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理科

第5学年「雲と天気の変化」における単元・授業提案
~雲の様子により深く着目して天気の変化を捉えるためには~

5年富士宮市立北山小学校 村松 弘法

1.はじめに

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編には「雲の量や動きに着目して…天気はおよそ西から東へ変化していく」と,天気の変化には規則性があることを捉えると示されており,教科書では,数日間の雲画像やアメダスの画像から天気の変化を捉える展開になっている。教科書の資料や展開は大変分かりやすく,容易に「雲が西から東へ移動し,天気も西から東へ変化している」ことが理解できそうである。

しかし,私が実際に5年生を何度か担任して授業を行ってきたところ,授業では理解できているようでも,単元末テストになると全ての子供が理解できているわけではないということを痛感してきた。どのような授業を行えば深く記憶に残る理解として定着させられるのか。本単元,授業での工夫を提案する。

2.単元構想及び授業実践について

(1)単元名

第5学年「雲と天気の変化」 気象予報士になろう!~雲の様子から天気を予想しよう~

(2)単元構想及び指導計画(全7時間)

単元導入

天気を予想するという単元の見通しをもつ

生活経験やある日の雲画像をもとに,雲と天気の変化には関係があるだろうと予想し,「気象予報士になって天気を予想する」という単元のゴールを共有する。

第1次

雲の様子と天気の変化

天気が変化しそうな日の空の様子を観察し,雲の様子と天気の変化の関係を理解する。

第2次

天気の変化のきまり

連続した4日間の雲画像をもとに,雲の動きの規則性を見出す。(本時)
雲画像とアメダスの降水量情報などをもとに,天気が雲の動きと合わせて変化していくことを理解する。

第3次

雨や雪とわたしたちのくらし

雨や雪がもたらす水と人の生活との関わりを教科書やインターネットで調べる。

まとめ

活用

当日までの連続した3日間の雲画像を分析し,次の日の天気を予想する。

(3)本時の目標

日本付近の雲の動きの規則性について,雲画像の雲の様子を分析したり動きの共通点を考えたりすることを通して,日本付近で雲がおよそ西から東へ移動していることを見出す。

3.提案

(1)単元のゴールを設定し,学習に必要感をもたせる。

「気象予報士になって天気を予想する」という単元のゴールを設定した。単元の最後に学習したことを用いて天気を予想するという見通しをもたせ,その活動に向けて学習を進めていった。そうすることで,各授業での学習の必要感をもたせることができ,より主体的な学習となった。

単元の終末には,ある日とその前日の雲画像を提示し,次の日の天気を予想する活動を行った。ほぼ全員がA児やB児のように,雲の様子を注意深く分析し,自分の言葉で天気を予想することができた。特別な支援が必要なC児も,次の日の天気の予想はできなかったものの,雲の様子をよく分析することができていた。

資料1:A児のノート

資料2:B児のノート

資料3:C児のノート

(2)連続した4日間の雲画像の雲の様子を分析し,変化の仕方を考える。

子供たちに雲の形や変化を注意深く分析させることで,雲と天気の変化について深く理解させたいと考えた。そこで,あらかじめ日本気象協会「tenki.jp」のサイトから過去の雲画像を検索し,子供たちが雲の様子を分析することで,その移動の仕方や変化の仕方についてよく考えられそうな連続する4日間の雲画像を準備した。
それをChromebookのGoogle Jamboardで配布し,個人学びで変化の仕方を書き込ませた。また,雲画像は3種類(3月,10月,12月)用意して選択させることで,自分の意見をもちやすいようにした。

資料4:「およそ西から東へ移動する」ことを捉えられていた意見

資料1で分かるように,子供たちは付箋や矢印で雲の変化の様子をうまく書き込み,多くの子供たちが個人学びの段階で雲が「およそ西から東へ移動する」ことを捉えられていた。

数名の子供たちは資料2のように,こちらがねらっているような雲の変化を捉えることができていなかった。しかしそのような子供たちも,雲の様子をよく見て,変化の様子を一生懸命考えていたため,ねらいである雲の変化を注意深く分析し変化を考えるという目的は達成されていたと考える。

資料5:「およそ西から東へ移動する」ことに考えが及ばなかった意見

(3)3種類の雲画像から,雲の動きの共通点を話し合う。

個人学びでそれぞれが考えた雲の変化の様子を一斉で共有し,共通点を見出すことで雲の動きの一般化を行った。板書で雲画像を提示し,実際に雲を指し示しながら説明を行ったことで深い話し合いが行われた。

個人学びで雲の動きをうまく捉えられていなかった子供たちも,この話し合いを通して「西から東」「南西から南東」という移動の仕方をしていることに納得できていた。話し合いでは,雲の動きはまったく同じような移動の仕方やスピードではないこと,雲の量は日に日に変わっていくこと,途中で消えてしまう雲もあること,など,単に1種類の雲画像を見ただけでは考えつかない多様な意見も交流され,雲を注意深く分析するという目的が達成されていたと考える。

(4)気象衛星の雲動画で雲がおよそ西から東へ移動していることを確認する。

最終確認として,デジタル教科書内にあるNICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)の気象衛星の雲動画を視聴した。子供たちから,「やっぱり西から東だ!」「量も変化しているね。」などのつぶやきが聞かれ,話し合いで一般化した自分たちの考えを確認することができた。

資料6:啓林館「わくわく理科5」デジタル教科書P88動画コンテンツ

4.おわりに

子供の実態は毎年異なるので,今回の授業によって単元末テストの出来が良くなったのかは実際には分からない。しかし,教えられたことや受動的に見たものは知識として定着しづらく簡単に忘れてしまうのに対して,今回のように気象予報士として天気を予想するために雲の動きを注意深く分析した活動は,非常に価値の高いものだと思う。それは,聞いただけ,見ただけでは分からない子供たちにとってはなおさらである。深く記憶に残る知識として定着できるよう,今後も他の単元,教科でもこのような工夫ができないか追究していきたい。