小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
生活

目的・相手意識をもたせ,学び合い活動を通して思考力・表現力を育てる

2年坂出市立金山小学校 髙橋 育代

1.はじめに

本校は,研究主題「体験と言葉で育てる豊かな心~生徒指導の教育的機能を生かし,夢と志をもって自ら切り拓く子の育成~」を設定し,校内で研究を進めている。生活科においては,「人・もの・こと」との関わりから,児童の気付きや願いから学びを広げ,自分の学びを深めていく活動を構成し,授業実践を行っている。本実践では,自分で選んだ野菜の栽培体験を通して,気付いたこと考えたこと,感じたことなどをタブレットを活用し,絵本やクイズにしていく。1年生に紹介しようという目的・相手意識をもたせ,一人ひとりが主体的に関わり,より深い学びにつなげていくことをねらっている。

2.実践について

(1) 単元名 「大きく育て ぼく・わたしの野菜 ~野菜クイズを作ろう~」

(2) 単元の目標

野菜を育てる活動を通して,野菜が育つ場所や変化の様子に関心をもち,世話の仕方を調べたり,人に聞いたりしながら愛着をもって世話をし,それらに生命があることや生長していることに気付くとともに,親しみをもって大切にすることができるようにする。

(3) 単元設定の理由

本単元では,1年生でのアサガオ栽培活動の経験から,さらに植物への関わりを深めるために,野菜を育て収穫し,クイズ作りをする活動に主体的に取り組めるよう支援する。また,その活動の中で,わたしの野菜のことをみんなに知ってもらいたいという願いを実現していく楽しさを味わい,活動を続けていく意欲を高めていく。同時に,これまでの経験を振り返ることで,継続的にお世話や観察を行ったり,野菜の種類に合わせて世話の仕方を調べたり,他の野菜と生長の様子を比較したりして,知的な気付きを深められるようにすることをねらいとしている。そして,野菜とともに自分も成長しているという喜びや自分の力で栽培することができたという自己の成長への気付きも感じられるような単元計画を立案する。

(4) 学び合う力の育成

①主体的・対話的な学びにするために

学ぶことに興味・関心をもち,見通しをもって粘り強く取り組もうとする主体的な学びを実現させるために,相手意識をもって表現方法を工夫できるように取り組めるよう単元を構成した。自分の野菜を1年生に紹介するという相手意識をしっかりともつことで,伝えることや方法の工夫を意欲的に考えていくことができる。

子どもたちは,自分の育てたい野菜を選んだ。自分で選んだ野菜だからこそ,野菜に対する愛情をより強くもつことができる。また,野菜の栽培活動を通して,生長の様子やそれぞれの野菜の生長の秘密を見付け,iPadを使って写真を撮り,蓄積しておく。それらを野菜絵本やクイズ作りの際に活用し,子どもたち同士や教師との協働や対話による学びを深め・広げるための交流活動や表現活動の有効な手段とした。

班で育てているミニトマトの
気付きを伝え合う子どもたち

野菜の生長の秘密を見付け,
友だちと共有し合っている様子

班で育てているミニトマトの
気付きを伝え合う子どもたち

野菜の生長の秘密を見付け,友だちと共有し合っている様子

②個の考えを確立するために

一人ひとり選んだ野菜を栽培する。そして,観察の視点を子どもたちとの話し合いの結果,「見る(色や形)」「におう」「触る」「思う(話す)」の4つにし,表現の際には,「比べる」「たとえる」という思考方法を取り入れた。また,各グループでミニトマトの栽培も行い,自分の育てている野菜との比較対象とした。

子どもたちは,毎日,観察などで気付いたことをカードに書き,帰りの会の「野菜ニュース」として発表した。日々の様子や発見などを簡単に書くカードと見る観点を決めてじっくりと観察するカードの2種類を使い,子どもたちの見付けた気付きをポートフォリオの形式で「野菜ファイル」に蓄積し,後で振り返りに活用できるようにする。また,野菜の本を教室に置き,いつでも必要なときに子ども自身で自由に調べられるようにしておく。

