私が生活科の授業を行う上で特に大切にしているポイントは,「体験や活動の充実」「その後の振り返り」「気付きの自覚化」の3つである。
今回の実践は,1年生の5~6月に行った,公園探検の単元である。本校は,様々な園出身の子供たちが入学してくるという実態がある。時期的にも,まだまだ学校に慣れてきたとは言い難い時期である。
一方で,子供たちは,それぞれの幼稚園・保育園でたくさんの遊びの経験を積んできている。生活科では,これらの経験があることを前提としつつ,体験を通して得た気付きを子どもたちに自覚化させたい。本実践については,はじめに挙げた3つのポイントの内,特に「気付きの自覚化」を重視して実践を行った。
みんなが使う公園で楽しく遊び,公園には楽しい遊具もあれば,便利なものや安全のためのものもあるということに気付き,公共施設としての公園を大切にしようとすることができる。
本単元は,小学校学習指導要領生活編の内容(4)を中心にして構成されている。公園探検の活動は,様々な内容を関連させて取り扱うことが可能だが,今回は内容(4)にしぼり,ねらいを明確にした。また,本校の実態として,2年間の生活科の中で,公共施設や公共物を扱う単元が少ないという現状も,内容(4)にしぼる理由となった。
『公共性』
生活への関心・意欲・態度 | 活動や体験についての思考・表現 | 身近な環境や自分についての気付き |
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・遊具や公園に関心をもって利用しようとしている。 ・ルールやマナーを大切にし,公共物や公共施設を正しく安全に利用しようとしている。 |
・遊具や公園を見たり遊んだりしながら,みんなが気持ちよく利用できるように,どのような工夫がされているかを考えている。 ・遊具や公園の利用の仕方を工夫したり,みんなでつかうものがあることやそれを支えている人々がいることなどについて,自分なりに考えたり,振り返ったりして,それをすなおに表現している。 |
・身の回りには,みんなで使うものやみんなのための施設があることが分かっている。 ・遊具や公園にはそれらを支えている人々がいることに気付いている。 ・みんなで気持ちよく利用するためのルールやマナーがあること,安全に気を付けて正しく利用することが大切であることなどに気付いている。 ・遊具や公園を利用すると,自分たちの生活が楽しく豊かになることに気付いている。 |
いろいろな人が利用するということや,みんなが安全に利用できるようにそれを支えてくれる人がいるということに気付くことができるように,公園探検へ行く日に自分たち以外の人がいるようにした。
保護者に協力を呼びかけ,ボランティアで見守りをお願いした。その時に弟や妹がいるご家庭は,弟や妹を連れてきてもらえるように頼んだ。また,幼稚園バスのお迎え時間まで,近くに住む園児たちが公園で遊んでいるという情報を得たので,公園探検をその時間に合わせて設定した。それにより,公園で小さい子たちも遊んでいるという状況をつくることができた。
無自覚な気付きを自覚させる,気付きを学級全体で共有する,気付きの質を高めるために,振り返りの際に,気付きを具体的にする問い返しを意識的に行った。
公園で見つけたものや遊びを,分類し整理して板書した。分類する際,色分けしたり写真を活用したりして,1年生の児童が分かりやすいようにした。
○公園で見つけたものや遊んだことにシールを貼る活動
見つけたものや遊んだことにシールを貼ることで,発言しない子の気付きも見取ることができた。また,黒板に来てシールを貼ることで,子どもたち同士の対話も生まれた。シールを貼り終えた後は,「こんなにたくさん見つけたね。」と,達成感を味わうこともできたし,「○○にシールが少ないから,今度公園に行った時に見つけてみよう。」と,次の活動の意欲付けにもなった。
○クイズ形式の発問
本時の目標にせまるために,三択のクイズ形式でクイズを行った。「この時○○さんはどうしたと思う?」という三択クイズをした後,「自分だったらどうする?」という三択クイズをし,自分事の学びにつなげた。
目標と学習活動 | 学びを深める手立て |
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第1時
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第2・3時 ・思い思いに好きな遊びをした。 遊具遊びの他に鬼ごっこやかくれんぼ,缶蹴りなども行っていた。 ・学校へ戻ってから,楽しかったことを絵や文で表現した。 |
