令和2年に新学習指導要領が全面実施され,理科学習においては,児童が「理科の見方・考え方」を働かせながら,知識及び技能を習得したり,思考・判断・表現したりして「理科の見方・考え方」を豊かにしていくことが求められた。これまでの「科学的な見方や考え方」は,それ自体を育成することが目標であったが,「理科の見方・考え方」は,資質・能力を育成に向かう学習過程で働かせるものである。そこで,授業段階において児童がどのような場面で「理科の見方・考え方」を働かせながら,資質・能力を身に付けていくかを明確にしていきたい。
また,これからの授業においては,新しい指導方法等の導入が求められているのではなく,「主体的・対話的で深い学び」の視点から改めて授業を見つめ直し,その実現に向けて授業を改善していきたい。
(1)単元や題材などの組立て
児童は事象に出会い問題を把握し,教材や教具を使って問題解決を図る。その際教師は,児童が確かな問題解決を図るように支援する必要がある。そのためには,児童の疑問を確かな問題へと高めることが必要である。あるいは,児童の考えに揺さぶりをかけたりすることが大切である。
〇児童の思考の流れに沿った学習計画を立てる
児童の疑問を確かな問題へと高めたり,児童の考えに揺さぶりをかけたりするときのキーワードは「本当かな?」「何がそうさせたの?」である。第6学年「ものの燃えるとき」を例に挙げると次のとおりである。
まず,導入で空き缶の中で割り箸(木片)を燃やす活動を行う。その際,3種類の缶を準備する。「穴をあけていない缶」「上の方に穴をあけた缶」「下の方に穴をあけた缶」の3種類の缶をランダムに児童に渡し,うまく割りばしが燃えた児童と割り箸の上の方だけ燃えて下の方は燃えていない児童に分かれ,児童は,『缶の下の部分に穴をあけるとものはよく燃える。』と結論付けた。そこで,児童への声掛けとして「本当かな?」と投げかけたところ,次の時間の学習問題を『缶の下の方に穴をあけると,よく燃えるのはどうしてだろうか。』と設定した。このように,児童の考えを揺さぶるときに「本当かな?」という声掛けをし,児童の疑問を確かな問題へ高めるときに「何がそうさせたの?」という声掛けをしながら,児童の思考に沿った学習の流れ(学習計画)を立てるようにしている。
(2)児童が解決したくなる意味のある問いの設定
児童にとって身の回りの日常生活に結びついた問いを導き出すことは,主体的に取り組もうとする点では,とても意味のある問いである。さらに,その問いに科学の本質を盛り込むことで,児童にとって解決したくなる意味のある問いとなるのではないかと考えた。
例えば,気温の変化の学習において,これまでは「晴れの日の気温は,どのように変化するのだろう。」という問いを設定し,晴れの日の1日の観察を行って気温の変化を確かめてきた。そこへ,天気を予想するときの本質である「確率」の視点を盛り込んだ問い「晴れの日は,いつも気温が山型で,午後2時ごろが最高なのか。」にすることで,児童は,晴れの日の気温の変化を1日だけでなく,数日は計測する必要性を感じ,観察して得たいくつかの記録をもとに,「晴れた日の気温の変化」に気付くことができる。
このように,科学の本質をもとに問いを考えることで,より児童が主体的に問題解決しようとする問いとなると考えた。
〇主体的に問題解決しようとする学習問題を設定の例
①第6学年 単元「月と太陽」より
設定した学習問題・・・『月の見える形は,月や太陽の位置と関係があるのだろか。』
導入段階では,満月,半月,三日月の写真を見せながら,月の形の見え方の違いに気付かせた上で,半月の時の太陽の位置を予測させた。月の形の見え方と太陽の位置の関係に気付かせた上で学習問題を設定した。このことにより教科書の問題では気付かせにくかった月の形に太陽の位置が関係しているということに気付かせることができ,モデル実験をするときに児童は,月の形を記録するだけでなく,太陽位置も意識して記録することができた。
②第6学年 単元「大地のつくりと変化」より
設定した学習問題・・・『これまでに起こった地震では,大地にどんな変化がみられたのだろう。』