日々の気付きを書くカード

③学び合い活動の工夫

野菜を観察する際,「くらべる」の観点で交流の場を設定した。同じ野菜を育てている子ども同士や違う野菜を育てている子ども同士,自分の野菜とミニトマトなど,子どもたちは自由に選び,交流活動を継続していく。共通点や相違点を見付けていくことで,野菜への興味を高め,もっと知りたいという思いが次の活動へとつながっていくと考える。

また,紹介したい場面の写真をもとに紹介文やクイズを作る活動を仕組む。同じ野菜同士の対話を通して,「何を紹介するのか」「どんなふうに紹介するのか」「なぜそうなっているのだろうか」などの観点で話し合い,修正等を行う。さらに,違う野菜を育てている友だちに紹介し,賞賛や修正をしていく。その際,1年生に分かりやすいかどうかを意識させた。

野菜の紹介をしている子どもと聞く子どもの様子

自分の野菜絵本を読み返す子ども

タブレットの提出箱の中にある
全員の野菜クイズ

評価項目に沿って表している子ども

④振り返り

iPadで撮った写真を使って,野菜の生長に合わせた紹介文とクイズ作りをする。友だちからの言葉や観察等を通して気付いたことを「野菜ファイル」に付け加えていく。一人ひとりが自分の発見したことや友だちから学んだ事を付け加えることで,より自分の野菜を大切に,しっかり世話をしていこうという思いを強くもつことができると考える。

友だちに紹介を行った後,自分の説明を評価し,次の目標を書いた。自分の感想とともに友だちの工夫していることに気付き,書いている子どももいた。

1年生に自分の野菜の紹介やクイズを出したり,外に出て実際に見せたりした。1年生から「ぼくもきゅうりを育てたいな。」「ナスのことがよく分かったよ。」等の感想をもらうことができた。

1年生に野菜の紹介をする子どもたち

(5) 評価基準

知識・技能 思考・判断・表現 学びに向かう力・人間性

栽培活動を行う中で,野菜が生長していることやそれが生命をもっていること,その大切さに気付くとともに,自分が1年生の時よりも上手に植物の世話をできるようになったことに気付いている。

栽培活動を行う中で,それが育つ場所,生長の様子に関心をもって働きかけるとともに,植物に心を寄せ,よりよい生長を願って世話の仕方を考えたり工夫したり振り返ったりし,それを素直に表現している。

自分が育てる野菜に心を寄せ,愛着をもって接するとともに,生命あるものとして継続的に世話をしようとしている。

(6) 単元計画

学  習  活  動 評     価
知識
理解
思判
表現
学びに 評価
方法
一次 1 〇 育てたい野菜を選ぼう
・ 育てたい野菜を決め,単元計画を立てる。
発表
カード
行動観察
2 ・ 土を準備し,種と苗を植える。
二次 3 〇 世話をしよう
・ 苗の様子を観察し,記録する。
・ 世話の仕方を考える。
  行動観察
発表
カード
4 ・ 葉の数が増えたり,茎が伸びたりしたときに観察し記録する。
5 ・ つぼみなどが出たときに観察し,記録する。
・ 困ったときは,本で調べたり,人に聞いたりする。
6 ・ 花が咲いたときに観察し,記録する。
7 ・ 実ができたときに観察し,記録する。
・ 収穫し食べた感想などを記録する。
三次 8
9
10
11
12
〇 みんなに伝えよう
・ 「やさい絵本」「やさいクイズ」を完成させよう。
・ 他の野菜と比べて気付いたことや思いを付け加える。
・ 野菜の命の流れを感じ,野菜の秘密をまとめる。
・ 野菜交流会をしよう。
・ 野菜さんへお手紙を書こう。
  行動観察
発表
カード
野菜絵本
クイズ

3.成果と課題

(1)成果

(2)課題

野菜絵本を見ながら
タブレットを操作する子ども

野菜別の観察日記(教室掲示)

野菜絵本を見ながら
タブレットを操作する子ども

野菜別の観察日記(教室掲示)