1年生がスタートして間もなく始まる栽培単元は,長期に渡り植物と関わり続けることで,植物の成長だけでなく,自分自身の成長にも気付くことができる単元であると考える。教師が「今日は○○をしましょう。」と進めていくのではなく,幼児期の経験を存分にいかしながら,「○○したい!」という思いや願い,子どもたちから生まれたアイデアを実現していくことを意識して取り組んだ。
(1)単元名「きれいにさいてね あさがおさん」
(2)単元目標
植物を継続的に育てる活動を通して,植物が育つ場所,変化や成長の様子に関心をもって働きかけ,植物が生命をもっていることや成長していることに気付くとともに,植物に親しみをもち,大切にすることができるようにする。
(3)評価規準
(4)単元計画(全12時間+国語+常時活動)
小単元(時数) | 学習内容 |
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1 そだてるはなをきめよう (1) |
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2 たねをまこう (2) |
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3 おせわをしよう (2) |
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4 おはなをたのしもう (2) |
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5 たねをとろう (2) |
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6 いままでをふりかえろう (3) |
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小単元3「おせわをしよう」
クラスのみんなで,うれしかったことやびっくりしたこと,心配なことを共有するために,「きょうのあさがおさん」というテーマで対話をする時間(おはなしタイム)を設定した。おはなしタイムでは,気付いたことを言葉や体で表現したり,黒板に絵を描いたりしながら進めていった。
おはなしタイム①
芽が出てきた頃のおはなしタイムでは,芽の数や芽の出かた,形,自分の気持ち(うれしい,心配)など,様々な観点での気付きを共有できた。
おはなしタイム②
本葉が増えてきた頃のおはなしタイムでは,「ふわふわのみどり色のものの正体はなんだろう?」という疑問が出てきたことで,みんなでこれから確かめていこうという次への意欲につながっていった。
また,成長に応じた世話の仕方について話し合うために,意図的に子どもたちに問いかける「はてなタイム」も設定した。
はてなタイム
お水やり以外のお世話について考える機会をもつために,まず,これからどんなふうに大きくなってほしいと思っているか,子どもたちの願いを聞いた。その後,次に自分たちが行うお世話への手掛かりを掴むために,あさがおさんの声を「きくきくでんわ(紙コップを電話に見立てたもの)」で聞いてみようと投げかけた。子どもたちは,あさがおさんがしてほしいことや困っていることをあさがおさんの代わりに言葉にしていった。そのことが,追肥をあげたり,支柱を立てたり,置く場所を考えて移動したりする新しい活動へとつながっていった。はてなタイムの後,アサガオのことを考えてお世話の仕方を工夫する姿が見られた。
小単元4「おはなをたのしもう」
きれいなお花が咲いても,時間が経つとしぼんでしまうことに子どもたちが気付きはじめた頃,「あさがおさんにゅうす」というテーマで,対話の時間を設定した。「あさがおさんは朝しか咲かないよ。次の日にはしょんぼりしているよ。」「今日の姿と明日は違うんだよ。」という話が出されたので,きれいなお花を残すことはできないのかな?と問いかけると,幼児期の経験もふまえたたくさんのアイデアが生まれた。
咲いている本物の花をそのまま残したいと考える子もいれば,お花をちぎるのはかわいそうと考える子もいるなど,一人ひとり思いや願いは違っている。全員が一律に同じ活動をするのではなく,自分がしたいことを選び,自己決定できることが大切である。
そこで,啓林館「デジタルたんけんブック」を活用し,自分でやり方を確認できるようにしたり,活動に必要な道具や材料をいつでも使えるように準備したりするなど,環境設定を工夫した。
色水づくりを水の量を変えて繰り返し試してみたり,お花と一緒に記念写真を撮ったりするなど,思い思いにお花との関わりを楽しむことができた。
小単元6「いままでをふりかえろう」
アサガオの成長の様子をみんなで振り返る活動を行った。時系列で写真を掲示してみると,「最初のタネに戻っている!」と気付いた子どもたち。その後,矢印でつなぐと,「命はつながっていくんだ!」と気付くこともできた。さらに,自分自身の栽培活動について振り返るために,お世話をしている様子を記録した写真やこれまで書き溜めてきた「あさがおにっき」を見返し,いちばんの思い出は何かなと問いかけた。すると,アサガオと関わってきて感じたワクワク感や喜びなどの自分自身の感情について思い出して伝える姿が見られた。まとめの活動については,教科書を参考にしながら考え,「あさがおにっきに表紙をつけて本にしたい」「あさがおさんに感謝状を送りたい」などの思いをもとに取り組むことを決定した。作成した本の表紙には,キラキラ輝くあさがおさんを描いたり,にこにこ顔の自分が登場したりしていた。また,感謝状には,大切に育ててきた自分の思いがいきいきと表現されていた。
思いや願いの実現に向けた活動を展開するためには,子どもたちの活動の中に入り,寄り添い,共感的な言葉がけを行い,どのような思いや願いをもっているのかを深く理解することが欠かせないと感じた。1年生の子どもたちの豊かな感性や自ら学ぼうとする力,みんなで学びを深めていこうとする力には,目を見張るものがあった。教師は,子どもたちの学びを支える伴走者であることを胸に,今後も子どもたちとともにわくわくする生活科を実践していきたい。