導入段階では,土砂崩れや地割れ,津波の様子を示した写真やVTRを見せながら,これまでに起きた地震の様子を提示した上で,地震の大地の変化に気付かせた。児童は,直接大地が変化するほどの地震を体験していないが,これまでに起きた地震により大地が変化している様子を見ることで,より大地の変化に意識して調べようという意識が高まった。漠然とした地震というだけではなく,例えば「熊本の地震では,大地のずれが見られた。(断層)」や「東北の大震災では,津波による大地の変化が見られた。」というように実際に起きた地震がどのような影響を与えたか具体的に調べることができた。
(1)科学的な言葉や概念の使用
知識を定着させるためには,学習をまとめたり,振り返ったりする段階で,一般化をしたり,日常生活に当てはめて説明させたりする。そのときに意図的な工夫が必要である。そこで,学習したことを活用して,他の人に内容が十分伝わるような説明の場面を設定することにした。
〇学習した内容や教科書に出てきた表現を積極的に使用する
第5学年単元「流れる水のはたらき」のまとめとして,『カーブのある川では,流れる水のはたらきによって,今後どのような災害が起こることが予想されるか。また,そのためにどのような対策を考えないといけないか。』という学習問題を設定し,これまでの学習で得た知識をもとに個人で考え,その後グループで考えをまとめ,発表する活動を行った。
評価の観点として,「川がカーブしているということをもとに,流れる水のはたらきである『浸食,運搬,堆積』という言葉が使われているか。」また,「そのはたらきによって起こる災害が考えられているか。」そして,「対策がその災害にとって有効であるか。」の3つを挙げた。この3つの観点は,児童が考える前に提示していたので,ほとんどのグループが意識して発表することができた。評価の観点を事前に示すことで,児童は,どのような科学的な言葉や概念を使わなくてはいけないのかを明確にすることができた。
(2)対象と既有の知識を関係付けるスキルを身に付けさせるには
〇「比較」や「関係付け」など考えるための視点をもつ
思考力を育成するためには,子どもに考える時間を十分与えることが大切である。また,考えるために視点を示す必要がある。具体的には,「違いに気付いたり,比較したりするスキル」と「対象と既有の知識を関係付けるスキル」を与える必要があると考える。
①違いに気付いたり,比較したりするスキルを身に付けさせるには
第5学年単元「花から実へ」では,雄花と雌花を観察させるときに実際に花を見たり,触ったりしながら「何が違うの。どう違うの。なぜ違うのかな。」という視点を与え,それぞれの花のつくりについて,ただ漠然と観察するのではなく花のつくりの細かな違いに気付かせるようにした。さらに,これまで学習した花のつくりとの違いを比較することで,今回提示した花がこれまでと違うことに気付かせるようにした。このように違いに気付かせたり,比較したりすることで,これまでに学習したことをもとに新たなことに気付かせるきっかけとなった。
②対象と既有の知識を関係付けるスキルを身に付けさせるには
第6学年単元「水よう液の性質」を例に挙げると,導入で,正体のわからない4種類の水溶液(A石灰水,B食塩水,Cレモン水,D炭酸水)を提示し,どれがどの水溶液か分からなくなったという状況を提示し,これまでの学習で獲得した水溶液についての知識や技能を駆使してそれぞれの水溶液は何なのか調べようと提示した。そこで,見分ける方法として,児童はこれまでの学習で獲得した方法として「様子を見る,においをかぐ,味をみる,触ってみる,蒸発させる,二酸化炭素とまぜるなど」さまざまな方法を考えた。
ここで,4つの水溶液を特定する方法として,「~すれば~するだろう。(~になるはずだ。)」という見通しを必ず持たせるようにした。そうすることで,「関係付け」ながら実験方法を考えるというスキルを高めることができた。
〇問題解決の妥当性を吟味する
