本校では,ESDを校内研究として行っている。低学年では,自然に親しむ素地を養う学習活動に取り組んでいる。その手立てとして,「みつけたよカード」,「見る見るメガネ」,「聞く聞くコップ」などワークシートや教具を用意し,興味関心を高めるような学習環境を整えている。そこで,学習の経過を「見える化」するために,学習の様子や気付きなどを掲示するだけでなく,目的や視点に応じてICTを活用している。また,言語活動の活性化を目的に友達との伝え合いのきっかけになるフレーズとして「ねぇ,聞いてタイム」を設定している。生活科の課題である評価は,提出した学習活動の様子や発言,振り返りシートなど個別にまとめながら,変容を見取れるようにしている。
「わたしの とっておきの あさがお」
「大森第一小学校から花いっぱい」~ 花でつなぐ ぼく・わたしの思いや願い ~
植物を育てることに関心をもち,育てている植物の世話をしたり,観察をしたりして,その変化や成長の様子,上手に世話をできるようになった自分自身の成長に気付き,植物を大事に育てることができるようにする。
小学校学習指導要領 生活編 第3章 第2節 生活科の内容
(7)動物を飼ったり植物を育てたりして,それらの育つ場所,変化や成長の様子に関心をもち,また,それらは生命をもっていることや成長していることに気付き,生き物への親しみをもち,大切にすることができるようにする。
を受けて設定した。
㋐生活への関心・意欲・態度 | ㋑活動や体験についての思考・表現 | ㋒身近な環境や自分についての気付き |
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1学期に2年生から「アサガオの種」をもらい,アサガオを育てることへの興味をもつことができた。種から発芽し,生長していく様子を観察したり世話をしたりする経験を積むにつれ,アサガオへの愛情は深まっていった。季節の変化とアサガオの成長の変化を関連付けながら,アサガオへの思いを絵カードや絵日記に表現した。夏休み中も世話を続け,花を育てることが児童の生活の一部となった。秋になり,アサガオの生長が止まったことを確認し,種とりや蔓を使ったリース作りをして思い出を次につなぐ活動をした。アサガオと別れる寂しさを感じた児童は,空になった鉢植えを見て,「これからも花を育てていきたい。」という思いをもつに至った。
新しく花を育てる活動を進めるにあたり,家族にインタビューをする児童や,図書室を活用し,秋から冬の花をしらべる児童など,育てやすそうな花や球根を調べた。また,秋探しの活動中に,校門前に咲いている花に興味をもち,「誰が植えたのか。」「どんな思いで植えているのか。」という思いをもった。花壇の世話を続ける地域の方をゲストティーチャーとし,学校や児童,花への思いを学び,児童は「育てた花を見て笑顔になってほしい。」「多くの人に花を楽しんでもらいたい。」という思いをもった。そこで,新たに単元を設定し,「上級生に見てもらう。」「近くの保育園や幼稚園に花を届けたい。」と学校内外へ視野を広げていく活動計画を立てた。そして,児童が友達だけでなく,身近な人々と繰り返し関わることへの楽しさを味わうことで,大きな達成感や成就感につながるものと考え,本単元を設定した。
1学期の生活科の学習では,アサガオを一人一鉢栽培し,ホウセンカやヒマワリなどを2~3人のグループで栽培した。児童は,水やりや観察を自主的に続け,芽が出た喜びや花が咲いた感動を友達と共有することができた。自分たちのかかわりによって植物を生き生きと生長させることができた経験から,児童は「もっと花を咲かせたい。」「しぼんだ花も色水遊びに使ってみたい。」「種を来年の1年生やお世話になっている人にプレゼントしたい。」と次の学習活動につながる願いや思いをもっている。
そこで2学期は,自分たちが味わった感動を他の学年の児童や地域の幼稚園児,保育園児とも共有し,広げて行くことを目標に,自分たちよりも幼い子供たちと自らかかわり一緒に活動することによって,発信をする学習活動を実践していく。
小学校入学前は年長者として保育園や幼稚園の活動の中心にいた1年生であるが,入学してからしばらくは,6年生や2年生のお世話になることが多く,支えられている自分を強く実感する毎日を過ごしてきた。6月頃には学校生活にも慣れ,自分でできると自信をもって行動する姿も見られるようになった。学習活動においても「こんなことがしたい。」「もっとがんばれそうだ。」と主体的な発言やつぶやきが生まれてきた。そこで,地域の保育園や幼稚園との交流を計画し,自分たちより年下の友達とのかかわりによって支えている自分の姿を思い描かせたいと考えた。
【活動例】
1学期後半 | … | 園児との顔合わせをする。(アサガオ,1年生の教室の紹介など) |
2学期 | … | 園児と共に活動をする。(植物栽培,季節の遊びなど) |
3学期 | … | 園児に学校案内をする。(1年生体験,季節の遊びなど) |
また,校門前に咲いている花のお世話をする地域の方を招き,花や児童への思いを知ることで,児童が地域へと視野を広げることに役立つと考えた。
園児との顔合わせ
園児と共に寄せ植え作り
園児に学校を案内
ゲストティーチャーとの関わり
GT交流の板書
児童の「楽しいからもっとやりたい。」「できるようになったことを伝えたい。」という自ら発信した素直な気持ちをつないだ意図的,計画的な学習を積み重ねたいと考えた。児童の発言,思いや願いを学習の流れと共に視覚的に表し,児童が今までの学習を振り返ったり,これからの活動を見通したりすることができるようにする。活動する児童の姿が見える掲示によって,児童がより主体的に活動できるようにする。
掲示物の一例
1学期からアサガオやその他の植物の様子を記録するために『みつけたよカード』を活用している。児童の願いや思い,気付きを絵や文章で残しておきたいという気持ちからカードへの記録を始めた。児童が自由に表現することができるよう,4種類のカードを用意し,児童に選ばせている。児童は,自分の得意な表現方法を選んだり気付いた内容を表すのにぴったりだと思うカードを選んだりしている。多様な表現方法に挑戦したり,友達のよさに気付いたりするきっかけとなっている。
児童の内言語を表出させるために,紙コップを電話に見立てた「聞く聞く電話」や穴の開いた画用紙をルーペに見立てた「見る見るメガネ」を常に用意することで,児童が自然と手に取り気付きの質を高めることに有効な手立てである。
ワークシートの一例
児童の記述一例
あさがお1回目 観察 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |
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児童の活動の様子
見る見るメガネを使って
聞く聞く電話を使って
ねぇ,聞いてタイム1
ねぇ,聞いてタイム2
ワークシート1
ワークシート2