・「公共の場でのルールやマナー」についての気付きにつなげるため,保護者に依頼をし,未就学児を連れてきてもらったり,幼稚園の送迎時間と合わせたりしたことで,児童以外も一緒に公園で遊んでいる状況をつくった。 ・次時の活動につなげるため,目標達成につながりそうな児童の行動や気付きを見取り必要に応じて記録した。 ・文字が書けない児童や絵で表現するのが苦手な児童に対しては,個別に「○○さんと□□して遊んでいたよね。」などと声をかけたり写真を見せたりして,想起できるようにした。 ・カードを通した児童の表現を共感的に受け止め,一言メッセージを添えて返却した。 ※公園の魅力についての気付きは,カードにも多く表現されていた。 |
第4時 ・公園で見付けたものをどんどん出していった。出たものを,分類しながら板書していった。 ・何をして遊んだかを出していった。それも見付けたものと同様に板書していった。 ・自分が見つけたもの,遊んだことにシールを貼った。 ・小さい子がブランコに並んでいる写真を見せ,三択クイズをした。 「この時,ブランコに乗っていた○○さんは,どうしたでしょうか?」 ①すぐ代わった ②20数えて代わった ③代わらなかった 「自分が○○さんだったら,どうしましたか?」 ①すぐ代わった ②20数えて代わった ③代わらなかった ・Aさんが拾ったゴミを紹介し,なぜゴミが落ちていたのか考えた。 ・次の探検のめあてを確認した。 |
・児童の気付きを共有しやすくするために,遊び(ピンク),自然(緑),公共物(黄色)で色分けして板書した。 ・児童の気付きを自覚化させるために,「誰と遊んだの?」「どうやって遊んだの?」「どんな気持ちだったの?」など,具体的な問い返しを行った。 ・公共物に対して意識を向けるため,公共物につながる発言をした児童に,「何をしたの?」「何のためにあるんだろう?」などの具体的な問い返しを行った。 ・発言できなかった児童の参加意識を高めるとともに,気付きの共有を促すために,自分と似ている気付きのところにシールを貼る活動を行った。 ・「公共」に意識を向けるために,公園探検での一場面の写真を提示し,クイズを出した。 ・「公共」にかかわる問題を自分事として考えられるように,「自分だったらどうしたと思う?」という問いを児童に投げかけた。 ※自分だったら…の問いの後,理由を聞き,公園では小さい子も遊んでいて,そういう場合にどんな行動をするといいのか考えた。 ・「公共の場でのルールやマナー」についての気付きを促すため,実際に持ち帰ったゴミを見せ,「こんなゴミが落ちていたよ。どうしてだろう。」と問いかけた。 |
第5・6時 ・2回目の公園探検に行った。 ・1回目の公園探検で見付けられなかったものを見付けてこよう,という意識を持って行った。 |
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第7時 ・2回目の公園探検を振り返り,気付いたことや楽しかったことを話し合った。 ・公園の良さや楽しさを伝え合った。 ・公園をきれいにしてくれたり,遊具を管理してくれてたりする人についての話を聞き,考えた。 |
・「落ちてたゴミは,どうなるんだろう。」 |
ねらいをしぼり,ねらいを明確にしたことで,授業づくりをする際もねらいを意識することができた。ねらいが明確になったことで,ねらいを達成するための手立ても具体化しやすかった。公園探検という活動だけに気を取られるのではなく,公園探検という活動を通して,「どんな力を付けたいか」という,身につけるべき資質能力を見据えた単元づくり・授業づくりをしていくことが大事なのではないだろうか。
また,ねらいをしぼるには,年間計画もしっかりと考える必要がある。年間計画上の位置付けを踏まえた単元づくりができたことも成果と言える。
公園での活動や伝え合う活動を通して,公共施設や公共物を「支える人」に意識を向けることができなかった。今回,事前に行政の担当者等に相談したが,活動の日程と「支える人」の都合を合わせることができなかったのが,その理由の一つとして考えられる。
また,2年間の指導計画を考える上で,それぞれの内容をどのように位置づけ,どう関連させるかが不透明であることも課題として挙げられる。公園探検は,内容の(4)に限らず,様々な内容と関連させることができる。(4)にしぼることで焦点化されるというメリットがあるが,子供の体験や気付きが「制限」されてしまった部分もあるのではないだろうか。そのため,生活科における2年間の指導計画を明確にし,目の前で起こった子供の学びを,他の単元につなげていくような視点を,教師がもっておくことが大切になってくるのではないだろうか。