児童が「理科の見方・考え方」を働かせるには,児童自身が明確な判断力をもたなければならない。判断力で最も重要なスキルは,目的や見通しを明確にもつことである。実験結果を考察する場面では,学習問題と照らし合わせて考えさせたり,予想に対する結果を吟味させたりすることで,目的を明確にすることができる。
どのような予想をしてどのような手順で実験を進めたのか,過程を振り返らせることも,適切に判断させるためには有効である。「何のために,何が必要か」という振り返りの習慣を付けさせることで,判断力は育まれる。
第6学年単元「月と太陽」を例に挙げると,学習問題は『月の見える形と月と太陽の位置には,関係があるのだろうか。』であった。実験のまとめを行った後,結論を考えるときに,板書を確認しながら,「学習問題と照らし合わせて結論を考えよう。」と投げかけた。その際,児童が考えた結論は,「太陽のある方の月が光って見える。」ということと,月の見える形と太陽の位置の関係については,「太陽に近いほど,月の光っている部分が狭い。太陽から遠くなるほど,月の光っている部分は広い。」であった。このような結論を出したということは,目的意識をもって学習に取り組むことができたといえる。
〇学習した内容を的確に整理し表現する
児童が「理科の見方・考え方」を働かせたことを整理し,表現することも大切である。そのためには,表現すべき内容をもつこと,そして,的確に整理して表現するためのスキルを身に付けることである。まず何のために書くのかという目的を意識させ,表現すべき学習内容を獲得させることが大切である。そのためにノート指導とレポート指導をとおして学習したことを的確に表現する力を身に付けさせる。
自主的・主体的な学習態度が叫ばれ,一人一人の考え方やつまずき,分かる筋道を大切にする指導の重要性が指摘されている。こうしたことは,ノート指導の面からも考えてみる必要がある。書かされるノートから,児童自ら思考を練る場として活用するノートへとその機能を高めることで表現力を高めることができ,さらに学習に対する 主体的な態度も身に付くと考えられる。
◇ノートやレポートの書き方
(1)単元名 第5学年 「流れる水のはたらき」
(2)単元の目標
流れる水のはたらきと土地の変化に興味をもち,見いだした問題を追究する活動を通して,流れる水には地面を削ったり,石や土を運んだり積もらせたりするはたらきがあることや,川の上流や中流,下流によって,川原の石の大きさや形が違うことをとらえることができるようにする。また,台風や集中豪雨等に伴う川の増水による災害や,防災・減災,くらしを支える水資源についても意識を高めるようにする。
○流れる水には,浸食,運搬,堆積のはたらきがあることがわかり,そのはたらきの大きさを,水の流れる速さや水量に着目し,条件を制御しながら調べる活動を通して,理解を図り,観察,実験などに関する技能を身に付ける。
(知識・技能)
○流れる水のはたらきによる地面の様子の変化について,今までの経験などから根拠のある予想を立てたり,図や言葉を使って分かりやすくまとめたりすることができる。(思考・判断・表現)
○流れる水のはたらきと土地の変化について粘り強く追究する活動をとおして,土地の変化や流れる水のはたらきへ興味・関心を高め,主体的に問題解決しようとする態度を養う。(主体的に学習に取り組む態度)
(3)単元の評価規準
知識・技能 | 思考・判断・表現 | 主体的に学習に取り組む態度 |
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(4)指導と評価の計画(全12時間)
次 | 学習内容 | 時 | 主な評価規準(評価方法) |
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導入 1 |
流れる水のはたらき ・川の写真をみて,気付いたことを話し合う。(1) |
1 | 主体①(行動観察・発言・記録分析) |
2 |
地面を流れる水 ・流れる水のはたらきを調べるための実験計画を立てる。(1) ・実験を行い。実験結果から考察する。(2) |
