,例を示すなど)

3.授業実践

小単元①「うごくおもちゃをつくろう」

活動:教師が作ったおもちゃで遊び,自分でおもちゃを作ってみる。

意図的な仕掛:よく動くものと,そうでないもの,動きがおもしろいものをそれぞれ用意

思いや願い:先生よりすごいのを作りたい。もっと速く動くものを作りたい。
いろいろなものを作りたいなぁ。

学習の広がりや深まり
・ゴムの太さを変えたら,昨日(前時)より高く跳ぶものが作れたよ。
・タブレットで記録(動画)を残すと,良く動くようになったかわかってうれしいし,楽しい!
・仲の良い友達に作り方を聞いたら,うまく作れたよ。

小単元②「もっとよくうごくおもちゃにしよう」

活動:グループで,一緒におもちゃを作ったり遊んだりしながら,自作のおもちゃの性能を高めていく。

意図的な仕掛:自分の悩み事,困っていること,思いを小単元の導入で共有(ロイロノート・スクール)

思いや願い:うまく動かないから教えてほしいなぁ。
壊れにくい丈夫なものが作りたい。

学習の広がりや深まり
・材料をかえたら,速く動くヨットカーができたよ。
・友だちと協力したらできたよ。
・手伝ってもらったら,うまく作れたよ。

小単元③「あそび方をくふうしよう」

活動:自分たちが作ったおもちゃをより楽しく遊ぶための場の設定や遊び方を考える。

意図的な仕掛:各自で遊び方を考えさせ,それぞれの遊びを試させる。

思いや願い:おもしろいけど,このままだと難しいなぁ。
ルールがないと,おもしろくないなぁ。

学習の広がりや深まり
・みんなで相談して,レベルを選べるようにしたよ。
・みんなで新しく,大きいまとを作ったよ。

小単元④「おもちゃフェスティバルをひらこう」

活動:1年生を招待するための準備や計画を行い,1年生に楽しく遊んでもらえるように工夫する。

意図的な仕掛:教師が初めて遊ぶ1年生役を演じ,問題点に気付けるようにする。

思いや願い:初めて遊ぶ1年生には難しいんだなぁ。
よろこんでくれるといいなぁ。

学習の広がりや深まり
・ルールを看板に書いたり,遊びながら説明したりしよう。
・1年生が楽しめるようにコースを大きくしたら,もっと楽しくなったよ。
・やくわりをきめたら,上手に説明できるようになったよ。

4.考察

①しっかりとしたねらいをもつ

本単元では,「1年生を招待しておもちゃ遊びを楽しんでもらう」ことをゴールに設定した。そのゴールの達成に向けて,①教師が作ったおもちゃで遊び,試行錯誤しながら自分のおもちゃを作る。②おもちゃの性能を高められるようにグループで話し合う。③より楽しく遊ぶための工夫やルールを考え合う。④1年生が楽しめるように遊び方や説明を考え合う。という4つの段階を意識して学習を進めることができた。また,毎時間の学習では,「試行錯誤」と「仲間とつながり,考えを広げ深める」という2つを特に意識して指導をしたことで,子どもたちもより良いものを作りたいという思いをもち,みんなで協力して作ることができていた。

②ゆったりした場をあたえる

材料は,教師だけでなく,2年生の全児童が家から持ち寄っていたため,十分な量を確保できていた。また,道具や材料をグループごとに使いやすいように仕分けしたり,広いワークスペースを活用したりするなど,環境を整えたことで,児童は意欲的に,のびのびと活動することができた。

単元計画については,活動時間を増やしたことで,十分に遊んだり,話し合ったりすることができていたように感じている。また,タブレットを存分に活用し,おもちゃが動く様子を撮影したり,気付いたことをその場で書き込んだりしたことで,課題が見えやすくなったり,気付きを進んで記録したいという意欲が向上したりすることにもつながったと思われる。

③主体的・対話的で深い学びにつながる教師の手立て

  • 活動内容を絞った方が結果的に深い学びにつながりやすい。
  • 良い点(赤),困っている点(青),友だちの良いところ(黄)を付箋(テキスト)で色分けしたことで,意欲向上や課題発見につなげられ,話し合いが活発になっていたと考えられる。
  • タブレットで記録を残すことは,児童たちにとって楽しい活動となり,書くことを苦手とする児童には特に有効であった。
  • タブレットでは,簡単に自分の記録を編集できてしまうため,教師が管理をしておかないと良い学びの記録を児童が消してしまう恐れがある。(特に失敗したことやそのときの動画など)

<参考文献>