3 | 思・判・表①(発言・記録分析) 知・技①(行動観察・記録分析) 知・技②(記録分析・ペーパーテスト) |
3 |
流れる水の量が変わるとき ・水の量が増えると,流れる水のはたらきが変化するか考える。(2) |
2 | 知・技③(行動観察・記録分析) 知・技④(記録分析・ペーパーテスト) |
4 | 川の流れとそのはたらき ・川原や川岸のようすを観察し,流れる水のはたらきについて考える。(1) ・流れる水のはたらきによる川の様子の違いや,石や砂の特徴の違いについて考える。(1) |
2 | 思・判・表②(発言・記録分析) 知・技⑤(行動観察・記録分析) |
5 |
川とわたしたちのくらし ・流れる水のはたらきによりもたらされる災害について調べ,まとめる。(1) わたしたちのくらしを守る ・流れる水のはたらきによりもたらされる災害に対する防災の取り組みについて調べ,まとめる。(2) |
3 | 知・技⑥(記録分析・ペーパーテスト) 思・判・表③(発言・記録分析) |
まとめ | まとめ(1) 評価テスト(1) | 2 | 主体②(行動観察・発言・記録分析) 知・技,思・表・判(ペーパーテスト) |
(5)授業の実際(全12時間)
〇第1次 流れる水のはたらき
・川の写真をみて,気付いたことを話し合う。(1)
○大淀川の写真(Google マップの画像)を見て気付いたことを話し合う。 〈児童のつぶやき〉
○晴れた日と大雨が降ったときの大淀川(写真や映像)の違いを見て気付いたことを話し合う。 〈児童のつぶやき〉
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◇資料:大淀川の写真(Google マップの画像)
◇資料:大淀川の写真や映像 |
〇第2次 地面を流れる水
・築山をつくり,山の頂上から水を流し,流れる水の様子を観察する。(1)
・実験を行い,実験結果から考察する。(2)
○山の頂上からじょうろを使って水を流し,流れる水の様子や地面の変化を観察する。 〈児童のつぶやき〉
⇒じょうろ2つで同時に流したとき
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◇築山づくり
◇比較①
◇比較②
◇比較③ |
◎観察の結果から気付いたことを話し合う。 ○流れに違いがあった。 ⇒内側と外側では速さが違う。上流と下流(傾斜の違がちがう)で速さが違う。 ○下(下流)の方に砂がたまっていた。 ⇒水だけでなく,砂も一緒に流されていた。(水が濁っていた。) |
○流れる水の速さが違うと,流れる水のはたらきはどのようにかわるのか。
《学習問題》 流れの速さの違う場所⇒川の曲がっている内側と外側
《実験方法》 《実験結果》
《まとめ》
◎流れる水にのはたらきには,地面を削るはたらき,削ったもの(砂や土,枝など)を運ぶはたらき,運んだものを積もらせるはたらきがある。 |
◇学習問題を明確に
◇結果の予想
〈児童のつぶやき・気付き〉 ◎観察の結果から気付いたことを話し合う。 ○流れに違いがあった。 ○下(下流)の方に砂がたまっていた。 |
〇第3次 流れる水の量が変わるとき
・流れる水の量が増えると,流れる水のはたらきが変化するか考える。(2)
○流れる水の量が違うと,流れる水のはたらきはどのようにかわるのか。
《学習問題》
《予想(結果の予想)》
《実験結果》
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《まとめ》
◎流れる水の量を増やすと流れる水のはたらき(しん食,運ぱん,たい積)は大きくなる。 |
◇流れる水のはたらき |
〇第4次 川の流れとそのはたらき
・川原や川岸のようすを観察し,流れる水のはたらきについて考える。(1)
・流れる水のはたらきによる川の様子の違いや,石や砂の特徴の違いについて考える。(1)
○流れる水の3つのはたらきは,実際の川でも見られるのかを観察する。
《学習問題》
《調べる》
《観察のまとめ》
《まとめ》
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上流,中流,下流それぞれの河原から集めた石を観察 表にまとめることで,それぞれの特徴を比較することができる。 |
〇第5次 川とわたしたちのくらし
・流れる水のはたらきによりもたらされる災害について調べ,まとめる。(1)
○実際の川では,災害を防ぐためにどのような工夫がなされているのか。
《学習問題》 【場面設定】 大雨や台風により災害が起きる。
左の写真のように川が曲がっているところでは,どんな災害が起きるか考え,それを防ぐためにどのような工夫をすればいいか考えよう。
洪水などから川の災害を防ぐ工夫
◇大淀川における災害を防ぐ工夫の例 |
これまで学習してきた『流れる水のはたらき(しん食,運ぱん,たい積)』を使って,予想される災害について考え,自分たちで考えられる工夫(対策)をグループで話し合う学習活動を行った。
◇対話的な深い学びへ |
《まとめ》
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〇プログラミングを取り入れた学習(第5次 2・3/3)
わたしたちのくらしを守る
・流れる水のはたらきによりもたらされる災害に対する防災の取り組みについて調べ,まとめる。(2)
(1)本時の目標
○流れる水のはたらきによる災害から生命を守るために,これからのくらしの中で何をすればよいかを調べ,論理的に考えを表現することができる。(思考・判断・表現)
(2)学習の展開
学習内容及び学習活動 | |
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つかむ |
1 本時の学習の見通しをもつ。 ○本時の学習問題について
◇自然事象への働きかけ 災害の危険をいちはやく知らせるには,どのように知らせるとよいだろうか。 |
見通す |
2 災害の危険をいちはやくしらせる方法 〇堤防が崩れた場合 川の曲がっている外側ではんらんがおこりそうなので,くずれそうなことをいちはやく知らせる方法(仕組み) 〇増水してきた場合 川の増水をいちはやく知らせる方法(仕組み) 3 学習の流れを確認する。 ○災害の危険をいちはやく知らせる方法について ※MESHによるプログラミング
◇空間的な視点(理科の見方) |
調べる |
4 災害の危険をいちはやく知らせる方法について考える。
◇多面的に考えるために ○それぞれのプログラムのよさや改善点を話し合いながら,より効果的なプログラムになるように練り合う。⇒対話的な学び 〇児童が考えたプログラム例
〇iPadにプログラムを入れ,センサーを実行させ動作確認 5 互いのグループが考えた方法を共有する。
グループ発表をもとに自分たちが考えたプログラムが地図上の川のどの部分に設置したら効果的か示したり,プログラムを実行させたりしながら説明させた。 |
まとめる |
6 本時学習のまとめをする。 災害の危険をいちはやく知らせるには,河川の増水しそうな場所や川のはんらんしそうな場所に危険を知らせるセンサーをつけ,自動で情報を伝えられればよい。 7 日常生活との関連を知る。
◇日常生活の見直し
現在開発中の浸水センサーを紹介
電波の変化で浸水の有無を検出しスマホなどに情報を提供するもの。将来は,あらゆるところに設置し浸水の進行予測が可能になる。 8 本時の学習を振り返り,理科日記(感想)を書く。
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〇みんなの考えやプログラムは,すごいと思ったけれど,やっぱり自分の班が一番すごいような気もしました。うれしかったのは,大学の先生たちがほとんど私たちの班に密集していたことです。なぜなら,私たちの班の考えに興味を持ってくれたからだと思います。
〇私はプログラミング学習でいろいろなことを学びました。どんなセンサーをどんな所に置くといいかなどです。私は2班の上流にセンサーを置くといいという考えがすごいなと思いました。センサーなどを使って学習することがなかったので楽しかったです。
〇私は理科のプログラミング学習で楽しかったことがあります。それは同じ考えの人がたくさんいるのではなく違う意見の人もたくさんいるからです。そのプログラミングには答えがなく何通りも自分の考えで動かせたのでとても楽しかったです。これからもいろんな人に役立つプログラムを組んで手助けできるといいなと思います。
〇プログラムの学習で災害が起こりそうなときに,どうしたらよいかをセンサーを使って考えました。パッドで考えたプログラムを実行してみました。グループで話しあってようやくできました。できたけど,もっとより良いものにしたいなと思いました。
〇プログラムする内容は,川の水が増水したことと堤防がくずれそうになったことをいちはやく伝えるということでした。ぼくは,いち早く伝える地域の近くにセンサーを置いたけど,ほかの班は上流にも置いていました。なぜかなと不思議に思っていました。上流の方が雨の降った量が多いということを聞いて分かりました。この学習で,場所によっては役に立たないプログラムがあることを知りました。また,次の学習でもっとプログラミングについて知りたいです。
(6)理科の見方考え方の分析
①理科の見方に関して
本単元は「地球」を柱とする領域であり,ここでの理科の見方は,主として時間的・空間的な視点で捉えることである。そこで,どの場面で児童がこの見方を働かせ学習したか事例をもとに,検証していくことにする。
流れる水のはたらきと土地の変化における理科の見方
・流れる水のはたらきと土地の変化について,水の速さや量に着目する。(時間的・空間的な視点)
事例① 単元導入の事象提示(大淀川の航空写真)から
単元導入において右の写真を用いた。この写真は,大淀川を上空から撮影したものである。
この事象提示により,児童はこれから学習する内容は,実験装置の中だけで起きていることではなく,もっと大きな時間的・空間的なスケールものであるということを意識して取組むことができた。また,川の全体の姿を見ることにより,川の形(川はまっすぐなところとカーブしているところがある。)や川幅の違い(上流と下流では川の幅が違うぞ。)などに気付き,土地の変化に気付くことができた。
事例② 高さ1m,直径約3mの築山での実験から
校庭の砂場に築山をつくり,じょうろで水を流しながら川ができるまでの時間や川の流れる様子を再現することで,時間的・空間的なスケールを広げ,自然に近い形で理解できるようにした。
この活動の中から次のような気付きが見られた。
<VTRをもとに児童の発言を抽出>
◇川ができるまでの現象からの気付き
◇水を流し続けた時の気付き
◇水の量を増やした時の気付き
築山での活動において上記のような気付きが見られたので,児童は,事後の学習問題設定や予想および結果の予想を行う際に『流れの違い(水の速さや水の量)』と『流れる水の働き(浸食,運搬,堆積)』を意識することができた。
<学習問題設定について>
〇学習問題① 『流れる水の速さがちがうと地面の様子はどう変わるか。』
築山での活動で児童が気付いたこととして,川の曲がっている場所の内側と外側で『流れる水の速さ』が違うことが挙げられた。そこで,『流れる水の速さ』の違いが,川の内側と外側にどのような変化をもたらすかということを学習問題として取り上げることにした。
〇学習問題② 『流れる水の量を増やすと流れる水のはたらき(しん食,運ぱん,たい積)は大きくなるのだろうか。』
築山での活動から児童は『流れる水の速さ』と同様に『流れる水の量』の違いによる土地の様子の変化にも気付いていた。そこで,『流れる水の量』の違いが,川にどのような変化をもたらすかということを学習問題として取り上げることにした。
②理科の考え方に関して
問題解決の中における「比較」「関係付け」「条件制御」「多面的に考える」場面について事例を挙げ,検証していくことにする。
流れる水のはたらきと土地の変化における理科の考え方
事例① 流れる水の速さと量の条件制御について
流れる水の働きの実験では,変える条件として「流れる水の速さ」と「流れる水の量」の2つがある。この2つの条件は,川の普段の様子と大雨が降った時の様子(写真や映像)を比較することで,児童が気付くことができた。また,築山の活動をとおして,傾きの違う2つの川では,川のでき方が違うということ,川の形によって土地(川の幅や深さなど)の様子が変わるということに気付いた。
そこで,実験するときは,傾きも形も同じ川でしないといけないと考え,変える条件は,『流れる水の速さ』と『流れる水の量』,変えない条件として『傾き』『川の形(カーブのある川)』と考え,条件制御を意識した実験をすることができた。
〇単元の導入における大淀川の写真提示 ○晴れた日と大雨が降ったときの大淀川(写真や映像)の違いを見て気付いたことを話し合う。 〈児童のつぶやき〉
〇カーブのある川で実験(条件制御して実験ができる。) |
事例② 予想をもとに解決の方法を発想し,表現することについて
<予想(結果の予想)の場面>
□カーブになっている川に水を流すとどうなるか。
内側→変わらない。(遅い)→ | 鉛筆のくずは流れない。 旗の位置は変わらない。 |
|
外側→削られる。(速い)→ | 鉛筆のくずが流される。 旗よりも外側が崩れる。 |
『速さの違いによって,流れる水のはたらきも変わり,その結果,土地の様子を変化させるのではないか』という予想を確かめる実験方法を考える段階で,『速さの違い』を確認するためにどうするか児童に質問したところ,「この前の活動(築山での活動)の時に小さい葉っぱを流してみた。何かを流せば内側と外側に流れの違いがわかると思います。」という意見が出た。そこで,目で見て速さが違うことが確認できるものを使うことにした。(今回は身近なもので鉛筆のくずを使うことにした。)結果の予想として,「内側は流れが遅いので鉛筆のくずは流れないだろう。または,ゆっくり流れる。」「外側は流れが速いので鉛筆のくずは流れていく。または,早く流れる。」が挙げられた。実際に鉛筆のくずが流される様子を見ることで流れの速さの違いを確かめることができ,内側と外側では流れる速さが違うということがはっきりわかった。
また,『土地の様子の違い』については,違いをはっきりさせるために,川幅の両端に旗を立て川幅がどのように変わってくるかを見ることで結果の予想を行うことにした。児童は,「流れが速いと川の壁を削るので,旗よりも外側が崩れてしまう。」「内側は流れが遅いので,旗の位置と壁は変わらない。(壁は削られない。)」と結果を予想した。実際に水を流すと,外側の壁が削られ,川幅が広がることが分かった。
結果の予想段階で,『速さの違いと』『土地の様子を違い』を同時に予想させたことで,結果を考察するとき児童は,「外側は,流れが速いので土地の様子を大きく変化させる。(削るはたらきが大きい。)」「内側は,流れが遅いので,削るはたらきは小さい。」とし,流れの速さの違いが土地の様子を変化させることに気付くことができた。また,外側,内側をよく観察していたので,「外側は削られていたが,内側には少し砂がたまっていた。」ということに気付く児童もみられた。
○授業の中で「本当かな。」という声掛けをすることで児童は,次の課題を設定することができるようになった。また,「何がそうさせたの」という発問により,素朴が疑問をより焦点かせることができ,児童が主体的に解決したくなる学習問題を設定することができた。
〇科学的な言葉や概念を使用することで知識の定着につながった。表面だけの知識理解ではなく納得して理解する実感へとつながった。
〇思考力・判断力・表現力の育成に関しては,それぞれの学年や単元内容等を分析することで指導のポイントを明確にすることができた。
●今回の研究は,いくつかあるうちの1つの方法でしかない。今後は他の単元や他の学年においても成立するか検討する必要がある。
●新学習指導要領の完全実施に向けて,さらに研究内容の振り返りを行い,より良い研究にしていきたい。
●学力向上という観点から,学習内容の定着化を図るための効果的な在り方についても今後検討していきたい。
【引用・参考文献】
【写真等引用】